銀座にある日本最古の洋画商、日動画廊。
その創業45周年を記念して、
1972年に茨城県笠間市に開館した笠間日動美術館。
今年2022年でめでたく、開館50周年を迎えました(←おめでとうございます!)
それを記念して現在開催されているのが、
“開館50年記念 パリ、東京、ニューヨーク モダンアートの軌跡”という展覧会。
コレクションの中から選りすぐりられた名品を紹介する。
まさに笠間日動美術館のベスト盤ともいうべき展覧会です。
モネの《ヴェトゥイユ・水びたしの草原》や、
ゴッホの《サン=レミの道》といったフランス近代絵画の名品の数々、
さらに、美術館の顔ともいうべき、
《ウーマン》ももちろん出展されています。
(注:展示室内は一部写真撮影可。このブログで使用している写真の撮影は、特別に許可を得ております。)
(《ウーマン》に関するエピソードはこちらに↓)
また、普段はあまり展示される機会のない、
ピカソの陶芸作品やニキ・ド・サンファルの立体作品や、
2000年に一括寄贈された「山岡コレクション」も紹介されていました。
ちなみに、山岡コレクションの山岡とは、山岡孫吉なる人物。
「♪ぼくの名前はヤン坊ぼくの名前はマー坊」
という懐かしCMでお馴染みのヤンマーディーゼルの創業者です。
なお、実は、山岡コレクションは、美術館に寄贈されるまでは、
一部の研究者のみが知る幻の明治美術コレクションだったのだとか。
そんな山岡コレクションの作品の中で、
特に印象的だったのが、川村清雄の《ベニス風景》です。
高橋由一や黒田清輝ら当時の洋画家たちが、
独学で、あるいは、海外の画家に手ほどきを受けて、
どうにや西洋絵画を自分のものにしようとしている中で。
西洋絵画のスタイルを用いながらも、どこか水墨画を彷彿とさせる、
西洋美術と日本美術の両方の良さを掛け合わせた作品を目指した川村。
同時代の洋画家の作品と並べて展示されていたことで、彼の先見性が際立っていました。
一人だけ30年先の美術界を生きていたかのようです。
また、山岡コレクションで、ある意味印象的だったのが、
ジョルジュ・ビゴーの《日光馬返し つたや》という作品です。
画面の左下をよく見ると、何やらフランス語で文章が書かれています。
それを訳したキャプションが、作品の横に添えられていました。
忠告
我が同国人へ、この家は正直である。
安心して入ってもよい。
というのも、この先ではあなた方は盗みにあうだろう。
中善寺と湯元では宿の連中は皆ならず者である。
一八八六年八月三十日 G・ビゴー
百歩譲って、もしかしたら、この時代
中善寺や湯元の宿で、窃盗事件があったのかもしれません。
いや、だからって、「宿の連中は皆ならず者」なわけねーだろ!
そんな西部劇みたいな世界観があるか!!
さすがは、歴史の教科書でお馴染みの風刺画の作者ジョルジュ・ビゴー。
(参考画像)
笑いのためなら(?)、
話を盛りに盛る傾向があるようです。
と、それはさておき。
展覧会としては、美術館が所蔵する名品の数々を通じて、
パリ・ニューヨーク・東京、それぞれの美術の動向がわかる充実した内容のものでした。
笠間日動美術館を訪れたことがある方はもちろん、
まだ訪れたことがない方は特に、デビューにオススメです。