今年2022年は、平塚市市制90周年の節目の年。
それを記念して、現在、平塚市美術館では、
“わたしたちの絵 時代の自画像”という展覧会が開催されています。
「鎌倉殿の13人」ならぬ「平塚殿の13人」。
31歳という若さでこの世を去った画家で、
平塚市美術館とは深い関りのある石田徹也を筆頭に、
現代社会に向き合って制作する全13人のアーティストを紹介する展覧会です。
石田徹也以外は、現存の作家。
それも若手、中堅の作家でメンバーが構成されています。
その中には、今注目の若手作家の一人で、
どこか不安な雰囲気を漂わせる大画面の版画が特徴的な村上早(さき)さんや、
キャンバスではなく、ベルベットを支持体に、
白昼夢のような(?)世界を描く2016年VOCA奨励賞作家・谷原菜摘子さん、
古今の美術作品をオマージュしつつ、
現代の世相を風刺した作品で人気の日本画家・田中武さんも。
オリジナリティと実力を兼ね備えた、
ネクストブレイクアーティストばかりです。
無理矢理、お笑い界に例えるならば、
マジカルラブリーやランジャタイ、真空ジェシカといった、
今テレビを席巻中の地下芸人たちといったところでしょうか。
森美術館や東京都現代美術館で開催されるような、
王道中の王道の現代アート展とは、少々毛色が違いますが。
いい意味で、何が出てくるかわからない。
このごちゃまぜ感、この粗削りな感じが、
『あらびき団』のようで個人的にはツボでした。
やっぱり現代アートは予定調和ではない方が面白いですね!
丸い泡を彷彿とさせるステンレスの輪っかと、
赤いスポンジを組み合わせて人体を作る彫刻家・佐藤忠さんや、
ホイップクリームを絞り出すような要領で、
繊細な色の線を無数に生み出す石川美奈子さんなど、
どのアーティストの作品も印象深かったですが。
とりわけ印象に残っているのが、松本亮平さんの作品の数々です。
絵は口ほどに物を言う。
特に説明せずとも、言わんとすることがバシッと、
しかも、ユーモアを感じさせながら、伝わってきます。
中でも一番のお気に入りが、こちら↓
タイトルは、《鶴の行列》。
尾形光琳の《群鶴図屏風》をモチーフにした作品です。
マスクを買うために行列が発生。
そのせいで、密が出来てるじゃん!
そんな風刺が込められているようです。
ちなみに、おそらくでしょうが、
このドラッグストアは、ツルハドラッグをイメージしているのでしょう。
同じく印象に残っているのが、養田純奈(ようだあやな)さん。
彼女の作品は一見すると、
水彩で描いたイラストのように思えますが。
実は、これらは写真。
それも、日本で初めてごみゼロ宣言をした、
徳島県にある上勝町で撮影された写真です。
牛乳パックを漉いて制作した再生紙に、
その写真イメージをプリントしているのだそう。
それによって、この独特の風合いの作品が生まれているのです。
環境問題をテーマにした作家さんは、他にも。
藤沢市生まれの米山幸助さんです。
パッと見は、カラフルで美しい作品ですが、
実はこれらは湘南の海岸に漂着した海洋廃棄物、
いわゆるプラスチックゴミをコラージュした作品です。
しかも、1枚のカンバスに使われているのは、
わずか1時間で集めたプラスチックゴミなのだとか。
プラゴミがこんなにも多いとは・・・。
小泉進次郎さんは、これを何とかしようとしていたのですね。
ただ、海にゴミを捨てるなんて、もちろん言語道断ですが。
もし、プラゴミが完全に無くなってしまったら、
米山さんのこの純粋に美しい作品はもう生まれないわけで。
これからも作って欲しいような。でも、ゴミは捨てないで欲しいような。
非常にもどかしい気持ちになりました。
あと、誰ですか?41番の番号札を捨てた人間は?!
最後に紹介したいのは、
今最も注目を集めている若手美術作家の一人、山本雄教さんです。
さまざまなシリーズを展開している山本さんですが、
特に代名詞ともいえるのが、〈One coin〉シリーズ。
離れて観ると、ドット絵のように感じられますが。
実はこれらは・・・・・
それを表面から鉛筆でフロッタージュ、