現在、パナソニック汐留美術館で開催されているのは、
“イスラエル博物館所蔵 ピカソ―ひらめきの原点―” という展覧会。
意外にも都内では10年以上ぶりとなるピカソの回顧展です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
世界最大級のエッシャーのコレクションや、
レッサー・ユリィを含む充実した近代絵画コレクションを有するイスラエル博物館。
実は、優れたピカソコレクションも所蔵しており、
その総数は、800点を優に超えているのだそうです。
展覧会では、そんなピカソコレクションから選りすぐられた名品の数々が紹介されています。
「青の時代」 になる前の初期の作品から、
亡くなる数年前に制作された版画シリーズまで。
さらには、キュビスム時代の作品や、
新古典主義時代、シュルレアリスム時代の作品も取り揃えられています。
生涯において、めまぐるしく画風を変えたピカソ。
そんな彼の画家年表を、実写化 (?) したかのような展覧会でした。
また、めまぐるしく変わったと言えば、
“美術界一のプレイボーイ” ピカソの本命女性も。
《泣く女》 のモデルとなったドラ・マールや、
ピカソの愛人にしてミューズであったマリー・テレーズ、
40歳差カップルとして世間を賑わせ、最終的にピカソを振ったフランソワーズ・ジローなど。
ピカソが愛した女性たちがモデルを務めた作品も数多く展示されています。
彼の女性遍歴を、実写化 (?) したかのような展覧会でもありました。
さらに、今回の展覧会で特徴的なのは、
出展作品の多くを版画作品が占めていること。
(もちろん油彩画やコラージュ、素描もありますが)
“なぁんだ・・・版画ばっかりか・・・”
と、あんまり気乗りしない方もいらっしゃるかもしれませんが。
一口に版画作品といっても、その手法はさまざま。
ピカソはエングレーヴィングにエッチング、
アクアチント、ドライポイント、リノカットにリトグラフと、
その生涯で、あらゆる版画の技法に挑戦しているのです。
たくさんの女性だけでなく、
たくさんの版画技法にも手を出していたのですね。
ちなみに。
展覧会で紹介されていた技法の中に、
シュガーリフトなる聞き慣れない版画技法がありました。
砂糖と水を混ぜたインクの溶液を使用する技法なのだとか。
会場にあった字面の説明だけでは、
いまいちイメージが湧きませんでした (汗)
砂糖を使うだなんて・・・・・。
そう思って帰宅後、調べていたところ、
女子美の版画研究室のHPに辿り着きました。
砂糖どころか、醤油やマジックリンも使うのだそう。
台所にあるものの意外な活用方法を学びました。
なお、展覧会の最後で紹介されていたのは、
86歳になったピカソが7ヶ月足らずの間に制作した347点からなるエッチングのシリーズ。
その名も、《347シリーズ》 です。
一部の作品の前に、これ見よがしに、
意味深なビラビラ (?) が設置されています。
どんな絵が描かれているのか、近づいてみたところ、
そこには、愛を交わすラファエロとその恋人ラ・フォルナリーナの姿が!
春画を彷彿とさせるほど、露骨に描かれていました。
あらゆるジャンルの作品を生み出してきた、20世紀の巨匠ピカソ。
その晩年には、二次制作のエロ漫画みたいなものも制作していたようです。