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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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杉本博司 本歌取り―日本文化の伝承と飛翔

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姫路城のほど近くにある姫路市立美術館に行ってきました。

 

 

 

特徴的な赤レンガの外観は、

かつて陸軍の倉庫だった名残です。

その背後に姫路城が聳えている光景は、実にシュール。

雰囲気がシュールだから、というわけではないようですが、

姫路市立美術館は、マグリットやデルヴォー、アンソールといった、

ベルギーのシュルレアリスムコレクションに定評があります。

 

 

さて、そんな姫路市立美術館で現在開催されているのが、

“杉本博司 本歌取り―日本文化の伝承と飛翔”という展覧会。

 

 

 

和歌の伝統技法の1つである『本歌取り』。

有名な古歌の一部を取り入れ、

そこに新たな趣向をくわえて作成するものです。

オマージュといいましょうか、パロディといいましょうか。

そんな『本歌取り』の美術版というべき着想で、

現代美術家の杉本博司さんが制作した作品の数々が紹介されています。

 

例えば、《月下紅白梅図》

 

 

 

本歌となるのは、国宝の尾形光琳《紅白梅図屏風》

《紅白梅図屏風》の画面中央に流れる流水の鈍色を、

画面全体に拡張させるべく、プラチナプリントで表現した作品です。

漆黒に包まれ、真夜中の《紅白梅図屏風》といった感じになっています。

 

 

また例えば、新作の《立岩図屏風》

 

 

 

本歌となるのは、フリーア美術館が所蔵する俵屋宗達の《松島図屏風》

この絵をフリーア美術館で実際に目にしてから20年後。

松島ではなく丹後半島を旅していた際に、

描かれていた光景とよく似た風景と出会ったそう。

本作は、そのモノクロ写真を屏風に仕立てたものです。

現実の光景なのに、まるで絵画のような。

不思議な感覚に陥る作品です。

 

 

杉本さんが本歌に選ぶ作品は、日本美術だけではありません。

こちらは、マルセル・デュシャンの《泉》を本歌にした作品。

 

 

 

一筋縄ではいかない。

どこか人を煙に巻くような《泉》という作品。

そのイメージを具現化すべく、

もっとも鮮明に撮れるカメラを使って、

あえてピンボケに映した作品なのだそうです。

つまり、最も鮮明なピンボケ写真とのこと。

 

ちなみに。

《泉》を本歌にして制作したという、

ガラスの茶碗も併せて展示されていました。

 

 

 

実際の《泉》には「Mutt」とサインがありますが、

この茶碗の底には、「Sutt」とサインがあるのだとか。

せっかくなので(?)、手前のガラス茶碗にピントを合わせ、

背後の最も鮮明なピンボケ写真をさらにピンボケさせてみました。

 

 

展覧会では他にも、思わずニヤリ、

思わずクスっとなってしまう本歌取り作品や、

組み合わせの妙が楽しめる展示がありました。

 

 

 

個人的には、今年観た展覧会の中でも、

1、2を争うくらいにオモシロい展覧会でしたが。

“本歌取り”だらけの展覧会ゆえ、

本歌についてある程度の知識がないと、

完全には楽しめないような気もします。

個人的には超3ツ星ですが、

総合的にジャッジすると2ツ星でしょうか。

星星

 

 

前々から薄々そんなような気がしていましたが、

今展を通じて、疑念から確信に変わったことがありました。

それは、杉本博司さんはダジャレ好きということ。

 

例えば、こちらの作品。

 

 

 

鎌倉時代に作られた五輪塔。

その笠の部分を杉本さんがガラスで補作した作品です。

付けられた銘は、「笠がない」。

井上陽水の名曲の本歌取りですね(笑)

 

また例えば、こちらのお茶碗。

 

 

 

江之浦測候所の竹林から採取した土で作ったという茶碗です。

長次郎の黒楽茶碗、「ムキ栗」によく似たフォルム。

銘もそれによく似て、「ムリ栗」でした。

 

極めつけは、こちらの仏像たち。

 

 

 

パッと見は、時代を感じる、

イイ感じに歴史を感じる風合いの仏像ですが。

近づいて、よくよく見てみると・・・・・

 

 

 

顔が電球だったり、目薬の瓶を持っていたり。

顔が唐辛子だったり、恐竜の糞の化石を持っていたり。

『キン肉マン』の悪魔超人のような、魔改造をされています。

このように時代を超越した後補をすることで、

仏像の持つ厳かな印象を薄めたかったとのこと。

それゆえに、《廃仏希釈》というタイトルが付けられていました。

廃仏毀釈ではなく。

 

 

他にも紹介したい作品はまだまだありますが。

 

 

 

キリがないので、この辺で。

最後に個人的にもっともツボだった作品をご紹介いたしましょう。

タイトルは、《天山飯店 品書》です。

 

 

 

何を軸装しとんねん!

 

関西人じゃないのに。

ナチュラルに関西弁のツッコミが口から飛び出しました。

後日、調べたところ、天山飯店は

白金鷹輪に実在する中華料理屋で、

お品書きもこれと全く同じであるようです。

 

 

さまざまな本歌取りを目にすると、

自分も何か本歌取りをしてしまいたくなるものなのかも。

展覧会を観終わった後、美術館の庭のセンターにある、

木内克さんの彫刻に、何気なく再び目をやったところ・・・・・

 

 

 

台座に謎の象が置かれていました。

元ネタはまったく見当が付きませんが、

きっと何かしらの本歌取りをしているのかもしれません。

 

 

 


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