神楽坂にある√K Contemporaryで開催中の展覧会、
“コーネーリア・トムセン個展「Unfolding Ratio」”に行ってきました。
旧東ドイツに生まれ、現在はNYを拠点に活躍する画家コーネーリア・トムセン。
その代表作から最新作までを紹介する個展です。
初期には、政府が推奨する写実的な絵画を描いていたという彼女。
しかし、ベルリンの壁が崩壊したことで、
初めて抽象絵画に出逢い、衝撃を受けたのだそう。
こうして、コーネーリアの代表的シリーズ「Stripes」が誕生しました。
一見すると、ただ線が何本も引かれているだけの絵に思えます。
しかし、キャンバスに近づいて、
引かれた線をよーく見てみると・・・・・
繊細な色のグラデーションに気づかされます。
離れて観ると、スタイリッシュでクールなのに、
近づいて観ると、柔らかさ・温かみが感じられる。
ツンデレな絵画です(←?)。
なお、これらの線はすべて、
手作業で1本1本描かれているとのこと。
相当な描写力と集中力が無いと、
このシリーズは描くことができないでしょう。
ちなみに。
出展されていた「Stripes」シリーズの中には、こんなタイプの作品も。
キャンバスに描かれた作品とは違い、
パッと目に飛び込んできた瞬間に、なんとなく、
クッキー缶の蓋を連想してしまいました。
その理由はおそらく、
この絵が銅板の上に描かれているから。
キャンバスに描かれたストライプよりも、
やはり少しメタリックな印象を受けました。
さてさて、アーティストになる前には、
マイセン窯にて絵付師だったというコーネーリア。
その経験も手伝って、近年は庭の植物を、
下描きなしで水彩絵具で描いていく「Garden」シリーズも手掛けているそう。
また、具象にも回帰し、最近では、
「ポートレート」シリーズも手掛けているそうです。
ちなみに。
これらの絵画のモデルを務めているのは・・・・・
コーネーリアの実の娘さんとのこと。
若干、不機嫌そうな感はありますが、
こうした素の部分を見せれるのは、母子ならではな気がします。
他にも、クリエイターと共同で制作し、
今回初めて発表するというNFT作品など、
展覧会では、いくつものシリーズが紹介されていましたが。
個人的に一番惹かれたのは、
近年手掛けているという「GR」シリーズでした。
近づいて観ると、もちろん、
淡いグラデーションで線が描かれていますが。
非常にシンプルでミニマルな抽象画です。
実は、こちらのシリーズは、「1:1.618」の、
いわゆる黄金比をもとに描かれているのだそう。
「golden ratio」だから、「GR」シリーズなのですね。
上で紹介した作品は、ごくごくシンプルですが、
こちらの「GR」シリーズの作品は、ちょっと複雑です。
一番太い線が、キャンバス全体に対しての黄金比。
その次に太い線は、黄金比で分けられた右側の黄金比。
さらに、次に太い線が、それぞれの黄金比を表しています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ちょっと自分で言ってても、
上手く伝えられている自信が無いので、
図を描き加えてみました。
他の線も同様に、黄金比によって引かれています。
つまり、適当に感覚で線が引かれているのではなく、
黄金比というある種のルールによって線が引かれているというわけです。
こちらの《Stripes Nr. 102+103》と名付けられた大型作品も、
やはり他の「GR」シリーズ同様に、黄金比を元に描かれています。
そういう意味では、アート好きだけでなく、
数学好きな方にオススメしたい展覧会です。
ちなみに、紹介した画像の中に、
ヴィンテージの北欧家具が、ちょくちょく映り込んでいますが。
これらは、銀座一丁目にあるインテリアショップLuca Scandinaviaが、
コーネーリアの作品群に合わせてセレクトした北欧アンティーク家具の逸品。
中には、現代ではもう作れない非売品の家具も。
北欧家具好きにもオススメしたい展覧会です。