約300年の歴史を持ちながらも、
2008年に廃業した群馬県前橋市の白井屋旅館。
その地に2020年12月に新たに開業したのが、白井屋ホテル。
アートファンなら一度は泊まりたいアートホテルです。
再生を手掛けたのは、前橋の地域創生に、
長年深く関わってきた〈JINS〉代表の田中仁さん。
設計を担当したのは、気鋭の建築家・藤本壮介さんです。
建物は、全部で2棟。
1つは、かつて利根川の支流にあったという、
土手の情景をイメージした新築の「グリーンタワー」。
こちらには、客室の他に、宿泊客のみ利用できるこだわりのサウナ、
一般の方も利用できる白井屋ザ・ベーカリー、ブルーボトルコーヒーなどがあります。
そして、もう1棟は「ヘリテージタワー」。
旧ホテルを大胆にリノベーションした建物です。
ちなみに。
外観でひときわ目を惹くポップな看板は、
昨年末この世を去ったアメリカのコンセプチュアルアーティスト、
ローレンス・ウィナーによるオリジナル作品です。
他にも、館の内外には、ライアン・ガンダーや、
群馬を拠点に活動を続ける白川昌生さん、
デジタルカウンターでお馴染みの宮島達男さんらの作品が設置されています。
なお、フロントに設置されていたのは、
杉本博司さん自身がセレクトしたという《海景》シリーズの作品。
シリーズの中で唯一となる淡水湖で撮影したものなのだそう。
海じゃないのは、群馬県が海なし県だから?
さてさて、先日、そんな白井屋ホテルに、
縁あって、一泊させて頂く機会に恵まれました。
本日は、その際に気が付いたあれこれを紹介したいと思います。
●吹き抜け空間に圧倒された
ヘリテージタワーに入って、
まず何よりも驚いたのが、吹き抜け空間。
鉄筋コンクリート造の建物の床を、
大胆にも4階分すべてぶち抜いたことで、
この圧倒的な光景を生み出していました。
上から見下ろすと、こんな感じです↓
柱と梁は、当時との建物のもの。
そこに軽やかな印象の階段が、
間を縫うように、複雑に張り巡らされています。
ちなみに。
そんな柱と梁と階段以上に、
複雑に張り巡らされているのが、
レアンドロ・エルリッヒによる《Lighting Pipes》という作品。
かつて白井屋旅館だった時代、
この吹き抜け空間には、たくさんの客室がありました。
その名残として、水道管を模した作品を張り巡らせたのだそうです。
なお、《Lighting Pipes》と題されているだけに、
夜になると、作品が光り輝き、まるで亡霊のように(?)、
空間にその姿が浮かび上がっていました。
●夜が更けると《Lighting Pipes》はめちゃ光る
日没後、白く光り輝いていた《Lighting Pipes》ですが。
22時を過ぎると、赤く光り始めました。
これは、前橋アラート的なものではなく、
宿泊者だけが鑑賞することができる特別なお楽しみ。
さらに、その後しばらく経つと、
《Lighting Pipes》の光の色は、赤から青に!
そして、23時30分から0時までは・・・・・
レインボーモードに突入!
さまざまな色に光り輝きます。
この模様は是非観たいところ。
なので、夜更かし確定です。
●パイプだらけの客室があった
白井屋ホテルの客室は全部で25室。
その中に、ジャスパー・モリソンやミケーレ・デ・ルッキら、
世界で名を馳せるクリエイターが手掛けたスペシャルルームが4室あります。
その中には、レアンドロ・エルリッヒによるスペシャルルームも。
こちらは、レアンドロ・エルリッヒが、
初めて手掛けたという“泊まれるアート作品”。
館内のパイプとは違って、金属製のパイプが室内に張り巡らされています。
しかも、客室内の椅子や蛇口、タオル掛けなど、
あらゆるものが金属製のパイプという徹底ぶりです。
この日は、こちらの部屋に宿泊させて頂きました。
なお、この部屋を含むスペシャルルームは、
アートと向き合う部屋なので、テレビはあえて置かれていません。
アート以外の娯楽といえば、
群馬だけに、上毛かるたが置かれているのみ。
一人でやっても面白くないので、
時々、ライティングの雰囲気を変えながら、
ずっと金属製のパイプを眺めながら、夜を過ごしました。
ちなみに。
ベッドから見える天井は、こんな感じです↓
“見知らぬ、天井”にもほどがありました。
●ホテルのほど近くに岡本太郎作品があった
白井屋ホテルから歩いて5分ほど、
広瀬川の川岸に、岡本太郎作の鐘があります。
その名も、《太陽の鐘》。
もともとは、静岡県の日通伊豆富士見ランドにありましたが、
1999年にランドが閉鎖されて以来、そのままとなっていたそうです。
それを前橋市の民間団体「太陽の会」が譲り受け、2018年にこの地に設置しました。
なお、周辺整備デザインは、藤本壮介さんが担当したとのこと。
植栽が育ちに育って、《太陽の鐘》をほぼ覆い隠していました(笑)
ちなみに。
岡本太郎の名言「でたらめをやってごらん。」に、
思いっきりインスパイアされたからなのでしょうか。
新たに作られた撞木(付き棒)の長さは、24mもあります。
鐘と同じくらい、撞木もでたらめでした。