日本で2番目に古い公立美術館、京都市美術館。
2017年より大規模な改修工事が行われ、
2020年にリニューアルグランドオープンしました。
外観はほとんど変わっていないような気がしますが。
いえいえ、かつての出入り口の扉は閉じられ、
その代わり、地下に当たる部分に新たなエントランススペースが誕生していました。
内部はもっと大きく印象が変わっており、
旧来は大陳列室として使われていたスペースは・・・・・
バルコニーを備えた中央ホールへと様変わり!
特にアイコニックな螺旋階段は、
若い女性たちに人気のようで、フォトスポットと化していました。
というわけで、さして意味はないですが、
自分も螺旋階段を上から撮影してみました。
他にも、若手作家を紹介するための展示スペースが誕生していたり、
日本庭園と東山を見渡せるテラスが誕生していたり、
中庭だったスペースを大胆にリノベーションした「光の広間」が誕生していたり、
と、すっかり様変わりしていましたが。
館名も京都市美術館から、
京都市京セラ美術館へと様変わりしています。
これは、大規模な改修工事のための費用を確保すべく、
ネーミングライツ(命名権)を総額50億円で京セラに売却したことに由来するもの。
2019年から向こう50年間は、京都市京セラ美術館という館名でいくそうです。
さてさて、そんな京都市京セラ美術館で現在開催されているのは、
“幻想の系譜―西洋版画コレクションと近代京都の洋画”というコレクション展。
夏季開催の展覧会らしく、中村研一の《瀬戸内海》を筆頭に、
海をモチーフにした収蔵品の数々も紹介されていましたが。
メインとなるのは、シュルレアリスムに傾倒した京都の洋画家たちの作品群です。
その代表的な人物が、北脇昇。
初期には、いかにもシュルレアリスムな作品を描いていましたが。
ある時から急に、数学的要素や光学的要素を、
絵の中に入れ込んだ独自の世界観を確立したことで知られています。
今展で紹介されていた中で、
特に印象的だったのは、《眠られぬ夜のために》という作品です。
天上から指す光に照らされているのは、ホトケノザとのこと。
まるで両腕を挙げたバレリーナのように見えるのは、僕だけでしょうか。
すべてが謎めいており、一体どんな情景なのか。
考えれば考えるほど、夜眠れなくなりそうです。
それから、京都を代表する前衛画家のもう一人が、小牧源太郎。
「仏画的なもの」をテーマに多くの絵を描いた、
一度観たら忘れられない強烈な個性の持ち主です。
とりわけ強烈だったのが、《民族系譜学》という作品。
昆虫のような謎のクリーチャーが、
こちらをじっと見つめているようです。
ガンシューティングゲームなら、
間違いなく、ボスキャラの一人でしょう。
何より驚かされたのが、制昨年。
なんと昭和12年に制作された作品だそうです。
令和に生きる自分でも十分に、
この独創力に驚かされましたが。
昭和の当時の人々はきっと、その比ではなかったことでしょう。
なお、会場で紹介されていたのはもう一人、
北脇昇とともに活動した洋画家・今井憲一も。
《落日》と名付けられた作品には・・・・
「めざましくん」のメス(?)みたいなのが描かれていました。
また、今回の展覧会では、
近年一括購入を受けたという西洋版画コレクションも紹介。
ゴヤやロートレック、ピカソ、マグリットといった巨匠たちの版画が展示されていました。
その中で一つ妙に気になってしまったのが、キャプションの表記方法。
古くからのしきたりを守る京都ならではなのでしょうか。
『トゥールーズ=ロートレック, アンリ・ド』や『マグリット,ルネ』など、
苗字と名前の順番は日本式で絶対に譲らないという謎のポリシーがあるようです。
しかも、海外の芸術家であろうが、
紹介する際は日本の年号を交えて紹介。
ホガース,ウィリアム(元禄10-明和1)
性格および戯画
1743(寛保3)年
ゴヤ・イ・ルシエンテス,フランシスコ・ホセ・デ(延享3-文政9)
版画集『ロス・カプリチョス』
1799(寛政11)年初版/1878(明治11)年刊(第4版)
といった具合に表記されていました。
元禄とか延享とか言われても、
全くもってピンと来なかったです(笑)
ちなみに。
京都らしさは、入館料にも表れていました。
京都市内在住の方:520円
市外在住の方:730円
「よそさん」にはちょっと厳しい。
それが、京都市京セラ美術館です。