現在、ワタリウム美術館では、“加藤泉―寄生するプラモデル”が開催中。
胎児のようであり、虫や精霊のようであり、
はたまた、古代人のようでもあり、未来人や宇宙人のようでもあり。
一度見たなら忘れられない個性的な生命体を作り続け、
国内外で活躍する現代アーティスト加藤泉さんの最新個展です。
今展のキーワードは、『プラモデル』。
新型コロナウイルスの影響で、
展覧会が延期や中止になってしまったため、
久しぶりにプラモデルを作って過ごしていたという加藤さん。
そのプラモデル熱はどんどん高まり、ネットで、
ヴィンテージプラモデルを買い漁るようになったそうです。
しばらく、作っているうちに、「作品に使えるかも?」と思い付き、
自身の木彫作品にプラモデルをくっつけてみたところ、「これはイケる!」と確信。
かくして、最新作のプラモデルシリーズが誕生したそうです。
会場には、そんなプラモデルシリーズが大集合。
こうしてまとまった形でお披露目されるのは初めての機会とのことです。
木彫作品×ヴィンテージプラモデル。
初めてこれらの作品を目にしたはずなのですが、
不思議なほど、お初にお目にかかった気がしませんでした。
もともと、加藤さんの作品はこういうものだったような。
以前から、ヴィンテージプラモデルは取り付けられていたような。
そんな絶妙な既視感がありました。
ちなみに。
組み立てられたヴィンテージプラモデルはすべて、
つなぎ目の部分がわかるように、あえて強調されています。
加藤さん曰く、繋ぎ目こそ美しいとのこと。
残念ながら、自分はその域に達していませんが、
パールが意外なところで分割されているのは、なんか興味深かったです。
さてさて、展覧会のハイライト。
最後の展示室では、出展作品に使われた、
ヴィンテージプラモデルの箱が壁一面に並べられていました。
とりわけ印象に残っているのは、
マルサンというメーカーから発売されていたという、
プラモデル・エデュケーショナル・シリーズのパッケージです。
商品名が、ただの「犬」や「鳩」ではなく、
「忠実なる犬」、「平和を呼ぶ鳩」というところに、軽く狂気を感じました(笑)
「忠実なる犬」や「平和を呼ぶ鳩」を解剖するなよ。
また、こちらの展示室の中央には、
加藤さんのこんな新作も展示されています。
実はこちらは、プラモデルを作るメーカー、
「ゴモラキック」代表の神藤政勝さんとともに、
一から開発したというプラモデルです。
表面に張るデカール(=シールの一種)や、
パッケージのデザインはもちろん加藤さん自身が制作しています。
石で作った作品をプラモデルで再現する。
究極にバカバカしい気がしますが、
この突き抜けたバカバカしさが、実に痛快でした。
たぶん男ウケする展覧会。
反対に女子ウケは今ひとつになりそうな展覧会です(笑)
ちなみに。
展覧会を観終わったと思っても、
ミュージアムショップ、オン・サンデーズもお見逃し無きように。
こちらでは、加藤さんがドラムを担当するアーティストバンド、
「THE TETORAPOTZ」の最新LPやライブ映像が紹介されています。
プラモデルに、バンド活動に。
いい意味で、加藤さんは少年のままなのでしょう。