宮城県美術館に行ってきました。
お目当ては、現在開催中の展覧会、
“フェルメールと17世紀オランダ絵画展”だったのですが、
同時期に開催中の“令和4年度第3期コレクション展示”も面白かったので、
本日は急遽、こちらのコレクション展についてご紹介したいと思います。
たかが一地方都市の美術館。
それゆえ、コレクションも大したことがない・・・。
そう思っている方もいらっしゃるかもしれませんが。
むしろ、その逆。
さすがは「東北の雄」宮城県、
そのコレクションは非常に充実していました。
まず充実していたのが、日本の近現代絵画コレクション。
その中には、髙橋由一が松島を描いた絵画や、
キュビスムの影響を受けていた頃の東郷青児の初期作品、
近年世界的に注目されている『GUTAI』こと具体美術協会の作家の作品もありました。
宮城県の隣県ということもあるのでしょう。
少年時代を岩手県盛岡で育った松本竣介の作品も展示されていました。
そのうちの1点が、こちらの《郊外》という作品。
よく観ると、街並みの中に、
ファミチキの袋みたいなお店がありました。
数ある近現代絵画コレクションの中で、
個人的に印象に残っているのは、桂ユキの《人が多すぎる》。
1954年に発表された作品ですが、
昭和を感じさせないポップさがあります。
スーファミのパズルゲームのパッケージとかにありそう。
また、宮城県美術館には、
『気まぐれ美術館』の作者として知られる、
美術評論家で画廊オーナーの洲之内徹さんのコレクション。
通称、「洲之内コレクション」が一括収蔵されています。
その中でも特に人気が高いのが、
“幻の画家”とも称される長谷川潾二郎の《猫》です。
描かれているのは、長谷川の愛猫タロー君。
よく観ると、片方にしかヒゲがありません。
なぜでしょうか??
それには、こんな理由がありました。
納得いくまで観察しないと、
描こうとしなったという長谷川潾二郎。
この絵を描き上げるために、
タローがこのポーズをしてくれるのを、ひたすら待ち続けました。
なお、タローがこのポーズを取るのは、気候がよくなる毎年9月頃。
つまり、1年のうち9月頃しかこの作品を描くことは出来ないのです。
気付けば、描き始めてから6年の月日が流れていたのだとか。
そして、あとはヒゲを描けば完成!
というその目前で、残念ながら、
タローはこの世を去ってしまったのだそうです。
それゆえ、ついにヒゲは描かれることはありませんでした。
しかし、この絵をどうしても譲り受けたかった画商が、
長谷川に「どうにかヒゲを描いて下さい!」 と懇願したことで、
かつてのスケッチを頼りに、片方だけは描いてくれたのだそうです。
この長谷川潾二郎の《猫》が、
久しぶりに観られただけても十分猫欲が満たされましたが。
洲之内コレクションには、もう1匹猫がいました。
それがこちらの小泉清のよる《猫》。
カラフルにもほどがある猫です。
三毛猫ではなく、十毛猫とでもいったところでしょうか。
荒々しいタッチで描かれており、
まさに、ワイルドキャットといった感じでした。
さてさて、宮城県美術館のコレクションで、
充実しているのは、近現代日本の絵画だけではありません。
カンディンスキーやパウル・クレーのコレクションも充実しています。
特にカンディンスキーにいたっては、
抽象画に目覚める前の初期の作品や、
抽象画に移行したばかりの作品も取り揃えていました。
日本にこんな充実したカンディンスキーコレクションがあったとは!
そのことを知れただけでも、宮城県美術館を訪れた甲斐がありました。
なお、現在のコレクション展では、
フェルメールの作品がドレスデン国立古典絵画館から来日していることにちなんで、
ドレスデン発の20世紀初頭の前衛美術グループ「ブリュッケ」の画家たちの作品を展示中。
その中にはブリュッケの初期メンバー、
ヘルマン・マックス・ペヒシュタインの貴重な油彩画もあります。
ゴッホにも大きな影響を受けたというブリュッケ。
この油彩画はおそらく、いや、多分間違いなく、
ゴッホの《タンギー爺さんの肖像》の影響を受けていると思われます。
ちなみに。
出展されていたブリュッケの画家の作品の中で、
個人的に一番印象に残っているのが、エーリッヒ・ヘッケルの版画作品。
そのタイトルを思わず二度見してしまいました。
いやいや、もう少し言い方ってものが、、、(笑)
そうそう、タイトルといえば、宮城県美術館には別館として、
宮城県生まれの彫刻家・佐藤忠良を記念した佐藤忠良記念館があるのですが。
そちらで展示されていたこの彫刻作品のタイトルが妙に印象に残りました。
七曲署のネーミングセンス!