現在、SOMPO美術館で開催されているのは、
“スイス プチ・パレ美術館展”という展覧会です。
プチ・パレ(プティ・パレ)というと、
フランスのパリにある美術館を思い浮かべてしまいますが。
この展覧会で紹介されているのは、
プチ・パレはプチ・パレでも、スイスにあるプチ・パレ美術館です。
ちなみに、外観は、こんな感じ↓
入り口の両脇に立っている彫刻は、
なんだかマツケンサンバのダンサーのようです。
と、それはさておき。
スイスのプチ・パレ美術館は、実業家オスカー・ゲーズが、
自身のコレクションを公開すべく、1968年に設立した美術館です。
そのコレクションには、印象派やエコール・ド・パリの画家の作品も多く含まれており、
本家(?)のパリのプチ・パレにも負けない充実したコレクションとして知られています。
そんな多彩なコレクションから選りすぐりの65点が来日中!
それらの中には、ちょっとだけホラン千秋似のルノワール晩年の肖像画や、
ピエール・オーギュスト・ルノワール《詩人アリス・ヴァリエール=メルツバッハの肖像》
1913年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE
柄物好きな一家(?)の日常の一コマが描かれたドニの作品、
モーリス・ドニ《休暇中の宿題》
1906年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE
キスリングの珍しいフォービスム時代の作品も。
モイズ・キスリング《サン=トロペのシエスタ》
1916年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE
また、意外なところでは、スタンランの作品もありました。
(注:記事に使用している画像は、SOMPO美術館より特別に提供いただいたものです。)
スタンランという名前にピンとこなくても、
彼が描いたこのポスターは、一度は目にしたことがあるはず。
今回は、そんなスタンランの作品が3点出展されており、
そのうちの1点は、とある商店のために描かれたポスターの原画とのことです。
テオフィル=アレクサンドル・スタンラン《猫と一緒の母と子》
1885年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE
女の子のホットチョコレートを、じっと見つめる猫。
猫がチョコを食べると、中毒を起こしてしまうからでしょう。
女の子は必死にガードしています。
お母さんも、もう少し手伝ってあげればいいのに。
ちなみに。
個人的に印象に残っているスタンランの作品が、こちらです。
タイトルを思わず二度見してしまいました。
《純愛》とのこと。
・・・・・いや、いい歳した男女が、
建物の影でキスするって、どこが純愛やねん!
たぶん不倫。それも、きっとW不倫。
文春オンラインの隠し撮り写真感(?)がハンパありませんでした。
さてさて、審美眼には自信があったという創設者のゲーズ。
彼は、著名な芸術家の作品だけでなく、
キュビスムの女性画家マリア・ブランシャールや、
マリア・ブランシャール《静物》
1917年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE
ロシア人画家ニコラス・アレクサンドロヴィッチ・タルコフといった、
才能はありながらも世に知られていない芸術家の作品も積極的に蒐集したそうです。
展覧会の図録の表紙にもなっている、
《バーで待つサラ・ベルナールの肖像》を描いた画家、
ジョルジュ・ボッティーニもそのうちの一人。
33歳という若さで亡くなった、
イタリア出身のモンマルトルの画家です。
彼は、グワッシュと水彩絵の具にコーヒーと、
ヨードチンキを混ぜるという新しい技法を試していたそう。
サラ・ベルナールの唇がやけに艶っぽく見えたのは、
絵の具にヨードチンキが混ざっているからなのかもしれません。
あと、後ろのコーヒーカップがやけに輝いていて、
結果的に、サラ・ベルナールよりも目立っていました。
ちなみに。
創設者であるゲーズが1998年に亡くなってから、
現在に至るまで、プチ・パレ美術館は休館が続いているとのこと。
スイスを訪れたところで、これらのコレクションを目にすることは出来ません。
そういう意味でも、見逃せない展覧会です。
最後に。
個人的にもっともじわじわきた作品をご紹介いたしましょう。
カイユボットの《子どものモーリス・ユゴーの肖像》です。
ギュスターヴ・カイユボット《子どものモーリス・ユゴーの肖像》
1885年 ASSOCIATION DES AMIS DU PETIT PALAIS, GENEVE
絶妙に可愛くない子どもの絵。
じーっと眺めていたら、
だんだんブルース・ウィリスに見えてきました。