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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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野口里佳 不思議な力

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東京都写真美術館で開催中の展覧会、

“野口里佳 不思議な力”に行ってきました。

 

 

 

埼玉生まれ那覇市在住で、国際的にも活躍する写真家、

野口里佳さんの国内では実に5年ぶりとなる大規模な展覧会です。

展覧会の冒頭で紹介されていたのは、

タイトルにも採用されている《不思議な力》シリーズ。

 

 

 

言葉通り、表面張力や磁力など、

目には見えない“不思議な力”を可視化したシリーズです。

おしゃれでエモい『学研の科学』といった印象を受ける写真でした。

 

ちなみに。

シリーズのうちの1枚に、

何の力を可視化したのかが、

ちょっと伝わりづらいものがありました。

暗闇に浮かぶ怪しげな手のひらのシルエット。

 

 

 

思わず、『X-ファイル』のOPのワンシーンが過りました。

 

 

 

“不思議な力”っちゃ、“不思議な力”ですね。

 

 

続いて紹介されていたのは、

一見すると、何の変哲もない家族写真。

 


 

それも昭和の香りが漂う、

ノスタルジックな家族写真です。

こちらは、2014年に初めて発表され、

今年写真集として刊行された《父のアルバム》というシリーズ。

このシリーズを制作する前年に亡くなったた野口さんのお父さんは、

プライベートでよく写真を撮っていたようで、たくさんのネガが遺されていたそうです。

野口さんがそれらのネガを自分でプリントしてみたところ、

20年前に他界した母や、自分と兄弟、何気ない風景が写っていたそう。

父が撮影したネガを印画紙に焼きつけることで、

父の視線を追体験ができ、幸福な時間を過ごすことができたのだとか。

これはまさに、写真でしかできない不思議な体験、

写真が生み出す“不思議な力”だと実感したのだそうです。

最近はすっかりデジカメやスマホばかりで、

フィルムカメラで撮影する機会がなかったですが。

野口さんのこのシリーズを観て、

無性にフィルムカメラで撮影したくなりました。

 

 

さてさて、展覧会では他にも、1995年に発表され、

出世作となったダイバーを被写体にした《潜る人》シリーズや、

 

 

 

風に煽られるヤシの木を映した新作《ヤシの木》シリーズなど、

 

 

 

初期から最新作まで、代表的なシリーズの数々が紹介されています。

モチーフやフォーマットはシリーズによってバラバラで、

パッと見は、とても同じ写真家の作品とは思えないかもしれませんが。

どの写真にも共通して、不思議な可笑しみがあります。

 

例えば、《クジャク》というシリーズ。

 

 

 

クジャクのパブリックイメージ(?)である、

羽根を大きく広げた姿は一切登場していません。

クジャクのオフショット、

クジャクのプライベート隠し撮り、といった感じです。

 

また、レスキュー隊の訓練の様子を、

映像で撮影した《レスキュー》という作品。

 

 

 

レスキュー隊の皆さまは、

日々僕らのいざという時のために、

このように過酷な訓練をされているわけです。

それは重々分かった上で映像を観ているのですが、

キビキビとした倍速の動きが、どうにもチャップリンや、

バスター・キートンのようなサイレントコメディのように見えてしまい。

なぜか妙に可笑しみが込み上げてきてしまうのです。

 

 

野口さんの写真に感じる可笑しみをオノマトペにするなら、

「アハハ」でも、「ニヤニヤ」でもなく、「クックックックッ」でしょうか。

『ちびまる子ちゃん』のキャラクター、

野口さんの含み笑い方を彷彿とさせる可笑しみです。

ということで、個人的にこれからは、

野口里佳さんのことを“写真界の野口さん”と呼ぼうと思います。

あ、それは結局そのままか。

星

 

 

ちなみに。

個人的に一番気に入った作品は、

成長するキュウリの姿を撮らえた、その名も《きゅうり》というシリーズ。

 

 

 

きゅうりがまるでスポットライトを浴びているようで。

実にドラマチックな印象を受けます。

今にもフラッシュダンスを踊り出しそう。

 

 

 

 


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