現在、竹中工務店東京本店の1階にあるGallery A4(エークワッド)では、
“いわさきちひろ と 奥村まこと・生活と仕事”という展覧会が開催されています。
生涯にわたって、愛らしいこどもの姿を描いたいわさきちひろ。
言わずと知れた国民的画家だけに、
彼女を主役にした展覧会は、これまで何度も開催されてきました。
が、しかし、この展覧会の主役は、いわさきちひろの他にもう一人います。
その人物とは、ちひろとはちょうど一回り下となる女性建築家・奥村まことです。
奥村まこと(1930~2016)が生まれたのは、ちひろが終の棲家とした練馬区。
フランク・ロイド・ライトが設計した自由学園で学び、
その建物に大きな影響を受け、建築家となった女性です。
ちなみに、 女性として初めて東京藝術大学の建築科に入学した人物でもあったそう。
卒業後は、恩師である吉村順三の設計事務所に入所し、のちに独立。
日本における女性建築家の先駆け的存在です。
展覧会の序盤では、ちひろと奥村、
それぞれの活動や生活にかかわる資料が紹介されています。
それらの中には、ちひろ美術館が所蔵するちひろのピエゾグラフも。
さらに、手作り絵本もあります。
・・・・・・・・と言っても、こちらの絵本は、
ちひろではなく、奥村まことによる手作り絵本。
なんでも、愛娘のために制作した絵本だそうで、
左のものは、お風呂でも読める濡れても大丈夫な絵本、
右のものは、布製の破れない絵本なのだそうです。
絵本の構造から考えるなんて、さすがは建築家ですね(←?)。
練馬という地に縁がある。
この時代としては珍しい、自立した女性であった。
その2つ以外にも、2人には意外な共通点がありました。
いわさきちひろといえば、31歳の時に、
8歳年下の男性と、再婚することになった際に、
一、人類の進歩のために最後迄固く結びあって闘うこと
一、「お互の立場を尊重し、特に芸術家としての妻の立場を尊重すること
など、ちひろにやや有利な気もする、
誓いの文書を交わしたことで知られています。
実は、奥村まことも、建築科の先輩であった奥村昭雄と結婚した際に・・・・・
夫婦間の取り決めをルール化し、
「憲法ノート」なるものを作成していたようです。
ちひろ夫婦よりも細かい取り決めですね。。。
さてさて、もちろんこれらの共通点があるから、
2人展が開催されいているというわけではありません。
ちひろと奥村、2人の接点。
それは、ちひろのアトリエ兼別荘であった長野県の黒姫山荘です。
実はこの設計をしたのが、何を隠そう奥村でした。
会場では、黒姫山荘の設計図と、
建てるにあたって2人の間で交わされた手紙も紹介されています。
2人は友達同士だったとのことですが、
手紙での2人のやり取りは、意外とシビアで、
読んでいて、思わずハラハラするものがありました。
こんなプライベートな内容を白日の下に晒してしまってよいのでしょうか(笑)
なお、会場では他にも、2人の私物や、
それぞれのライフスタイルも紹介されていました。
これまでの展覧会を通じて、いわさきちひろが、
バイタリティのあるキャラの濃い人物であることは知っていましたが。
奥村まことも、負けず劣らずキャラの濃い人物でした。
特に本領を発揮していたのが、記録魔っぷりです。
近所の中華料理屋が休業するとなった際に、
マスターの腕が鈍らないようにと、自分の事務所に招き、
秘伝のレシピを習い、それをイラスト入りで克明に記録したそうです。
知られざる女性建築家、奥村まことについて知ることができる。
ついでに、大三元の秘伝のレシピも知ることができる展覧会でした。
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