神奈川県の三浦半島の南端には、
長い時間をかけて波に削られ形づくられた自然の洞窟、
いわゆる、海蝕洞窟がいくつも存在しています。
そして、それらの海蝕洞窟の中からは、
主に弥生時代から古墳時代の遺物が多く出土しているのだそうです。
それらの洞窟遺跡にスポットを当てた展覧会が、
現在、神奈川県立歴史博物館で開催されています。
その名も、“洞窟遺跡を掘る -海蝕洞窟の考古学-”。
内容といい、タイトルといい、
実にマニアックそうな展覧会ではありましたが。
そんなイメージとは裏腹に、ポスターはだいぶユルい感じでした。
さらに、キャプションもユルめ。
プリンターで出力された普通のキャプションもありますが、
担当学芸員さんの手書きのものも多く、とても親しみやすい印象でした。
また、展示スタイルもだいぶユニーク!
プラスチックのチェーンやカラーコーンなど、
普通の展覧会ではまず使わないアイテムを活用していました。
展示台の裏側から、ひょっこりタヌキ(の剥製)が顔を覗かせる。
そんな遊び心も随所にあります。
考古学の展覧会=真面目かつマニアック。
そんなイメージをいい意味で裏切る展覧会でした。
さてさて、テイストこそユルめですが、
もちろん内容は、しっかり充実しています。
展示されている資料の数も、
充実しすぎなくらい充実していました。
空間を埋め尽くすほどの貝や鹿の角、土器の破片。
集合体恐怖症の方なら、軽く恐怖を覚えるかもしれません。
さまざまな出土品が紹介されていましたが、
今回もっとも勉強になったのが、オオツタノハ製の貝輪。
正直なところ、“あぁ。貝に穴が開いているなぁ”くらいにしか思いませんでしたが。
実は縄文時代から弥生時代にかけて、
オオツタノハ製の貝輪はとても珍重されていたのだそう。
誰もが憧れるオシャレアイテムだったそうなのです。
というのも、オオツタノハは「幻の貝」と呼ばれるほどにレアな貝なのだとか。
しかも、採取するのも過酷とのこと。
それゆえ、キャプションが・・・・・
「採取」から「捕獲」に変更されていました。
潮干狩り感覚でいましたが、
オオツタノハを手に入れるのは、めちゃめちゃハードなのですね。
なお、今展では、資料だけではなく、
遺跡発掘に関わった人や調査そのものにもスポットが当てられています。
例えば、発掘調査に関する実務書類も紹介されていました。
意外と知られていませんが、発掘調査によって、
出土したものは警察署に書類を届け出る必要があるのだそう。
というのも、まずは拾得物扱いになるのだとか。
また、こちらは発掘を実施する前に教育庁に提出した書類。
ハンコの数の多さたるや・・・。
簡単に発掘調査が出来ると思っていたら大間違いでした。
ただ、それだけの苦労を重ねた上で、
実際に発掘調査をするからなのでしょう。
発掘中にこちらのクワを検出した担当者さんは・・・・・
「クワが出たぞ!」と絶叫したそうな(笑)
その際に、周囲にいた一般人は、
「クマが出たぞ!」と聞き間違えたことでしょう。
ちなみに。
洞窟遺跡からは遺物だけではなく、
人骨もいくつも出土しているそうです。
展覧会では、その一部が展示されていますが、
観たくない人は観ないで済むように配慮がなされていました。
観る覚悟がある方は、こちらの説明を読んだ上で、展示されている一角へ。
すると、そこにはいくつもの頭蓋骨が展示されていました。
そして、そのうちの一つがこちらです。
おでこにマジックのようなもので「5」と書かれていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、敬意わい。