Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

花鳥風月 名画で見る日本の四季~秋冬夏編

$
0
0

岡田美術館で現在開催中の展覧会、

“花鳥風月 名画で見る日本の四季~秋冬夏編”に行ってきました。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)

 

 

こちらは、今年2022年、ほぼ一年間を通じて開催される展覧会で、

コレクションの中から四季にまつわる作品の数々を紹介するものです。

春夏編が7月10日に終り、7月16日からは秋冬編がスタート。

胡粉で菊の立体感を表現した尾形光琳の《菊図屏風》や、

 

尾形光琳《菊図屏風》(部分) 江戸時代前期  18世紀初頭 岡田美術館蔵

 

 

葛飾北斎晩年の傑作肉筆画の一つである《雪中鴉図》をはじめ、

 

葛飾北斎《雪中鴉図》(部分) 江戸時代弘化4年(1847) 18世紀初頭 岡田美術館蔵

 

 

秋や冬の風物詩、情景を描いた、

名品の数々が、惜しげもなく一挙大放出されています。

秋に冬に、モチーフこそおセンチですが、

見ごたえとしては、まったく物寂しさを感じない、

むしろ大充実した、実りのある展覧会でした。

芸術の秋。岡田美術館の秋。

星星

 

 

今回出展されていた作品の中で、

特に印象に残っているものをいくつかご紹介いたしましょう。

まずは、酒井抱一による《月に秋草図屏風》です。

 

酒井抱一《月に秋草図屏風》 江戸時代 文政8年(1825) 岡田美術館蔵

 

 

実に品が良く、スタイリッシュ。

どことなく、アールヌーヴォーの雰囲気も感じさせる洒脱な逸品です。

これが今から約200年前の日本で描かれたものとは思えません。

ただ、強いて言えば(←?)、月がちょっと・・・。

シルエットが、どう見ても四次元ポケット。

そのせいで、ススキが若干タケコプターのようにも見えてきました。

 

そんな抱一の弟子、鈴木其一が描いた秋草の絵が、こちら↓

 

 鈴木其一《秋の七草図》(部分) 江戸時代後期 19世紀前半 岡田美術館蔵

 

 

師匠の抱一のスタイリッシュさとは対照的に、

余白は少なめで、濃厚・濃密な印象を受けます。

接写感のある一枚。

抱一の《月に秋草図屏風》が宣材写真なら、

其一の《秋の七草図》は密着取材のオフショットといった感じでしょうか。

 

 

接写と言えば、村上華岳の《寒柳之図》も強く印象に残っています。

 

村上華岳《寒柳之図》 昭和時代初期 20世紀前半 岡田美術館蔵

 

 

枯れた柳の木をモチーフに、

しかも、このようなトリミングで描いた日本画は、

おそらく、後にも先にもこの一枚ではないでしょうか。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉がありますが、

もはや、幽霊よりもこの枯れ尾花のほうが、怖さが勝っている気がします。

 

なお、冬の枯れ木をモチーフにした作品は、他にも。

速水御舟の親友にしてライバル・小茂田青樹による《雪日》です。

 

小茂田青樹《雪日》 昭和2年(1927) 岡田美術館蔵

 

 

一見すると、何の変哲もない枯れ木ですが。

よくよく見てみると、枝が複雑に絡まっているのが見て取れます。

奥に伸びているように見える枝が手前にあって。

その枝と枝を縫うように別の枝が伸びていて。

まるでエッシャーのだまし絵のような作品です。

 

さてさて、そんな小茂田青樹の作品は他にも2点出展されていました。

そのうちの1点が、こちらの《双鷺》

 

小茂田青樹《双鷺》 昭和時代初期 20世紀前半 岡田美術館蔵

 

 

ありそうでなさそうな。

シュルレアリスムのような光景です。

普通に見えて、どこか少し変。いや、だいぶ変。

それが、小茂田青樹。

いつかブレイクして欲しい。

個人的に大注目の日本画家です。

 

 

ちなみに。

副題に“名画で見る”とありますが、

絵画作品に限らず、陶芸や工芸の作品も紹介されています。

それらの中には、尾方光琳の弟、乾山による角皿もありました。

 

尾形乾山《色絵絵替角皿(10枚のうち1枚)》 江戸時代 18世紀 岡田美術館蔵

 

 

一つのイガの中に、栗が6つも!

めちゃめちゃ大当たりの栗じゃん!

・・・・・と思ったら、自然界では、

こんな栗の実のなり方はあり得ないそう。

確かに、こんな栗の姿は見たことありません。

人生ゲームの車のコマみたいな感じです。

 

また、こちらも乾山の作。

 

尾形乾山《色絵椿文輪花向付》 江戸時代 18世紀 岡田美術館蔵

 

 

デザインが現代的すぎて、

マリメッコかマリークヮントかと思いました。

 

 

最後に紹介したいのは、伝 菱川師宣の《江戸四季風俗図巻(下巻)》

 

伝 菱川師宣《江戸四季風俗図巻(下巻)》 江戸時代前期 17~18世紀 岡田美術館蔵

 

 

《見返り美人図》で知られる菱川師宣の作かもしれないと伝わる絵巻。

その中には、“見返り美人”ならぬ・・・・・

 

 

 

”見守り”美人がいました。

『巨人の星』の星明子ばりに、

衝立の陰から何かを見守っています。

 

また、絵巻の一部には、こんなものも描かれていました。

 

 

 

蹴鞠をするための謎の装置。

まるで『逃走中』で確保されたプレイヤーが入れられる檻のようです。

 

 

 ┃会期:2022年7月16日(土)~12月18日(日)
 ┃会場:岡田美術館

 ┃★リピーター割引あり(前期の入館券の提示で後期の入館料が2000円に)
 ┃https://www.okada-museum.com/exhibition/
 

 

 


1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles