高野山金剛峯寺が所蔵する国宝の《澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃》や、
国宝 澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃 平安時代・12世紀 高野山金剛峯寺 画像提供:高野山霊宝館
徳川美術館が所蔵する国宝の《初音蒔絵文台・硯箱》、
国宝 初音蒔絵文台・硯箱 幸阿弥長重作 江戸時代・寛永16年(1639) 徳川美術館
(注:展示は10/1~23)
サントリー美術館が所蔵する国宝の《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》を筆頭に、
国宝 《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》 鎌倉時代・13世紀 サントリー美術館
(注:展示は10/25~11/13)
国宝7件・重要文化財32件を含む、
蒔絵のトップスターたちが日本各地から大集結した、
蒔絵のサミットともいうべき展覧会が、現在三井記念美術館で開催されています。
その名も、“大蒔絵展 漆と金の千年物語”。
ただの蒔絵展ではなく、‘大’蒔絵展。
そう名付けるのも大納得の、大充実した展覧会です!
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
漆は英語で、「ジャパン」。
起原は中国ではあるものの、
日本に伝来し、日本で独自の発展を遂げた漆。
展覧会では、その華やかに輝く歴史を、
銘品の数々を交えながら紹介しています。
目玉となる作品は数多くありますが、
中でも見逃せないのが、国宝の《源氏物語絵巻》。
一昨年に修復が完了したばかりの国宝です。
国宝《源氏物語絵巻 宿木一》平安時代(12世紀)徳川美術館蔵
(注:展示は10/1~9)
もともとは3巻からなる巻子装でしたが、
保存や公開することを鑑みて、昭和7年に額面に仕立て直されました。
しかし、やはり本来の姿に戻そうということになり、
2016年より5年に及ぶ修復作業が行われていたそうです。
・・・・・・で、《源氏物語絵巻》と蒔絵はどう関係あるの?
と思われた方も、いらっしゃることでしょう。
宮中の様子が描かれた絵の中をよーくご覧ください。
いたるところに、漆塗りの調度品があるのが見て取れます。
平安時代、貴族たちの生活に、
いかに漆が浸透していたのかがわかりますね。
と、このように蒔絵以外の作品も、
展覧会では数多く紹介されていました。
蒔絵の装飾が見事な鼓の名品と、
能装束や能面を合わせて紹介していたり。
日本美術界のマルチアーティスト、
尾形光琳作の蒔絵と絵画を合わせて紹介していたり。
蒔絵ファン、工芸ファンだけでなく、
日本美術ファン全般に刺さる内容となっています。
さまざまな時代の蒔絵が紹介されていた中で、
個人的にもっとも興味を惹かれたのは、南蛮漆器です。
南蛮漆器とは、桃山時代に作られた輸出用の漆器のこと。
当時、日本にやってきたポルトガル人やスペイン人が、
黒漆の光沢感金蒔絵や螺鈿の煌びやか美しさに魅せられ、
自分たちが使うためのアイテムを蒔絵でオーダーしたのだとか。
それらの中には、このようなものも。
花樹鳥獣蒔絵螺鈿聖龕 桃山時代・16世紀 名古屋市博物館
(注:展示は10/1~23)
豪華絢爛にもほどがある聖龕(=キリスト教の聖画を収納する厨子)です。
周りがどうにもこうにも華やかすぎて、
磔刑にされているキリストの姿が、あまり入ってきません(笑)
キリスト自体、「俺の周りの装飾、これでいいの?」と困惑しているようです。
また、紹介されていた南蛮漆器の中には、
ドラクエに出てくるような宝箱(正しくは、洋櫃)もありました。
この中には、「やくそう」か「ゴールド」、
「キメラのつばさ」が入っていたのかもしれません。
もしくは、ミミックというパターンも。
ちなみに。
展覧会では、“世界のZESHIN”こと柴田是真から、
五節句蒔絵手箱 柴田是真作 江戸~明治時代・19世紀 サントリー美術館
(注:展示は10/1~23)
人間国宝で「蒔絵のトップランナー」でもある室瀬和美さんまで。
蒔絵螺鈿丸筥「秋奏」 室瀬和美作 平成29年(2017) ポーラ伝統文化振興財団
明治以降に活躍した漆芸界のレジェンドたちの作品も数多く紹介されています。
それらの中で、個人的にイチオシなのが、
MOA美術館が所蔵する白山松哉の《蒔絵八角菓子器》です。
蒔絵八角菓子器 白山松哉作 明治44年(1911) MOA美術館
白山松哉は、明治から大正に活躍した
“漆芸界のファンタジスタ”とも言うべき漆芸家。
一見すると、シンプルに感じられるかもしれない《蒔絵八角菓子器》ですが。
五段重ね、八角形の全面に、
それぞれ違う技法が使われています。
蒔絵の技のデパートとでもいうべき、超絶技巧の逸品。
特に蒔絵を経験したわけでない自分でさえ、
思わず「参りました」と頭を下げたくなってしまう作品でした。
┃会期:2022年10月1日(土)~11月13日(日)
┃会場:三井記念美術館
┃https://maki-e.exhibit.jp/