明治5年(1872年)10月14日。
日本初の鉄道が、新橋-横浜間に開通しました。
今年2022年は、それから150年という節目の年。
それを記念して、日本の鉄道発祥の地・汐留で現在、
“鉄道開業150年記念 新橋停車場、開業!”が開催されています。
東京側の玄関口であった新橋停車場や、
開業当時の鉄道事情についてスポットを当てた展覧会です。
なお、舞台となるのは、鉄道歴史展示室。
実は、この建物がかつての新橋停車場です。
汐留にありますが、新橋停車場。
JR新橋駅とは場所が離れていますが、
もともと、今のJR新橋駅は烏森駅として開業したものだったそうです。
ちなみに。
開通当時の新橋停車場の建物は、
関東大震災で焼失してしまったそうで。
現在の新橋停車場は、当時の写真や資料を基に、
可能な限り、開業当初の外観を再現したものとのこと。
ただ、当時の駅舎やプラットホームの石積みは、
遺構として残っており、館の内外で観ることができます。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
というわけで、この建物自体が、
展覧会の何よりもの主役なわけですが。
企画展示室では、鉄道開業当時の、
貴重な資料の数々がパネルで紹介されています。
もちろんパネルだけでなく、再現模型や実物も展示。
鉄道ファンにはたまらない展覧会となっています。
とはいえ、鉄道にそこまで興味がない方もご安心を。
この展覧会では、鉄道にまつわる錦絵の数々も紹介されています!
鉄道が開通してから描かれた錦絵もいいのですが、
個人的には、開通する以前に描かれた錦絵がツボでした。
どうやら鉄道というものが開通するらしい。
そんな情報をもとに、鉄道を見たことがない絵師が、
想像力を駆使して描いてものなので、仕上がりが実にファンタジー。
錦絵によっては、クッキー缶を並べたみたいになってるものもありました。
こちらの《東京蒸気車馬車人力繫栄図》は、
明治6年、つまり開業の翌年に描かれたものなのですが。
客室の窓が小さすぎて、
護送車みたいな感じになっています。
この時もまだ想像で描いているのかと思いきや、
おそらく開業当時の鉄道は、こういう姿だったのだそうです。
(なお、当時の客車は残っていないそうです)
新橋から横浜まで約1時間。
ほぼ光の差し込まない空間に、
閉じ込められるように移動していたのですね・・・。
知りませんでした。
知らなかったといえば、こんなことも。
こちらは、『鉄道貨物運送補足並賃銭表』。
前半では、鉄道貨物運送の規則がまとめられているそうです。
後半では、貨物の輸送品目とその賃金が掲載されています。
開かれていたページの中に、とても気になる輸送品目を発見。
そこには、「タピオーカ」とありました。
そう、タピオカです。
明治時代にすでにタピオカがあったこと、
当時は、タピオーカと呼ばれていたことを初めて知りました。
生活する上で欠かすことのできない鉄道。
その意外と知らない誕生時のヒストリーを、
当時の雰囲気の中で感じ取れる展覧会でした。
最後に、個人的に一番印象に残った資料をご紹介。
『芝汐留ステーション構図』です。
こちらは、明治4年4月5日付の図面で、
一般に公開される形で公開されたものだそうです。
今でいう、工事現場にある工事看板のようなものでしょうか。
その中で気になったのが、赤のラインで引いた箇所。
設計者が、米国人ブリシンスであることを知らせるのは当然として。
「馬車ニテ来ル」という情報は、果たして必要なのでしょうか??
“電車を作るのに、馬車を使うのかよ?!”的なニュアンスなのでしょうか。
その右にある、“鉄道の父”こと井上勝が、
時々馬上にて見学してる的な情報も、そこまで必要ない気がします。