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新版画 進化系UKIYO-Eの美

シン・ゴジラに、シン・エヴァンゲリオンに、シン・ウルトラマンに。

ここ近年、さまざまな“シン”が人気を博していますが、

今からちょうど100年くらい前に、日本の美術界で人気を博した“シン”がありました。

それが、シン・版画(=新版画)です。

 

では、新版画とは一体どんなものなのでしょうか?

その定義を調べると、「明治30年前後から昭和時代に描かれた木版画のこと」とあります。

う~ん、だいぶザックリとしてますよね。

具体的には、どこがどう新しいのでしょう?

 

日本を代表する版画といえばもちろん、

東洲斎写楽や葛飾北斎でお馴染みの浮世絵です。

江戸時代、庶民の間で大人気だった浮世絵も、

明治の世になると、写真や新聞など他のメディアが登場し、徐々に廃れていきます。

ところで、浮世絵というものは、

写楽や北斎といった絵師が、1人で作るものではありません。

摺師と彫師、それぞれの職人技があって初めて成立するものです。

明治になって浮世絵業界が下火になったとて、

絵師には、浮世絵以外の仕事がありましたが、

摺師や彫師は替えの仕事がありませんでした。

このままでは、職人技が途絶えてしまう!

それを危惧した版元・渡邊庄三郎が、今一度、

絵師・摺師・彫師の3者の技が融合した新たな版画を作ろうと、

情熱を注いで世に出版したのが、新版画なのです。

 

 

さて、前置きが長くなってしまいましたが。

そんな新版画にスポットを当てた展覧会、

“新版画 進化系UKIYO-Eの美”が、千葉市美術館で開催されています。

 

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(注:展覧会は一部撮影可。展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

千葉市美術館といえば、浮世絵や江戸絵画、

田中一村や現代美術のコレクションに定評がありますが。

実は、新版画のコレクションもかなり充実しています。

今回の展覧会では、その名から選りすぐりの名品を一挙蔵出し!

さらに、新版画誕生に少なくない影響を与えた小原古邨の作品から、

 

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昭和のモダンガール、いわゆるモガをモチーフにした小早川清まで。

 

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新版画の歴史を辿れる内容となっています。

もちろん、それらの作品の中には、

スティーヴ・ジョブズも大ファンだったという川瀬巴水や、

 

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日本に降り立ったマッカーサーが、真っ先に、

「ヨシダヒロシはどこにいる?」と言ったという逸話でお馴染みの吉田博の作品も。

 

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これぞ新版画の展覧会の決定版!

すでに新版画の魅力にハマっている人にも、

これを機に新版画デビューしたい人にも、オススメできる展覧会です。

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星
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全ての作品が展示ケースに入っていないのも良き。

摺師と彫師の超絶技巧を肉眼でまざまざと目にすることができますよ。

 

 

ちなみに。

今回、個人的にもっとも勉強になったのは、

「新版画=渡邊庄三郎」ではなく、彼以外にも版元がいたという事実。

とはいえ、渡邊庄三郎が重要な人物であることは変わりなく。

展覧会では、まるでROLANDのように(?)、

「渡邊か。渡邊以外か。」で紹介されていました。

 

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渡邊以外の版元で、特に印象に残っているのが池田富蔵。

彼が発売した新版画のうちの一つに、

鳥居言人による《朝寝髪》という作品(写真手前)があります。

 

 

 

朝寝髪とは、起き抜けの乱れた髪とのこと。

ゆうべはお楽しみだったのでしょうか。

描かれた女性が、妙に艶めかしいですね。

実際、この作品が昭和6年に発表された際、そう感じた人は多かったらしく。

100部を予定したものの、70部を摺った時点で発禁になってしまったそうです。

これに納得できなかった版元の池田は、没収される際、

版木と作品にわざわざ『×』を付けて、警視庁に提出したのだとか。

ちょっとでも抵抗したかったのでしょうね。

 

 

それからもう一つ勉強になったのが、

外国人作家による新版画も少なくなかったことです。

例えば、今展のメインビジュアルに採用されている《藍と白》

 

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エリザベス・キース《藍と白》 大正14年(1925) 千葉市美術館蔵

 

 

こちらを描いたのは、イギリスの女性版画家エリザベス・キース。

姉を訪ねてやってきた日本の風景に心を惹かれ、

日本に長期滞在する中で、浮世絵を学んだのだそうです。

《藍と白》という作品は、日本を象徴する色で、

日本の生活に深く根付いた藍色をモチーフにしたもの。

男性や女性が着ているものも藍色なら、

のれんや垂れ幕、前掛けや傘も藍色です。

ディスプレイされたやきものにも、

北斎の浮世絵にも藍色が使われています。

 

 

また、実をいうと、渡邉庄三郎が最初に手がけた新版画も、

オーストリア出身の版画家フリッツ・カペラリによるものだったそう。

 

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フリッツ・カペラリ《鏡の前の女(立姿)》 大正4年(1915) 千葉市美術館蔵

 

 

同じオーストリアの画家クリムトが、

《エミリー・フローゲの肖像》を発表したのが、1902年。

ということは、フリッツ・カペラリも、

その作品を観て、インスパイアされた可能性は大いにあります。

落款もウィーン分離派っぽいテイストですし。

 

 

最後に、どうしても気になってしまった新版画をご紹介。

名取春仙《春仙似顔絵集 五世中村歌右衛門の淀君》です。

 

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名取春仙《春仙似顔絵集 五世中村歌右衛門の淀君》 大正14-昭和4年(1925-29) 千葉市美術館蔵

 

 

どう見ても、三遊亭好楽。

それも、回答後にドヤ顔する三遊亭好楽です。

 

 

 


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