今年2022年、トーハクこと、
東京国立博物館は、めでたく開館150年を迎えました。
それを記念して現在開催されているのが、
特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」キービジュアル
トーハクが所蔵する国宝89件を、
会期中に展示替えをしつつ、すべて公開するという、
トーハクの150年という長い歴史の中で初の試みとなる展覧会です!
展覧会は2部構成。
まず第1部の「東京国立博物館の国宝」では、
前述した通り89件の国宝すべてが公開されています。
それらの中には、若き日の伝説の美術コレクター原三溪が、
政界の大物・井上馨から購入し話題となった平安仏画の名品《孔雀明王像》や、
国宝《孔雀明王像》 平安時代・12世紀、東京国立博物館蔵
(展示期間:10月18日~11月13日)
雪舟の最高傑作で、切手にも採用されたことでお馴染みの《秋冬山水図》、
国宝 雪舟等楊《秋冬山水図》 室町時代・15~16世紀、東京国立博物館蔵
(展示期間:10月18日~11月13日)
2016年に国宝に指定されたばかりの岩佐又兵衛《洛中洛外図屏風(舟木本)》も。
国宝 岩佐又兵衛《洛中洛外図屛風(舟木本)》 江戸時代・17世紀、東京国立博物館蔵
(展示期間:11月15日~12月11日)
他にも、渡辺崋山の《鷹見泉石像》や久隅守景の《納涼図屛風》、
長谷川等伯の《松林図屏風》、本阿弥光悦の《舟橋蒔絵硯箱》、『古今和歌集(元永本)』などなど。
会場の端から、国宝、国宝、国宝、一つ飛ば・・・さないで、国宝と、
日本美術界のレジェンドだけで構成された超豪華な展示空間となっています。
どの国宝ももちろん素晴らしいのですが、
今回改めて鑑賞して、特に印象に残ったのは、
近年修復されたばかりの《埴輪 挂甲の武人》でしょうか。
国宝《埴輪 挂甲の武人》 群馬県太田市飯塚町出土、古墳時代・6世紀、東京国立博物館蔵
現時点では、土偶の国宝は全部で5件ありますが、
単体で国宝に指定されている埴輪は、トーハク所蔵のこの埴輪ただ一つだけ。
埴輪界(?)の頂点に君臨するキング・オブ・埴輪です。
顔立ちこそ素朴ですが、装備はわりと重装備。
高さも約130㎝あり、実物を目の当たりにすると、意外と迫力を感じます。
それと、もう一つ印象に残ったるのが、
南宋の画家・李迪による《紅白芙蓉図》です。
国宝 李迪《紅白芙蓉図》 中国 南宋時代・慶元3年(1197)、東京国立博物館蔵
(展示期間:10月18日~11月13日)
これまで、てっきりこの2枚の絵は、
尾形光琳の《紅白梅図屏風》のように、
赤と白の2種類の花を描いた作品だと思っていたのですが。
描かれている「酔芙蓉」という花は、
1日の間で花びらの色を変える種なのだそうで。
右の白い花びらから、左の紅色の花びらへ。
つまり、朝から昼への時間の経過が表現されているのだとか。
のちの印象派の画家が目指していたようなことを、
まさかこんな古い時代に表現していた画家がいたなんて。
ちなみに。
第1部のラストを飾るのは、「刀剣」コーナーです。
刀剣女子に特に人気の高い「三日月宗近」を筆頭に、
国宝《太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)》 平安時代・10~12世紀、東京国立博物館蔵 渡邊誠一郎氏寄贈
トーハクが所蔵する国宝刀剣19件が一挙展示されています。
今展のために特注された展示ケースの中で、
どの刀剣もまるで宝石のように、キラキラと輝いていました。
刀剣に興味がない方でも思わず目を惹きつけられるであろう圧巻の展示です。
さて、続く第2部では、「東京国立博物館の150年」と題し、
トーハクの長い歴史の中で収蔵された国宝以外の貴重な収蔵品を紹介。
実業家の松方幸次郎が蒐集していた浮世絵コレクションや、
重要文化財 東洲斎写楽《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》 江戸時代・寛政6年(1794)、東京国立博物館蔵
(展示期間:10月18日~11月13日)
約12万点所蔵するトーハクのコレクションの中でも、
特に人気の高い菱川師宣の《見返り美人図》(重要文化財)、
《遮光器土偶》、尾形光琳の《風神雷神図屛風》、
岸田劉生による《麗子微笑》などが惜しげもなく展示されていました。
どれもこれもスター級の名品ゆえ、
通常時に目にしたら、テンションがあがるのですが。
なにぶん、展覧会の前半で国宝ばかりを観て、
お腹いっぱい、胸いっぱいになってしまったため、
第2部はサラサラ~っと流し見してしまいました。
ブログを書いている今は、
“もっとしっかり観ておけばよかった!”と、
モーレツに後悔していますが。
展覧会を実際に観ていた時は、
第2部もじっくり楽しめるような余力は残っていませんでした。
ちなみに。
第2部に出展されていた数多くの作品の中で、
ほとんど唯一といっていいほど印象に残っているのが、こちら↓
キリン剝製標本展示の様子
キリンです。
正確には、キリンの剝製です。
剝製となっているのは、1907年に初めて、
日本にやってきたキリンで、上野動物園で人気を集めていたのだそう。
その後、剝製となり、トーハクの前身となる帝室博物館時代に資料展示されていたそうです。
そして、現在は国立科学博物館が所蔵しているとのこと。
この展覧会のために、約100年ぶりに里帰りしたそうです。
トーハクでキリンの剥製が展示される。
こんな機会は、おそらくもう二度とないはずです。
なお、展覧会のラストで紹介されていたのは、平安時代の《金剛力士立像》。
実はこちらの《金剛力士立像》は今年2月に新収蔵されたばかり。
もっとも新しいトーハクのコレクション作品です。
一般公開されるのは、今展が初めて。
それゆえでしょうか。
心なしか、全身に力が入っているような気がしました。
少し身体が固くなっているような。
早くトーハクの環境に慣れて、
もうちょっとリラックスできますように。