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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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日本の中のマネ ―出会い、120年のイメージ―

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現在、練馬区立美術館で開催されているのは、

“日本の中のマネ ―出会い、120年のイメージ―”という展覧会。

《草上の昼食》《フォリー・ベルジェールのバー》などで知られる、

19世紀フランスを代表する巨匠エドゥアール・マネに焦点を当てたものです。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)

 


マネとよく似た名前のモネの展覧会は、

これまでに日本で数多く開催されてきたのに。

実は意外と、あまりマネを主役にした展覧会は開催されていません。

その理由は、色合いが華やかなモネに比べて、作風が固い感じだから??

 

・・・・・ということで用意されたわけではないでしょうが。

展覧会の第1章では、マネに影響を与えた写実主義のクールベと、

マネが影響を与えたモネら印象派の画家たちの作品が紹介されていました。

 

 

 

もし、“マネが苦手で…”と敬遠されていらっしゃる方も、

同時代の画家たちの作品も展示されていますので、どうぞご安心を。

 

 

さて、続く第2章では、

いよいよ真打、マネが登場!

 

 

 

ポーラ美術館や東京富士美術館など、

日本各地の美術館が所蔵するマネ作品が紹介されています。

それらの中には、大原美術館所蔵のマネ晩年のパステル画、

ちょっと名取裕子似の《薄布のある帽子をかぶる女》もありました。

 

 

 

その総数は、実に7点(版画作品を除く)!。

そう聞いて、「少なっ!」と思われた方が大半でしょうが。

まさにこれこそが、マネとモネの日本での人気の差の表れ。

公になっている日本で所蔵されているモネの作品は、優に100点を超えています。

対して、日本に所在するマネの油彩画(パステル画を含む)は17点。

ニワトリが先か、卵が先か、ではないですが。

人気がないから日本にマネの作品が少ないのか。

日本にマネの作品が少ない。

→日本で目にする機会が少ない。

→それゆえに、マネの人気が少ないのか。

非常に興味深いテーマです。

何はともあれ、国内にあるマネ作品17点のうち7点が、

練馬区立美術館に今、一堂に会しているのは奇跡的なこと。

モネが好きな人も是非、この機会をお見逃しなく!

 

 

では、マネは本当に日本人にウケがよくないのか。

西洋の画家たちがマネに影響を受けたように、

こと美術界においては、マネの影響を受けた日本人画家は少なくないようです。

例えば、石井柏亭はの《草上の小憩》

 

 

 

ヌードの女性こそいませんが、

構図といい、モデルが鑑賞者に向ける視線といい、

完全に《草上の昼食》の影響を受けています。

タイトルも、《草上の小憩》ですし。

 

こちらの村山槐多の《日曜の遊び》も・・・・・

 

 

 

間違いなく、《草上の昼食》の影響を受けています。

あと、マネではないですが、

セザンヌの《水浴》《カード遊びをする人々》の影響も受けていますね。

 

 

それから、片岡銀蔵という画家の《融和》という作品は・・・・・

 

 

 

きっと、たぶん、おそらく《オランピア》の影響を受けています。

あと、ゴーガンの影響も。

 

 

と、このように、マネの影響を受けた、

あるいは、受けたと思われる日本人画家の作品を中心に、

第3章では、日本におけるマネの受容が紹介されています。

 

 

 

こちらも日本全国の美術館から、

たくさんの作品が集結しています。

担当された学芸員さんも、それだけ気合いが入っているようで。

 

 

 

キャプションやパネルのテキストの多さが、尋常ではありませんでした(笑)

もちろん読み込んだ方がディープに楽しめますが、

さらっと読み飛ばしても、楽しめる展覧会になっています。

 

 

さてさて、ここまでも充実していましたが、

この展覧会は全部で4章で構成されています。

最後の章を飾るのは、マネの作品をモチーフに、

日本を代表する2人の現代アーティストが制作した作品の数々です。

マネの作品をモチーフにしたといえば、

まず外せないのが、マネ作品にもなりきった森村泰昌さん。

 

 

 

これまでの代表作に加えて、2019年に開催された展覧会、

“コート―ルド美術館展”の関連イベントとして制作された作品も出展されています。

 

 

 

 

それからもう一人は、福田美蘭さん。

彼女は1992年に、《草上の昼食》をモチーフに、

《帽子を被った男性から見た草上の二人》を制作しています。

 

 

 

今展では、それら旧作だけでなく、新作も発表。

それも、8点も!

 

 

 

どれも福田さんらしい、ユーモアに溢れていましたが。

個人的に一番ささったのが、《ミュージアムショップのマネ》

 

 

 

都内のミュージアムショップを巡り、

マネ関連のグッズを集めてみたところ、

マネやゴッホと比べて、圧倒的に少なかったそうです。

そんな数少ないマネのミュージアムグッズを、

マネの静物画の灰色の背景で描いた作品とのこと。

こんなにも余白に悲しみを感じる作品は初めてです(笑)。

あと、サ●リオにさりげなく配慮しているのが、心憎いです。

 

それから、もう一つ印象的だったのが、

マネの《花瓶の苔バラ》をモチーフにした、

《LEGO Flower Bouquet》という作品です。

 

 

 

花瓶に活けられた花が、

よく見ると、レゴブロックでできている。

・・・・・というのも、まぁ面白いっちゃ面白いのですが。

この作品の面白さは、そこだけではなく。

サロン(官展)への出品に生涯こだわり続けたマネに倣って、

この作品を期間中に、日展の洋画部門にマジで応募し、マジで審査を受けるのだそう。

なので、この作品が見られるのは、10月13日まで。

マネが何度も経験したように、

もし、落選したなら、10月30日から再展示されるのだそうです。

入選しても、落選しても、どちらにしても面白い結果。

当確が楽しみです。

 

福田美蘭さんがフルスロットルすぎて、

最後にすべて搔っ攫ってしまった感もありますが(笑)

それも踏まえて面白い展覧会でした。

他の誰もマネできない展覧会です。

星星

 

 

 


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