日本人はミニチュアが好き。
それも、だいぶ昔から。
そんなことを強く実感できる企画展が、
現在、南青山の紅ミュージアムで開催されています。
その名も、“ちぃさい、ちっこい、ちっちゃ!”。
大事なことなので2回・・・どころか、3回言っています。
会場でまず紹介されていたのは、
江戸時代後期から明治時代初頭に作られたままごと道具の数々。
江戸時代、女子教育のほとんどは家庭で行われていました。
それゆえ、ままごとと言っても、
現在のように、ただの遊びではなく、
家事や礼儀作法を学ぶ女子教育の一つでもあったそう。
つまり、これらは知育玩具としての要素が強いわけですね。
今でいう、ままごとトントンセットみたいな感じでしょうか。
続いて紹介されていたのは、
雛飾りの一種である勝手道具一式。
江戸時代の終わり頃から、京阪地方では、
庶民的な暮らしの道具を小さくしたものが飾られていたそうです。
展示されていた道具たちをよくよく観てみると・・・・・
実際に使ったであろう痕跡が残っていました。
おそらくこれらの雛道具を使って、
子どもたちが料理の真似事をしていたのかもしれませんね。
さて、ここまで紹介してきたままごと道具や雛道具でも、
十分に“ちぃさい、ちっこい、ちっちゃ!”と驚かされましたが。
第2章で展示されていた台所道具は、その比ではありませんでした。
「ちっちゃ!」という心の声が思わずダダ洩れしてしまったほど。
写真で観る分には、先ほどのものと、
同じような大きさにしか感じられないでしょうが。
一回り、いや、二回りくらい小さいです。
こちらは、江戸時代後期、上野の池之端にあったという、
伝説のミニチュア玩具屋、七澤屋が制作した台所道具の数々。
子ども向けに作られたものではなく、
ミニチュア好きの大人たちに向けて制作されたものだそうです。
七澤屋のミニチュアは、好事家や趣味人にとって憧れの的。
それゆえ、当時から、お値段もそれなりのものだったそう。
金額は決して小さくなかったようです。
そんな七澤屋が作ると、磁器やガラス器もご覧の通り。
注ぎ口とか、切子細工とか、
どうやったらこのサイズで再現できるのか、
考えれば考えるほど、頭に?マークが浮かんできました。
とりわけ驚異的だったのが、こちらのミニチュア陶器の数々。
さりげなく、お皿がスタックされていますが、
これはそのように重ねられた状態で作られたものではなく、
展示の際に、実際に1枚1枚、手作業で重ねられたそうです。
どれくらい実物が小さいか、参考になるかわかりませんが、
一応、比較のために、自分の指と比べた写真を撮ってもらいました。
合成写真ではありません。
本当に、実物はこんなに小さいのです。
また、展覧会では、七澤屋と並び称されたという、
浅草の高級玩具店、武蔵屋のミニチュアも展示されています。
その再現度の高さは、七澤屋と比べても遜色在りませんでした。
なお、壁面に飾られていたハサミは、ちゃんと動かすことができるそうです。
ちなみに。
展覧会では他にも、昭和のままごと道具セットや、
紅ミュージアムでの企画展らしく、
ミニチュアの鏡台や化粧道具も紹介されていました。
展示室自体は、そんなに広くないはずのですが、
展示品が小さいため、相対的に広々と感じられました。
トーハクの企画展を1本観たくらいの充実感。
ありそうでなかった面白い展覧会でした。
大きな拍手