今年めでたく開館50周年を迎えた笠間日動美術館では現在、
“開館50年記念 夭折の画家たち -青春群像-”が開催されています。
若くしてこの世を去りながらも、
日本美術史に燦然と輝く画家たち。
いわゆる‘夭折の画家’たちにスポットを当てた展覧会です。
重要文化財《海の幸》で知られる青木繁(享年28)や、
再起をかけ、2度目に渡ったパリで客死した佐伯祐三(享年30)、
そのパッションの強さから、高村光太郎から、
“火だるま槐多”と呼ばれていた村山槐多(享年22)を筆頭に、
明治から昭和前半にかけて活躍した、
夭折の画家を代表する(?)画家たちが勢ぞろいしています。
他にも、荻原碌山(享年30)ら、
中村屋サロンに関わり深い作家たちや、
松本竣介(享年36)ら池袋モンパルナスの画家たちも紹介されていました。
開館50周年を記念するに相応しく、
明治から昭和にかけての近代洋画史の良いとこどり、
ギュッと凝縮したディレクターズカット版のような展覧会でした。
改めて、開館50周年おめでとうございます。
笠間日動美術館は、夭折することなく、
100年、200年と長生き(?)してくださいませ。
ちなみに。
今回紹介されている中で、
もっとも若くして亡くなっているのが、関根正二です。
享年20歳。
本展には出展されていませんが、
彼が19歳の時に描いた《信仰の悲しみ》(大原美術館蔵)という作品は、
日本近代洋画史を代表する傑作の一つと評され、重要文化財に指定されてます。
作者が20歳以下の重文なんて、
おそらく、この作品くらいなものでしょう。
いかに関根正二が早熟の天才であったのか。
関根正二に限らず、どの夭折の画家も、
まるで自分の死期を悟っていたかのように、
美術史に残る名作を命が尽きる前に生み出しています。
彼らの作品を目にすると、どこか胸がザワつくのは、
気迫や祈りのようなものが感じられるからなのかもしれません。
さらに、彼ら夭折の画家と比べ、
自分はこの歳でまだ何も生み出せていない、
そんな焦燥感のようなものを覚えるからなのかもしれません。
観ると、少しだけおセンチな気持ちになる展覧会。
そういう意味では、秋にピッタリの展覧会でした。
最後に、特に印象に残った作品をいくつかご紹介。
まずは、中村屋サロンと関わりの深い中村彝(享年37)の作品から。
タイトルは、《少年像》とのこと。
目がクリクリしていて、一瞬、女性かと思いました。
さらに、ほんの一瞬、やらかした後の峯岸みなみにも見えました。
続いては、萬鉄五郎(享年41)による《赤マントの自画像》。
この絵を描いた頃の萬は、
まだ発病しておらず、元気だったはず。
なのに、表情が完全に死んでいます。
散髪中に、ウトウトしていて、
気づいたら、前髪を刈られすぎていた。
そんな一場面なのかもしれません。
日本を代表する夭折の画家といったら、この人も。
村上ショージさんにちょっと似ていますが。
そうではなく、岸田劉生(享年38)です。
劉生といえば、愛娘を描いた麗子像。
本展にも、麗子をモチーフに描いた作品が出展されていました。
それが、こちらの《寒山風麗子像》。
この絵の麗子と比べれば、
あの一番有名な麗子像の麗子なんて、
全然可愛い女の子のように感じられます。
それほどまでに強烈な麗子像。
ニタついた表情も気味が悪いですが、
首が落ちるマジックをしてる途中みたいな感じも、気味が悪いです。