昨年11月、丸紅株式会社の新社屋の3階に新設された丸紅ギャラリー。
その開館記念展第3弾として、
先日12月1日よりスタートしたのが、
“ボッティチェリ特別展 美しきシモネッタ”という展覧会。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
満を持して、丸紅株式会社が所蔵する、
日本で唯一のボッティチェリによる“テンペラ画”、
《美しきシモネッタ》を開館以来初公開するものです。
ちなみに、出展作品はこの1点のみ!
究極の一点豪華主義展覧会です。
とはいえ、何もないスカスカの展示室に、
ポツンと《美しきシモネッタ》が展示されているわけではありません。
《美しきシモネッタ》に関するさまざまな資料や、
作品にまつわるトピックを記したパネルが数多く展示されています。
まず紹介されていたのは、
絵のモデルシモネッタ・ヴェスプッチに関して。
シモネッタ・ヴェスプッチ(1453~1476)は、
フィレンツェ随一と讃えられた美女です。
ジェノヴァの裕福な商家に生まれ、
15歳で裕福な商人マルコ・ヴェスプッチと結婚。
当時フィレンツェを支配していたメディチ家の貴公子、
ロレンツィオとジュリアーノ兄弟も、その美しさにゾッコンだったそうで。
1475年にジュリアーノのために開かれた馬上槍試合では、
「美の女王」に選ばれていたシモネッタが、その美しさで民衆を魅了。
(↑井上尚弥VSノニア・ドネアのボクシング世界戦でブレイクした“美しすぎるラウンドガール”みたいな感じでしょうか?)
絶大な人気を誇るも、肺結核のため、23歳という若さでこの世を去りました。
・・・・・・早逝ということ以外は、
あまりに人生が恵まれすぎていて、
なんか、好きになれない人物でした(※あくまで個人の感想です)。
と、それはさておき。
パネルで紹介されていて印象的だったのが、
アニョロ・フィレンズオラなる人物が著書で記した美人の条件。
以下が、ルネサンス期の美人の条件だそうです。
「髪は褐色に近い淡い金色であること。
肌は明るく輝き、眉は中央でふくらみ、鼻と耳にむかって細くなるのがよい。
眼は大きく、自眼は青味を帯び、まつげは長すぎず、厚すぎず、黒すぎないのがよい。
頬のピンクはカーブに添って描かれること。
鼻はそれとわからない程度に上に向かって細くなること。
口は心持ち小さい方がよく、
唇が半分開いたとき、6つ以上の歯が見えないほうがよい。
唇にはくぼみがあり、薄すぎないほうがよい。
歯茎は赤いビロードを思い起こさせ、暗すぎてはいけない。」
・・・・・それってあなたの感想ですよね?
続いて紹介されていたのは、《美しきシモネッタ》の来歴。
ボッティチェリにより15世紀後半に描かれるも、
その後、長らくどこに所在されていたのか不明だったそうで、
再び歴史の表舞台に登場するのは、19世紀はじめのことでした。
見つけたのは、マリー・アントワネットの肖像で知られる画家、
ヴィジェ・ルブランの元夫である画家兼画商のJ=B=P・ルブランなる人物。
彼の手により、イタリアからフランスに渡り、
19世紀末には、フランスからイギリスへと渡ります。
20世紀初頭には、ドイツ・ベルリンの医師で、
コレクターでもあったマックス・カッペルが購入。
その後、娘であるノア夫人の手に渡るも、
第二次世界大戦中に、あのヒトラーに接収されることに。
戦後、ノア夫人の手元に無事に戻るも、
しばらく経った1967年にサザビーズのオークションに出品。
それを、ちょうどその時期に、
本格的にアートビジネスに参入しようとしていた丸紅が、
当時の価格にして約1億5000万円で購入し、今に至るそうです。
ちなみに。
日本に渡ってきてしばらくたってから、
この絵をめぐる真贋騒ぎが起きたようですが、
長年に及ぶ調査の結果、1971年に本物であることが判明しました。
みなさま、贋作ではありませんので、
安心して展覧会を訪れてくださいませ。
また、展覧会では、シモネッタと、
作者ボッティチェリの関係にもスポットが当てられています。
シモネッタはボッティチェリの理想の女性だったそうで、
シモネッタの死後も、彼女をモデルにした絵を描き続けていたのだとか。
パネルによると、ボッティチェリの代表作《ヴィーナスの誕生》や、
《ヴィーナスとマルス》のヴィーナスは、シモネッタがモデルとなっているとのこと。
さらに、《春》に描かれた女性たちも、
シモネッタがモデルになっているという説もあるそうで。
そのことに言及した研究者の説を、
まとめると、こんな感じになるのだとか。
全員、シモネッタやないかい!!
シモネッタしかいない世界。
若干、オカルトやSFじみてきました。
と、《美しきシモネッタ》に関して、
たっぷりと情報を得たうえで、いよいよご対面!
VIP作品ゆえ、警備員さんが貼り付いています。
《美しきシモネッタ》の実物を観るのは、
2016年に東京都美術館で開催された“ボッティチェリ展”以来。
久しぶりに目にするシモネッタはやはり美しかったです、雰囲気が。
顔そのものは、正直なところ、僕のタイプではなかったです(笑)。
若干、アゴが出てるような。
あと、思ったより、髪の毛が長いのですね。
肩までかと思ったら、よく見ると腰のあたりまでありました。
今回改めて観て、特に目を奪われたのが、服や布の再現力の高さ。
レースの繊細な質感は絶品です。
こんな素晴らしい絵が、日本にあるだなんて!
国宝にしても良いんじゃないかと思うくらいの名品です。
久しぶりにお披露目されているこの機会を是非お見逃しなく。