現在、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで開催されているのは、
“瞳に映るファンファーレ 浜口陽三の銅版画と川瀬巴水をはじめとした新版画”という展覧会。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
カラーメゾチントの創始者として、国際的にも評価の高い浜口陽三と、
その妻である銅版画家・南桂子のコレクションで知られるミュゼ浜口ですが、
実は、数十点ほど新版画のコレクションも所蔵しているそうです。
それら新版画のコレクションに焦点を当てた展覧会は、
同館で過去に何度か開催されたようですが、今回は久しぶりのお披露目。
ここ数年、新版画ブームがきている中での満を持しての開催です。
今展で紹介されている新版画は、30点。
その大半を占めるのが、川瀬巴水。
スティーブ・ジョブズが熱心に作品を蒐集したことでも知られ、
数いる新版画家の中でも、特に人気が高い人物と言えるでしょう。
と、それだけに、巴水の作品を目にする機会は多く、
正直なところ、若干見慣れて、新鮮味が失われてたのですが。
いい意味で期待を裏切られたと言いましょうか。
本展に出展されている作品の中には、
いわゆる、川瀬巴水の代表作は一つもありませんでした。
反対に言えば、珍しいレアな巴水作品ばかり。
巴水ファン、新版画ファンなら、
是非とも抑えておきたい展覧会です。
もちろん!
浜口陽三ファンも必見です。
本展では、川瀬巴水を中心とする新版画と、
陽三のカラーメゾチント作品が併せて展示されています。
こんな組み合わせが楽しめるのは、
まず間違いなく、ミュゼ浜口陽三だけ。
銅版画のメゾチントと木版画の新版画。
制作技法はまるで違うものの・・・・・
(会場ではその違いを実際に体験することができます!)
実は、途方もない労力がかかっているのに、
そんな苦労はおくびにも出さず(?)、静謐な空気を漂わせている両者。
こうして並べて展示されたことで、
両者に通ずる雰囲気に、初めて気づかされました。
ちなみに。
今回出展されていた巴水作品の中で、
個人的にイチオシは、《塩原畑下の雨》です。
歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》を筆頭に、
浮世絵における雨と言えば、黒い細い線で表現されるものですが。
この巴水の作品では、黒い線は用いられず。
グラデーションで雨が表現されています。
版画でこんな繊細な表現ができるなんて。
摺師と彫師の超絶的な職人技に脱帽です。
それと、出展されていた浜口陽三作品で、
特に印象に残ったのが、《女の顔》という初期作。
いくらなんでも、しゃくれすぎのような・・・。
花王のロゴかと思いました。
ところで、ステキではあるものの、詩的(=ポエティック)すぎて、
今ひとつ内容が伝わってこない“瞳に映るファンファーレ”という展覧会のタイトル。
実は、今回の展覧会では、新たな試みとして、
詩の創作や朗読を行う団体「インカレポエトリ」とコラボしているそう。
出展されている版画作品を題材に、
会期中、メンバーが詩を書き、それを披露しています。
来る1月14日は、連詩ナイトという、
閉館後の特別企画も予定されているそうです。
詳細は、こちらに。
最後に。
ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションを訪れたら、
絶対に食べておきたいカフェの人気メニューをご紹介。
ヤマサの黒蜜風醤油をバニラアイスに混ぜ込んだマーブル醤油アイスです。
レシピを作ったのも、こちらの学芸員さん。
毎回手作りしているのも、こちらの学芸員さん。
ここでしか食べることのできない限定メニューです。
冬こそアイスが美味しい季節。
温かい格好に身を包んでお召し上がりくださいませ。