現在、東京都庭園美術館で開催されているのは、
“旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる”という展覧会。
「旅」をテーマにしたアンソロジーのような展覧会です。
まず紹介されていたのは、朝香宮夫妻の100年前の欧州旅行。
おそらく、2人が経験したこの旅が無かったら、
アールデコの館と呼ばれる庭園美術館の本館は存在していなかったことでしょう。
展覧会では、その旅に関する貴重な資料の数々や、
本展のために制作された、旅の行程がわかる巨大な地球儀などが紹介されています。
それらの中で、個人的に印象に残っているのが、
旅行先で手に入れたというセーヴル製のコーヒーセットです。
今から100年も前のデザインとは思えない斬新さ。
今から100年も前のデザインとは思えない草間彌生感がありました。
また、朝香宮夫妻にスポットを当てるたびに、
庭園美術館で展示されるペンギンは今回も健在。
(↑箱書きには「ペリカン」とありますが)
と思ったら、初めてお目にかかる、
新たな3羽のペンギンも展示されていました。
どうやら、今回初公開されるものだそうで、
こちらも朝香宮夫妻が旅先で購入したお土産とのこと。
ご夫婦はペンギンがお好きだったのですね。
続いて、展覧会では「世界のKENZO」こと、
国際的ファッションデザイナー・高田賢三さんの旅にも注目。
世界中を旅したことでインスピレーションを得たという、
世界各地の民族衣装をアレンジした斬新なファッションの数々が紹介されていました。
また、展覧会曰く、“集めることは旅すること”とのことで、
20世紀前半の鉄道関連資料を蒐集しているコレクターにもスポットが当てられています。
そのコレクターさんのコレクションルームが完全再現されていました。
と、ここまででも内容盛り盛りの展覧会ですが、
本展にはさらに、6人の現代アーティストも参加しています。
本館と新館を使って、それぞれ新作を発表していました。
今注目のサウンドアーティストevalaさんによるサウンドインスタレーション作品や、
備え付けの飾り棚を巧みに用いた宮永愛子さんの作品も印象的でしたが。
やはり何と言っても、本展の白眉は、
映像作家さわひらきさんの作品でしょう!
映像作品そのものも、もちろん素晴らしかったのですが、
通常時は窓から外光が明るく差し込むこの大食堂スペースを、
映画館に仕立てるというアイディアを含め、展示空間全体が実に素晴らしかったです。
この展示空間を味わうだけでも、展覧会を訪れる価値は十分にアリ!
これまでの庭園美術館のイメージを、
いい意味でガラッと覆す野心的な展覧会です。
なお、さわひらきさんの展示空間も素敵でしたが、
本や文房具をモチーフにした作品で知られる福田尚代さんの展示空間もオススメ。
本展では、彼女の代表的シリーズの一つ、《翼あるもの》が出展されています。
《翼あるもの》は、福田さんが幼い頃から、
実際に大切に読んでいた書物を1頁1頁折りたたんだもの。
まるで、鳥が翼を広げているように見えることから、そう名付けられました。
本展には、そんな《翼あるもの》が228点も展示されています。
かつて寝室だった部屋や書斎にも展示。
さらには、書庫の中にも、たっぷりと展示されています。
たくさんの《翼あるもの》が、
まるで羽根を休めているかのような光景は、まさに圧巻です。
そうそう、圧巻といえば、日本中を旅し、
各地の土を集めるアーティスト栗田宏一の作品も。
その展示室の一角に・・・・・
ずらっと並べられていたのは、大量の絵ハガキです。
その表面を見ると、3種類の土が付着しています。
そして、宛名は東京都庭園美術館になっています。
実は、栗田さん。
展示が決まった昨年11月から開幕までの約300日間、
毎日、旅先で土を採集し続け、3日に一度必ず絵ハガキを送り続けていたのだとか。
考えるだけでも、しんどいです。
こんなことを300日も続けたら、顔が土気色になることでしょう。