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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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自然と人のダイアローグ

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今年4月に、約1年半に及ぶリニューアル工事を終えた国立西洋美術館。

 

 

 

そのリニューアルオープン記念展として、現在開催されているのが、

“自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで”という展覧会。

ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館と、

国立西洋美術館が初コラボを果たした展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

日本ではあまり耳なじみのないフォルクヴァング美術館ですが、

今年で開館100周年を迎えるドイツを代表する美術館の一つで、

あのMoMAが開館する際に、お手本にした美術館とされています。

 

今展では、そんなフォルクヴァング美術館と、西美のコレクションの中から、

「自然と人のダイアローグ(対話)」をキーワードに、選りすぐりの名品の数々を紹介。

 

 

 

しかも、それぞれのコレクションの作品が、

まさにダイアローグ(対話)させるような形で展示されています。

 

 

 

それらのダイアローグの中には、

モネとゲルハルト・リヒターとのダイアローグも。

 

 

 

現在ポーラ美術館で開催中の20周年展でも、

モネとリヒターの作品が並べて展示されていましたが、

偶然にもこちらの展覧会でも、2人がニコイチで展示されています。

描かれた時代も地域も違うはずなのですが、

まるでモネの絵に描かれた水面に映った曇り空を、

リヒターが描いているかのような、不思議な印象を受けました。

 

 

なお、出展作品は、100点以上。

ムンクやセザンヌ、モンドリアンといったメジャーな作家はもちろんのこと。

ロヴィス・コリント(左)やクリスティアン・ロールフス(右)といった・・・・・

 

 

 

マイナーながらも、今後注目を集めそうな作家も数多く紹介されています。

その中で是非とも抑えておきたいのが、こちらの画家↓

 

アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》 1906年 油彩・カンヴァス 国立西洋美術館

 

 

アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865~1931)です。

「ラッスンゴレライ」みたいな語感ですが、

若手芸人のリズムネタでは無くて、画家の名前です。

フィンランドの国民的画家で、

ここ近年、再評価の機運が高まっていたそう。

今ちょうどパリの美術館で大々的な回顧展が開催中で、

それもあって、ますます国際的に注目を集めているそうです。

 

実は、こちらのガッレン=カッレラの作品は、

フォルクヴァング美術館のコレクションでなく、

国立西洋美術館の新収蔵品で、今展で満を持して初披露されています。

ジグザグが特徴的な湖面のさざ波は、

フィンランドの伝説の英雄ヴァイナモイネンの船の航跡を暗示しているのだとか。

風景画でありながら、どこか神秘的な雰囲気を漂わせた逸品です。

 

それからもう一人、個人的に惹かれたのが、

ノルウェーのロマン派の画家ヨハン・クリスチャン・ダール。

 

ヨハン・クリスティアン・クラウゼン・ダール《ピルニッツ城の眺め》 1823年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
© Museum Folkwang, Essen

 

 

窓枠に切り取られた光景は、どことなく画中画のよう。

それゆえ、シュルレアリスムのような印象も受ける作品です。

よくよく考えてみると、床面からの窓の位置が低すぎる気も。

そんなところもシュルレアリスムです。

 

ちなみに。

こちらのダールの作品の横に並んでいたのは、

彼の生涯の友人にして師であったカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの作品。

 

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《夕日の前に立つ女性》 1818年頃 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
© Museum Folkwang, Essen

 

夕日(朝日という説も)と対峙する女性。

その堂々とした後姿は、観れば観るほど、MISIAに思えてきました。

オリンピックの開会式と同じく、『君が代』を歌っているのかもしれません。

なお、こちらはフォルクヴァング美術館コレクションの中でも、

特に重要な作品の一つに数えられるドイツ美術史に残る偉大な名品です。

しかし、サイズとしては小さめ。

 

 

 

見逃さないよう、どうぞお気を付けくださいませ。

 

 

さてさて、最後にご紹介したいのは、

ドイツから初来日を果たした今展の目玉作品、

ゴッホの《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》です。

 

フィンセント・ファン・ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑)》 1889年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
© Museum Folkwang, Essen

 

 

晩年、精神を病み、サン=レミで療養中だったゴッホが、

療養所の裏の麦畑で、農夫が黙々と麦を刈る姿を描いたもの。

ゴッホ曰く、「自然という偉大な書物が語る死のイメージ」を見たのだとか。

確かに、この炎天下の中、これだけ広大な畑を、

一人で、それも鎌一つで作業するなんて自殺行為です。

一説によると、この農夫にゴッホ自身が投影されているとも。

描いても描いても、美術界に見向きもされない。

そんなゴッホの苦悩が絵に込められているのかもしれません。

ちなみに、じーっと観ていたら、画面右下に描かれた麦が、人間の耳に見えてきました。

ついカッとなっちゃったけど、耳を切らなきゃよかったなぁ。

そんな後悔も絵に込められているのかもしれません。

 

 

他にも紹介したい作品が山ほどありますが、

それは、6月16日に予定されている『ニコニコ美術館』で。

 

 

 

新生・国立西洋美術館のリニューアルを飾るに相応しい、

王道でありながら、なおかつ新鮮味も感じられる展覧会でした。

星星星

 

 

 ┃会期:2022年6月4日(土)~9月11日(日)

 ┃会場:国立西洋美術館

 ┃https://nature2022.jp/

 

 

~読者の皆様へのプレゼント~
“自然と人のダイアローグ展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、6月17日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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