現在、新宿のSOMPO美術館では、
ロンドンにあるキュー王立植物園の全面協力のもと、
ボタニカル・アート(植物画)を主題にした展覧会が開催されています。
そう聞いて、“あれ?キュー王立植物園協力の、
ボタニカル・アート展って、この前もやってなかったっけ??”と、
思われたアートファンも、少なからずいらっしゃるはず。
実は、2021年に東京都庭園美術館で、
2016年にはパナソニック汐留美術館でそれぞれ、
キュー王立植物園のボタニカル・アートを紹介する展覧会が開催されました。
しかし、今回の展覧会“おいしいボタニカル・アート”では、
ボタニカル・アートはボタニカル・アートでも、おいしいボタニカル・アート、
つまり、食べられる植物を描いた作品に特化した展覧会です。
食べられる植物ということで、
俳優の岡本信人さんが食べるような、
もしくは、埼玉県民が食べさせられるような、
その辺の道に生えている野草の絵の数々を想像していましたが。
実際に展覧会で紹介されていたのは、野菜を描いたボタニカル・アートや、
フレデリック・ポリドール・ノッダー《ジャガイモ》 1794年 エングレーヴィング、手彩色/紙
18.8×11.0cm Photo Brain Trust Inc.
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
果物を描いたボタニカル・アートなど、
ウィリアム・フッカー《ブドウ「レザン・ド・カルム」》 1818年 スティップル・エングレーヴィング、アクアティント、手彩色/紙
34.5×26.0cm Photo Michael Whiteway
目で観ても美味しそうなボタニカル・アートが多くを占めていました。
芸術の秋と食欲の秋。
その両方を合わせて楽しめる贅沢な展覧会です。
また、食べられる植物だけでなく、チャの木をはじめ・・・・・
コーヒーの木やカカオなど、
飲み物のもととなる植物のボタニカル・アートも紹介。
さらに、関連してティー・セットやコーヒーカップなども展示されていました。
それらの食器類は、すべて個人蔵とのこと。
テーブルウェアが好きな人にも、オススメの展覧会ですよ。
知ってるようで意外と知らないイギリスの食事情。
個人的にはボタニカル・アートそのもの以上に、
展覧会を通じて、イギリスの食事情を学べたのが、一番の収穫でした。
いろいろ勉強になりましたが、特に印象に残っているのは、ディナーに関して。
ディナーといえば、夕食を思い浮かべますが、
もともとディナーは時間に関係なく、「一日の最も重要な食事」を指していたそうで、
中流階級は、昼にディナーを取っていたのだとか。
ディナーが遅ければ遅いほど、上流階級の証とみなされたそうです。
しかし、当然ですが、昼食後、
夕食が遅くなれば遅くなるほど、空腹の時間が長くなります。
その空腹を紛らわすために、ベッドフォード公爵夫人が、
1840年頃に、始めたと伝えられる習慣が、アフタヌーン・ティーです。
ちなみに、ベッドフォード公爵夫人は、
『午後の紅茶』のパッケージに描かれている女性。
なるほど。だから、午前でも夜でもなく、午後の紅茶だったのですね。
それと、もう一つ勉強になったのが、
かつてイギリスでは柑橘類が、特に珍重された果物であったということ。
気候の関係で栽培が難しく、貴重で高価な食材だったそうです。
ピエール・アントワーヌ・ポワトー《ビター・オレンジ》 1807-1835年 スティップル・エングレーヴィング、手彩色/紙
32.0×24.0cm Photo Michael Whiteway
もちろん、紅茶につきもののレモンも高価だったそう。
レモンティーは、憧れの飲み物だったのですね。
展覧会では、レモンを描いたボタニカル・アートも紹介されていました。
左上のものは、オーソドックスな形をしていましたが。
あとは、怪物のようなレモンばかりでした。
とても高級なフルーツとは思えないフォルムをしています。
まるで寄生獣のよう。
特に左下のヤツ!
『ザ・テレビジョン』の表紙で、
スターがこんなのを手にしていたら、ドン引きです。
寄生獣のよう、といえば、
西洋カリンの一種「ネフル・ド・コレア」も。
フルーツ感は一切なし!
核の影響で突然変異したクリーチャーのようでした。
ちなみに。
展覧会では、こんなものも紹介されていました。
1861年に刊行された『ビートン夫人の家政読本』です。
レシピや食材の保存方法、
テーブルウェアのセッティングなど、
主婦の知りたいあれこれが記載されています。
何度も重版された大々的ベストセラーで、
半世紀以上にわたって、多くの家庭に重宝されたそうです。
また、こちらはブレジア=クレイ家のレシピ帖。
元祖・栗原はるみ(?)、
元祖・クックパッド(??)です。
古今東西、こういうものは必要とされていたのですね。
┃会期:2022年11月5日(土)~2023年1月15日(日)
┃会場:SOMPO美術館
┃https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/221029/.html
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なお、〆切は、11月23日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。