現在、東京オペラシティアートギャラリーでは、
“川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり”が開催されています。
日常の何気ない場面を柔らかなトーンで捉え、
その本質を映し出す写真家・川内倫子さん(1972~)。
国内では約6年ぶりとなる大規模展覧会です。
展覧会タイトルの“M/E”とは、
「母(Mother)」と「地球(Earth)」の頭文字で、
2019年より川内さんが取り組んでいる新作シリーズ名です。
今展では、〈M/E〉シリーズを中心に、
未発表作品や過去に発表したシリーズも出展されています。
また、写真作品だけでなく、映像作品も出展されています。
大型スクリーンで楽しめる作品や、
床面にプロジェクションされている作品も。
会場は基本的に写真撮影可能なので、
これらの場所で記念撮影をするのもいいかもしれませんね。
さて、川内さんの写真の特徴は何といっても、その柔らかな光。
決して、特別な光景ではないのに、
川内さんの目とカメラを通すと、かけがえのない世界に。
普段、何気なく過ごしている日常には、
実は、ステキな瞬間や光景がたくさん存在している。
川内さの写真を観ていると、そんなことに気づかせてもらえます。
音楽で言えば、『What a Wonderful World』や、
竹内まりやさんの『毎日がスペシャル』みたいな感じでしょうか。
川内さんの写真はどれも、眺めているだけで、
心がほどけていくような、柔らかい気持ちになれます。
普通の人が撮ったら、決してそうはならないであろう被写体も、
川内さんの手にかかれば、不思議とネガティブな感情が湧いてきません。
例えば、こちらの写真作品。
左の写真に映っているのは、おそらく鳥の死骸でしょう。
しかし、不思議と、死んでいる感じはせず、
雪の絨毯の上に寝そべって、ひなたぼっこをしているような、
なんとも微笑ましい光景に思えます(←そう感じるのは僕だけでしょうか?)。
また、少女の後姿を接写するとなると、
撮影者によっては、フェティシズムのようなものが感じられるのでしょうが。
川内さんの写真からは、そういったものは一切感じられません。
それはきっと、優しくそっと見守る視線で撮影されているからなのでしょう。
ちなみに。
川内さんの写真作品が展覧会の主役であることはもちろんですが、
建築家の中山英之さんが手掛けた会場デザインも展覧会の見どころの一つです。
特に印象的だったのが、こちらの展示空間。
川内さんの写真作品のイメージを、
まさにビジュアル化したかのような。
ふわっと、ほわっとした展示空間でした(←語彙力!)。
また、通常の展覧会では閉め切られている天窓も、今展では解放されています。
柔らかな光に包まれた川内さんの作品を、
天井から降り注ぐ自然光の中で味わうことができました。
川内さんの写真は、写真集でいつでも楽しめますが、
展覧会として体験型で楽しめるのは、この貴重な機会だけ。
M(めっちゃ)E(えぇ)写真展です。
余談ですが。
展覧会を観終え会場を出ると、ちょうど、
川内さんの作品みたいな光景に出逢えました。