現在、水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、
“中﨑透 フィクション・トラベラー”が開催されています。
入り口脇では、アイアンマンみたいなのがお出迎え。
さてさて、一体どんな展覧会なのでしょう。
さて、こちらは、水戸生まれ水戸育ち、水戸芸術館で美術と出逢い、
今も水戸を拠点に活動する美術家・中﨑透さんによる美術館初の大規模個展です。
会場には、代表作を含む旧作や、
カラーアクリルと蛍光灯を用いた近年の立体作品など、
中﨑さんの初期作から最新作まで、約50点が所狭しと並べられています。
そして、会場のいたるところに、
以下のようなテキストが散りばめられています。
これらは、水戸芸術館の職員や中崎さんの実の親など、
水戸芸術館や水戸に縁のある男女5人に行ったインタビューで引き出された言葉。
その言葉と中崎さんの作品を結びつけ、
展覧会を通して、一つの物語が展開されています。
中﨑さんといえば、看板。
看板と言えば、中﨑さん。
今展でももちろん、
看板をモチーフにした作品が多数展示されています。
その中でも特に代表作ともいえるのが、《看板屋なかざき》シリーズ。
たくさんの看板、しかも、場末のスナックっぽい看板がズラリと並んでいます。
それらを一つ一つ観てみると、へんてこな看板ばかりです。
実はこれらは、中﨑さんが自発的に作ったものではなく。
ちゃんとクライアントから注文を受けて制作したもの。
その証拠(?)に、契約書もこのように併せて展示されています。
ただし、それだけでは、ただの普通の看板屋さん。
中﨑さんは、クライアントとはあくまで対等な関係で契約を結びます。
ある程度、クライアントの注文は聞くものの、
作品としてアレンジし、曰く、ちょっとねじれた看板に仕上げるとのこと。
その出来上がりに関しては、一切クライアントからの異論は認めないそうです(笑)
なお、展示室内のトイレの看板も、
《看板屋なかざき》仕様となっていました。
W.C=ワールドカップ??
ちなみに。
会場の一角にあったこちらの謎の木枠は、
今まさに、この展覧会期間中に受注制作中の看板を設置するためのもの。
どんな最新看板が出来あがるのか気になる方は、
会期の前半よりも、後半に行ったほうが良さそうです。
そうそう。看板といえば、こんな作品も。
誰に頼まれたわけでもなく、
世界各地の地名を、架空の看板に仕立てたものです。
冷静に考えたら、「んなわけあるかw」なビジュアルばかりなのですが。
どれもこれも、妙なしっくり感がありました。
特にお気に入りは、スリジャヤワルダナプラコッテ。
なんか、そういうトリオに見えてきました(笑)
さてさて、展覧会では他にも、
さまざまなタイプの作品が展開されています。
そのスタイルこそバラバラなのですが、
中﨑さんの作品の多くに通底していたのは、
コミュニケーションを大事にしているということ。
決して、独りよがりで制作しているのではなく、
人とのコミュニケーション、対話を通じて作品が生み出されていました。
そんな中﨑さんの展覧会だからこそでしょう。
展覧会のラストには、こんなプレイスポットも。
こちらは、トランプゲームの大貧民をして遊ぶためのプレイスポット。
地方ルールが多数存在する大貧民。
それゆえ、参加する人たち同士で、
ルールを調整して、遊んでもらおうというものだそうです。
また、そのすぐ近くには、こんな作品も。
タイトルは、《ドクターストップ2022》。
なんでも中﨑さんはある時から、
『ドクターマリオ』を集中してやるようになり、
今もなお、『ドクターマリオ』をやり続けているそうです。
ある意味、薬漬けの生活ですね・・・。
マルセル・デュシャンがチェスをひたすらやり続けたように、
中﨑さんはこれからも、『ドクターマリオ』をやり続けるとのこと。
会期中、ここで『ドクターマリオ』をプレイする可能性もあるそうです。
運が良ければ、その姿を目にすることができます。
・・・・・いや、その姿を観たとて!