約10年ぶりに、セゾン現代美術館に行ってきました。
セゾンと聞いて、『二人セゾン』を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれませんが。
セゾンはセゾンでも、今は無きセゾングループの「セゾン」。
西武グループの創業者・堤康次郎が収集した美術コレクションと、
かつて池袋にあったセゾン美術館の現代美術コレクションからなる美術館です。
こちらで8月28日まで開催されているのが、
“地つづきの輪郭 大小島真木 高嶋英男 伏木庸平 増子博子”という展覧会。
自然と人間の関係性をテーマにする現代アーティストの4人展です。
まず1人目のアーティストは、大小島真木さん。
彼女は「森=身体」という発想のもと、制作を続けています。
それだけに(?)、展示室を飛び越えて、
セゾン現代美術館の森のような庭でも作品が展開されていました。
2人目は、増子博子さん。
東北を拠点に活動を続けるアーティストです。
離れて観ている分には、
なかなか気が付きづらいのですが。
近づいて観ると、この通り。
実は、ペンでみっしりと細密に、
花や葉といった植物が描き込まれています。
展覧会ではそんな増子さんの新作シリーズも紹介されていました。
「中洲的な人」シリーズとのこと。
キャッチーなフレーズゆえ、どんな人なのか気になって、
キャプションに目を向けたところ、こんな説明がありました。
川のなかに生まれる中洲は、その土地に棲む鳥や虫たち、
川の水が種を選び、その土地特有の植生があらわれる。
天候や季節によって姿を変える中洲が、
その土地でしか生まれない、あわいに生まれる庭のように感じていた。
中洲は時に様々なものがひっかかり、また流れていく。
地面をもぎ取り、天地をひっくり返すように倒れた木も。
中洲的な人、というよりは、
中洲の説明ではありましたが。
こういった中洲のように、
いろんな人が集まるハブのような存在が、
「中洲的な人」ということなのかもしれませんね。
さてさて、3人目は伏木庸平さんです。
伏木さんの作品の素材は、一貫して布と糸。
生活している時間すべてが、制作時間とのこと。
朝起きてすぐに、電車での移動中に、
手が空いた時に、使い古した布に針で糸を刺していくのだそうです。
そうして生み出された作品は、
まるで原生生物のような印象を受けました。
粘菌とか海綿とか。
目に飛び込んできた瞬間、いい意味でゾワっとしました。
今回参加している4人の作家の中で、
個人的にもっともツボだったのが、高嶋英男さん。
壺人間(?)を作るアーティストです。
顔が壺になっているため、
表情はもちろん無いのですが。
不思議な愛らしさがあります。
特に愛らしかったのが、この子↓
おそらく家族とはぐれてしまったのでしょう。
迷子センターまで連れて行ってあげたいくらいに、愛らしかったです。
今展では、そんな高島さんの新作となる壺猿(?)も。
しかも、ただの壺ではなく、
顔から光を放つタイプの壺でした。
そのおかげで、どこか宇宙飛行士のようにも見えました。
スペース感溢れる猿。
『猿の惑星』を思わず連想してしまうものがあります。
また、高嶋さんの最新作として、
《広がる・途切れる・繋がる》も出展されていました。
顔は相変わらず壺ですが、
大きな角が生え、うろこ状の身体となっています。
さらなる異形の姿へと変貌を遂げていました。
この先、彼らがどんな進化を遂げるのか。
引き続き、注目したいと思います。
4人の作家の個性それぞれが、
際立っていて、良い展覧会ではあったのですが。
それだけに、一つだけ気になってしまったのが、この展覧会のポスターのデザインでした。
・・・・・・これでいいのか?
このビジュアルで展覧会の内容、イメージが伝わるのか??
何も知らずに観たら、靉嘔さんの展覧会か、
はたまた、カラーフィールド関連の作家の展覧会かと、
勘違いされてしまいそうな気がしました。
あと、展覧会とは直接関係ないのですが。
久しぶりにセゾン現代美術館を訪れて、
どうしても気になってしまったのが、照明のスイッチです。
圧倒的昭和感。
時代を感じずにはいられません。
セゾン“現代”美術館なのに。