今年2022年は、板橋区が誕生して90周年という節目の年。
それを記念して、現在板橋区立美術館では、
“ぞろぞろ・わいわい・人だらけ―狩野派も、それ以外も”が開催されています。
こちらは、板橋区立美術館コレクションの中でも、
特に人気の高い江戸絵画コレクションの作品群から、
人物が描かれたものをフィーチャーし、1人、2人、3人と人数ごとに紹介する展覧会です。
入館料は、なんと無料。
それだけに、有名どころの作品は少ないのかと思いきや。
酒井抱一の作品はあるわ。
河鍋暁斎の作品はあるわ。
川原慶賀による肖像画の肖像画はあるわ。
さらに、昨年の館蔵品展に出展され、
じわじわと話題となったあの山田孝之激似の作品も、再び出展されています!
個人的には、加藤信清の作品が出展されていたのが嬉しいところです。
加藤信清。
名前こそ平凡ですが(←?)、
その作風は、非凡も非凡です。
一見すると、パステル調の淡い色彩で描かれた絵画のように思えますが。
近づいてよーく観てみると、その超絶技巧に驚かされること必至!
なんとすべてが経文の文字だけで描かれているのです!!
しかも、適当に描かれているのでなく、
経文の順番通りに文字が書かれているのだそうです。
こういった絵を「文字絵」と呼びますが、
おそらく加藤信清の文字絵はその最高峰。
細かすぎて伝わらない文字絵です。
細かすぎるといえば、黄檗宗の画僧、
喜多元規(きたげんき)によるこちらの肖像画も。
描かれているのは、日本黄檗宗の祖で、
江戸時代に明からやってきた隠元隆琦(いんげんりゅうき)です。
インゲン豆を日本に伝え、その名を残したことでも知られています。
こちらも一見すると、普通の肖像画のようですが。
近づいてよーく観てみてみましょう。
木目がビッシリと描かれているのが見て取れます。
徹底的な写実描写を行ったという喜多元規。
顔の皺や払子の毛も1本1本丁寧に描き込まれています。
“げんき”という名とは裏腹に、
見れば見るほど、目が疲れる絵を描く画家です。
出展作品の中で、他に印象に残っているのは、
シーボルトを描いた川原慶賀による《蘭人図》2点でしょうか。
どういうシチュエーションなのか、
まったくもって、よくわからないのですが、
どちらも左側の男性が右側の男性を指さしています。
なんとなく、浅草の漫才師の宣材写真のよう。
東洋館のステージに立っていそうです。
それからもう一つ印象的だったのが、作者不詳の《西洋風俗図》。
西洋風に描きたい!
その頑張りは伝わってくるのですが。
風景の雰囲気は、日本画の域を脱せていません。
この作者は、西洋人は見たことがあっても、
西洋の風景を見たことがなかったのでしょう。
あと、羊も観たことがなかったのでしょうね。
羊がモルモットくらいのサイズで描かれていました。
迷える子羊にもほどがあります。
ちなみに。
展覧会のラストを飾っていたのは、北斎の門人の一人、
蹄斎北馬による《竜口対客・上野下馬・桔梗下馬図》という三幅対の作品でした。
今回の出展作品の中でも、もっとも多くの人が描かれた作品です。
人々が密集して、完全にフェス状態でした。
なお、向かって左の《竜口対客図》をよく観ていたら、
どの馬もお尻の部分に目玉のようなものが描かれていました。
若干の王蟲感があります。
無料とは思えない見ごたえ。
その上、写真撮影も可能となっています。
まだ展覧会は開幕したばかりですが、
きっと口コミで広まって、お客さんが増えていくことでしょう。
ぞろぞろ・わいわい・人だらけになる前に、足を運ばれることをオススメいたします。