今年2022年に、90歳の誕生日を迎えた、
ドイツ・ドレスデン出身の現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒター。
その日本では16年ぶりとなる大規模展覧会が、
先日10月2日まで、東京国立近代美術館で開催されていました。
そして、10月15日には巡回先である、
豊田市美術館で“ゲルハルト・リヒター展”が開幕。
東京展も観ていますが、思い切って豊田会場にも足を運んできました。
当たり前ですが、巡回展ゆえ、
東京展と内容はほぼほぼ変わりません。
リヒター自身が手元に置いてきた初期作から、
紙にグラファイトで描いた最新のドローイングの作品まで、
ゲルハルト・リヒター財団の所蔵作品を中心に構成されています。
東京でゲルハルト・リヒター展を観たなら、
それも2度も観たなら、わざわざ豊田市まで足を伸ばさなくても・・・。
そう思われた方も少なくないかもしれません。
しかし、結論から言えば・・・・・
豊田市美を訪れて大正解でした!
東京展も良かったですが、
豊田展は、その数倍素晴らしかったです!!
まず何といっても、豊田市美術館は、東京会場よりも広く、
それにくわえて、天井高もあるので、解放感が段違いでした。
今回のリヒター展は、とりわけ大型作品が多いのですが、
東近美の展示室はそこまで天井が高くないため、ご覧のように・・・・・
ちょっとキツキツな印象がありました。
対して、豊田市美術館は、ご覧の通り。
作品自身も解放的になったのでしょうか、
東京会場で観るよりも、発色がよくなっていたような気がします。
特に印象的だったのが、こちらの吹き抜け空間での展示です。
空間内を柔らかな外光が包み、
解放感もたっぷりだったこともあるのでしょう。
まるで、印象派の絵画のような、
まばゆい光を画面全体から感じました。
リヒターの作品が、こんなに美しいものだったなんて!
東京会場で観た時は、リヒター作品に、
やや地味で暗い印象を抱いていましたが。
豊田市美で観るリヒターの印象は、真逆も真逆。
地味なキャラと思っていた女の子が、
眼鏡を外したら、実は超絶美少女だった!
それくらいの衝撃がありました。
ただ、それだけに、日本初公開となる今展の目玉作品で、
アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所をテーマにした《ビルケナウ》に関しては・・・・・
閉塞感のある東京会場のほうが、
よりグッと胸に迫るものがあったような。
リヒターが意識したわけではないでしょうが、
開放的な豊田市美の空間で観た《ビルケナウ》には、
どこか希望のようなものが感じられてしまいました。
また、ただ単純に会場の雰囲気が違うというだけでなく、
展示の仕方も、東京会場と大きくガラッと変わっています。
なんとなく、色や雰囲気で、
グルーピングされている印象を受けました。
そのため、複雑な構成だった東京会場よりも、
すっきりとまとまっている感じで、見やすかったです。
ちなみに。
豊田会場では、こんな嬉しいサプライズもありました。
こちらは、東京会場では出展されていなかった、
2022年今年に制作された出来立てホヤホヤのリヒター作品。
リヒター先生の新作が観れるのは、豊田市美だけなのです。
キャプションによれば、今年2022年に、
リヒターが手掛けた水彩によるドローイング作品を・・・・・写真に写して並べたもの。
え?は?写真なの??
ドローイングと見せかけて、実は写真。
サプライズです。