この春、すみだ北斎美術館で開催されているのは、
北斎やその門人たちが描いた花に着目した展覧会です。
その名も、“北斎花らんまん”。
使用されているフォントは、
春らしく、軽やかで上品なイメージ。
なんとなく、資生堂っぽい印象を受けました。
と、それはさておきまして。
出展作は、前後期合わせて約100点。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
春の代名詞ともいうべき、
桜や梅が描かれた作品はもちろんのこと。
左)抱亭五清 《牛曳図》 右)蹄斎北馬 《桜下花魁道中図》 いずれもすみだ北斎美術館蔵 前期展示
特に、本展では春の花に限定せず、
睡蓮や菊、椿など春以外の花の絵も紹介されています。
それらの中でも特に印象的だったのが、《朝顔に雀》 という一枚。
葛飾北斎 《朝顔に雀》 すみだ北斎美術館蔵 前期展示
3羽の雀が、激しい空中戦を繰り広げています。
実際にこんな状況はありえるのでしょうか??
とりあえず、取っ組み合いをしている2羽に対して、
1羽が必死に仲裁しに入っているところなのでしょう。
その1羽が雄だったら、居酒屋でのあるあるの光景。
もし、雌だったら、「私のために喧嘩はやめて!」 な展会なのかも。
何はともあれ、雀が気になって、朝顔どころではありません。
花が主役の展覧会ながら、鳥の話が続いて恐縮ですが。
二代葛飾戴斗による 《凧と芸者》 も強く印象に残った一枚です。
二代葛飾戴斗 《凧と芸者》 すみだ北斎美術館蔵 前期展示
何が印象的だったかといえば、鳥の描かれ方。
飛んでいるとうよりも、垂直に落下しています。
というか、翼も尾もこんな形をしている鳥がこの世に存在しているのでしょうか。
鳥というよりも、絵文字の 『✨』 のようです。
飛び方が変だったといえば、北斎の 《牡丹に胡蝶》 も。
葛飾北斎 《牡丹に胡蝶》 すみだ北斎美術館蔵 前期展示
こんなにも蝶が羽ばたくのだろうか、
というくらいに思いっきり羽ばたいています。
完全に、モスラの飛び方。
描かれた花と比べると、鳥や蝶の描写は・・・う~ん。
もしかしたら、北斎とその弟子たちは、
飛んでいるものを描くのは苦手だったのかもしれません。
展覧会では、実際に花そのものが描かれている作品だけではなく。
花を意匠化した着物を身にまとう女性が描かれた作品や、
北斎がデザインした小紋染の模様を収めた図案集なども紹介されています。
葛飾北斎 『新型小紋帳』 すみだ北斎美術館蔵 通期展示
それらの中で特に注目したいのが、
北斎の 《馬尽 駒菖蒲》 という作品です。
葛飾北斎 《馬尽 駒菖蒲》 すみだ北斎美術館蔵 前期展示
パッと見、花はどこにも描かれていない気がしますが。
煙草入れのテキスタイルにご注目↓
デフォルメされた馬とタンポポがデザインされています。
江戸時代らしからぬセンス。
マリメッコのテキスタイルかと思いました。
ちなみに。
出展作品の中で、個人的に一番気になったのは、
藤の名所として有名な亀戸天神が描かれた浮世絵です。
北斎の 《亀井戸開帳》 をはじめ、数点ほど紹介されていましたが。
葛飾北斎 《亀井戸開帳》 すみだ北斎美術館蔵 作品を替えて通期で展示
想像していたよりも、藤の花がしょぼかったです・・・ (※個人の感想です)。
『鬼滅の刃』 の鬼が平然としていられるレベル。
これくらいの藤で名所というのなら、江戸の人々が、
あしかがフラワーパークを訪れた際には、卒倒してしまうことでしょう。