今、GYRE GALLERYで開催されているのは、
“世界の終わりと環境世界”という展覧会です。
タイトルだけ目にすると、なんとも頭が良さげ。
果たして、僕の頭で理解できるのか、
若干不安な気持ちで会場に足を踏み入れました。
すると、まず現れたのが、不思議な形をした壁。
適当に立てた風呂ふたのようなうねり具合です。
実はこちらは本棚となっており、
おそらく展覧会と関連するであろう、
本の数々がディスプレイされていました。
表紙からして、相当に頭良さげな本ばかり。
きっとこの展覧会を訪れなかったら、
日常で出合わなかったであろう本が多数ありました。
そんな本たちを横目に、会場を進むと、
そこには今展の企画者によるステートメントがありました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わ、わからん
身体的に知覚され経験されるカテゴリー?
破局的主題と対峙し、近代の諸概念を根源的に問い直す展覧会??
動物主体と客体との意味を持った相互関係を自然の「生命計画」と名づけ???
「人間中心主義」からの離脱し我々がすべて異なる、
「環境世界」に生きていることへの認識に到達できるのかを問い掛けていく????
現代文の入試問題を読んでるような気分になりました。
この状況がもはや「世界の終わり」です。
と、パッケージこそ小難しいですが。
荒川修作や草間彌生さんの初期の映像作品など、
出展されている作品は、無料の展覧会とは思えないほどの豪華さ!
それらの中にはなんと、イギリスの国民的彫刻家、
アニッシュ・カプーアの初期の代表作《1000の名前》もありました。
《1000の名前》は、オブジェクトの表面を、
色鮮やかな顔料で覆う作品シリーズです。
会場で配布されていたハンドアウトの解説によれば、
『核爆弾の爆発によって降り注がれる「死の灰」を想起させる』とありましたが、
むしろ、この形を見るに、作品自体が灰を降り注ぐ活火山であるような印象を受けました。
もしくは、ケンタッキーフライドチキンのCMでの、
チキンに粉を付けるシーンを連想してしまいました。
何はともあれ、まさか表参道で貴重な作品と出逢えるとは!
世界はまだまだ捨てたものではありません。
また、大御所の貴重な初期作品だけでなく。
加茂昂さんや大小島真木さんといった、
注目の若手実力作家の作品も紹介されていました。
個人的には、AKI INOMATAさんの近作が観られたのは嬉しいところ。
AKI INOMATAさんは国内外で注目を集める現代美術家で、
生き物や自然との共同作業を行うプロジェクトを多く展開しています。
今展で紹介されていたのは、《ギャロップする南部馬》(2019年)という作品
かつて日本には南部馬という固有種の馬がいたそうなのですが。
明治期の富国強兵政策の一環で、
南部馬と外来種の交雑が進められたことで、
純血種が存在しなくなってしまったのだそうです。
そんな南部馬の骨格標本をもとに、12体の馬をCGで造形し、3Dプリント化。
それを凍らせたものを、コマ撮りの要領でアニメーションに仕立てた作品です。
人間の都合によって、兵力にされたり、
競走馬にされたり、さらにそれが美少女化されたり。
いかに人間が馬を都合よく扱ってきたのかを実感させられました。
ちなみに。
今展で一番印象に残ったのが、
フランス出身のリア・ジローによる《エントロピー》という写真シリーズです。
一見すると、写真のようには思えません。
とはいえ、「じゃあ何なの?」と言われても答えようがありません。
実は、こちらは、フランス国立自然史博物館の研究チーム、
ジローが共同で開発した微細藻類(植物プランクトン)が形成したイメージとのこと。
光に反応するその特殊な微細藻類が、
写真の銀粒子の代わりとなっているのだそう。
食糧危機を救ったり、バイオ燃料となったり、写真を現像したり。