現在、ワタリウム美術館では、
“鈴木大拙展 Life=Zen=Art”が開催されています。
(注:展覧会は一部撮影可。展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
金沢出身の仏教哲学者で、
国内外の芸術家に影響を与えた鈴木大拙。
金沢に2011年に開館した鈴木大拙館のおかげで、
ここ近年では、国内でも知名度がじわじわ上昇していますが、
それ以上に、今や世界共通語となった『ZEN(=禅)』を、
初めて海外に広めた人物として世界的に知られています。
ちなみに、後年のコロンビア大学で行った講義には、
『ライ麦畑でつかまえて』で知られる小説家J・D・サリンジャーや、
ミニマリズムを代表する音楽家ジョン・ケージなども参加していたのだとか。
そんな鈴木大拙の思想に迫りつつ、
彼に影響を受けた人々の表現の系譜を辿る展覧会です。
普段のワタリウム美術館の展覧会では、
2階→3階→4階の順で巡ることが多いですが、
今展は、4階→3階→2階の順で辿ることになります。
まず4階に向かうと、そこには・・・・・
靴を脱いで上がる座敷のようなスペースが誕生していました。
わざわざ、この展覧会のために、
1フロア分の座敷を作ってしまったのだそう。
正座するも良し。あぐらをかくも良し。
リラックスできるポーズで、
鈴木大拙の書を味わうコーナーとなっています。
ちなみに、プロジェクターで映し出されていたのは、
右から大拙の書《△□不異○(色不異空)》、マレーヴィチの作品、
そして、大拙が敬愛した仙厓義梵の《○△□》です。
ありそうでなかった組み合わせ。
じーっと観ていたら、東大ナゾトレの問題のようにも思えてきました。
さて、続く3階では、「大拙を取り巻く人々とアーカイヴ」と題し、
大拙と親交のあった人々による書や資料が紹介されています。
それらの人々の中には、“民藝運動の父”こと柳宗悦も。
実は、柳宗悦は、大拙が学習院で英語を教えた生徒の一人でした。
柳はその生涯にわたって、大拙を師と仰いでいたそう。
柳の美意識の形成に少なくない影響を与えているそうです。
また、『善の研究』で知られる西田幾多郎は、
大拙とは同郷で、生涯の友として交流を持ちました。
会場では、そんな2人と同期で親友だった、
山本良吉との鼎談を収めたレコード音源も流れています。
とっても興味深いことを3人が話しているのは、なんとなく理解できたのですが。
ビックリするくらい3人とも声と話し方(訛り)が一緒なので、
ぶっちゃけ、誰か1人がずーっと喋っているのかと思ってしまいました(笑)
さて、展覧会のメイン会場ともいうべきは、2階の展示室。
展示室の中央に不思議な円形の空間があります。
そして、そこにはカーテンで仕切られた入り口がいくつもありました。
鑑賞者はその中から好きな入り口を選んで進むことになります。
ある入り口の先には、ナム・ジュン・パイクのインスタレーション作品が、
またある入り口の先には、ジョン・ケージの作品が、
そして、またある入り口の先には、ヨーゼフ・ボイスらの作品が待ち受けていました。
カーテンを開けて、その先に進んでみるまで、
本当にそれらの作品があるのかはわかりません(←?)。
まるでシュレディンガーの猫のような展示空間となっていました。
さてさて、率直に言って、
鈴木大拙の思想は、そう簡単にはわかりません。
会場のいたるところで、彼の言葉が紹介されていますが、
それを読んだところで、さらに頭はこんがらがってしまいます。
さらに、大拙の思想に影響を受けた作品も、
ヒントになるどころか、より思索を深めるばかりです。
でも、どうぞご安心くださいませ。
今展の入館料は、本人であれば何度でも、
展覧会へ入場できるパスポート制チケットとなっています。
1回で理解できなかったら、2回。
2回も理解できなかったら、3回4回と訪ればよいのです。
何度も訪れるうちに、大拙の思想が徐々に理解でき、
気づいたらあなた自身も、大拙の系譜に連なっているかもしれません。