2022年9月28日。
旧国立競技場の壁画が、
ついに新国立競技場へ移設されました!
・・・・・・・・・と言われても、
“一体、何のことやら?”と思われた方が大半でしょう。
話は遡ること、約8年前。
来る東京オリンピック2020に向けて、
国立競技場の建て替えが決定しました。
その際に懸念されていた問題の一つに、
かつての国立競技場(=旧国立競技場)内の壁画を、
一体どこに移転するか、というものがありました。
いや、実際は、もっと深刻で、
そのまま廃棄処分になるところでした。
しかし、さまざまな方が立ち上がり、
クラウドファンディングでのサポートもあって、
今年になって、ようやく新国立競技場への移設作業が完了したのです。
(なぜ、東京オリンピック2020が終って、1年以上も経った今のタイミングで??)
さて、そんな壁画たちは、外苑西通り沿い、
創業30年の老舗ラーメン店・ホープ軒の向かいに移設されました。
旧国立競技場時代は、入場した人しか見れませんでしたが、
移設後の今は、誰でも道行く人は、目にすることができるようになりました。
便宜上、簡単に「移設」とお伝えしましたが。
当たり前ですが、壁ごと切断し、
そのとてつもなく重たいコンクリート片を、
一時的にどこかに保管し、それを再度この場所に移設したわけです。
重量挙げのオリンピアンが何人くらい必要な作業量なのでしょう・・・。
しかも、1、2点でなく、その数じゃ実に11点。
福岡県出身の洋画家の寺田竹雄による《友愛》や、
軽井沢に個人美術館がある脇田和の《躍動》など、
1964年の東京オリンピック当時に活躍した画家たちによる渾身の壁画の数々です。
それらの中には、大沢昌助の作品もありました。
大沢昌助は、東京藝術大学建築科を立ち上げた建築家・大沢三之助を父に持つ人物。
ピカソやパウル・クレー、モンドリアンやベルナール・ビュフェなど、
あくまで、いい意味で西洋の巨匠たちの作風をモノにしてしまう画家です。
旧国立競技場に設置されていた《人と太陽》は・・・・・
マティスとル・コルビュジエを足して、
ちょうど2で割ったようなスタイルの作品でした。
前回の東京オリンピックの時に、
この壁画を目にした海外の方は、
何も言わなかったのだろうかと、心配でなりません(笑)
さてさて、数ある壁画の中で、
特に見逃せないのが、こちらです。
続・無料で観れる美術百選027
宮本三郎《より速く》
作者は、昭和を代表する洋画家の一人、宮本三郎。
藤島武二、安井曾太郎らに師事し、
若くして画家としての頭角を現しました。
自身も画家としてはもちろん、指導者としても活躍し、
実はあの鴨居玲も、宮本三郎の教え子の中の一人です。
「デッサンの名手」という異名を持つ宮本だけに、
《より速く》に描かれている人物一人一人はサラッと描れているようで、
より速く走ろうとするアスリートの本能のようなものが見事に表現されています。
ただ、全体的に観ると、団子状態ゆえ、
そこまで、“より速く”感は感じられません(注:個人の感想です)。
あと、色味的に若干のジャマイカ感、
『クール・ランニング』が感じられました。
ともあれ、クラウドファンディングをしてでも、
現代に残したいこれらの美術作品が数多く生まれたのが、前回の東京オリンピック。
これぞレガシー。
東京オリンピック2020は一体何を残してくれたのだろうか。
<無料で観れる美術 データ>
国立競技場
住所:東京都新宿区霞ヶ丘町10-1
アクセス:○JR総武線各「千駄ケ谷駅」「信濃町駅」より徒歩5分
○都営大江戸線「国立競技場」より徒歩1分
○東京メトロ銀座線「外苑前駅」より徒歩9分