Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

小茂田青樹展

$
0
0

川越市市制施行100周年&開館20周年。

そんなダブルのメモリアルイヤーを記念して、

現在、川越市立美術館では“小茂田青樹展”が開催されています。



 

大正から昭和初期にかけて活躍した、

川越生まれの日本画家・小茂田青樹の19年ぶりとなる大回顧展です。

 

実は何を隠そう、僕は小茂田青樹の大ファン。

10年近く前に、埼玉県立近代美術館で、

晩年の傑作《春の夜》を観て以来、ひそかにずっと推していました。

 

 

 

他の日本画家とは違う、独自の世界観を確立しているのに。

今ひとつ、知名度がパッとしないのは、

まず間違いなく、速水御舟のせいでしょう。

青樹が松本楓湖に入門したその数時間後に、

同じく松本楓湖のもとに入門したのが速水御舟。

以来、終生のライバルとして切磋琢磨し合う関係となりました。

御舟の展覧会は定期的に開催されていますが、

そのたびに、青樹は御舟のライバルという形で、

いうなれば、バーターのような形で紹介されています。

御舟の“じゃない方”。

それが小茂田青樹なのです。

また、青樹は41歳という若さでこの世を去っています。

もし、青樹が長生きしていたら、もっと名前が残っていたかもしれませんね。

 

 

さてさて、今展には新発見の作品や、

《春の夜》を含め、全部で65点近くの作品が出展されています。

メインビジュアルに採用されている《村道》や、

 

 

 

どことなく、ミレーの作品を彷彿とさせる《麦踏》も良かったですが。

 

 

 

個人的にイチオシしたいのは、

晩年に描かれたという《晩秋》です。

 

 

 

こちらに気づいた様子のイタチの可愛さに、心を撃ち抜かれました。

 

 

 

イタチの姿かたちももちろんカワイイのですが、

絵全体に対して、ちょろっと描かれたそのサイズ感も可愛かったです。

絶妙なミニチュア感。

絶妙なこじんまり感です。

 

絶妙なこじんまり感といえば、こちらの《豊穣》も。

 

 

 

画面右下のかかしの小ささたるや!

絶妙にもほどがあります。

と、可愛さばかりに目がいってしまいますが、

ただ可愛いだけじゃないのが、青樹の一番の魅力。

例えば、《豊穣》もよく目を凝らしてみると・・・・・

 

 

 

稲穂を1本1本。

さらに、籾も1粒1粒、丁寧に描かれています。

いや、丁寧を通り越して、執拗さや執念に近いものがあるような。

絵によっては、ちょっとした狂気すら感じられるものもありました。

例えば、こちらの《緑雨》という作品。

 

 

 

雨を受けてたわむ大きな芭蕉。

その下には、一匹のカエルがいます。

一部、花のピンク色や木の幹の茶色はありますが、

全体がこれでもかというくらいに、緑で統一されています。

さらに特徴的なのが、雨の描写。

 

 

 

ぽつぽつ、でも、しとしと、でもなく。

びろ~ん。

雨なのに、鼻水くらいの粘度があります。

どういう発想をしたら、こんな絵が生まれるのか。

青樹の独創性に脱帽です、

 

なお、全体的にカラフルな作品が多いですが、

展覧会では、青樹としては異色の墨画も出展されていました。

それが、こちらの《秋意》という作品です。

 

 

 

葡萄の描写が、実に見事!

思わず一粒摘まんで食べてみたくなる衝動に駆られました。

それくらいにリアルに感じられます。

また、墨を塗っていない、

つまり、ただの地の紙の色なのに、

月がまぶしく感じられました。

モノクロながら、多彩な魅力が詰まった1枚です。

 

最後に、もう一つ推し作品をご紹介。

《甘夏厨房》と題された1枚です。

 

 

 

鮎の顔のとぼけた表情が、個人的にツボ。

植田まさしの漫画の登場人物のようです。

 

 

この展覧会をきっかけに、

青樹がもっとブレイクしますように!

いずれ東京でも大規模な回顧展が開催されますように!

星星

 

 

 

 

1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles