現在、世田谷美術館で開催されているのは、“祈り・藤原新也”という展覧会。
こちらは、『逍遙游記』や『東京漂流』といった著作で知られる、
写真家で文筆家の藤原新也さんの公立美術館では初となる個展で、
初期作から最新作まで、50年以上に及ぶ活動を振り返る大規模な内容となっています。
日本の若者は、自分を見失うと、
とかく、インドに放浪したがりますが。
その原因を作った人物ともいうべきが、藤原新也さん。
70年代初頭に、彼がアサヒグラフで連載していた『印度放浪』が、
当時の学生たちに強く刺さり、青年層のバイブル的な存在になったそうです。
展覧会ではもちろん、インドの旅で撮影された写真も多く展示されていました。
それらの中で特にインパクトがあったのが、こちらの一枚↓
『ストⅡ』のダルシムみたいなのが、
インドにはマジで、いらっしゃるのですね。
気のせいか、足が伸びているような。
不用意に近づいたら、ヨガファイアを食らってしまいそうです。
それから、もう一枚印象的だったのが、こちら↓
この写真に添えられた藤原さんのテキストは、こうありました。
「サドゥ(聖者)が三日月型に割ったスイカをなんと皮の側から食っていた。
生まれてはじめてスイカの皮の側から食らう人間を見た。
だが、なぜスイカを皮の側から食ってはいけないのか。
ふと、自分に問い返す。」
確かに!
・・・と、一瞬、藤原さんに同意しかけましたが。
やはり、皮の側からは食わないっしょ。
固いし。味も無いし。
またインドといえば、1983年に発表され、
世に大きな衝撃を与えたという『メメント・モリ』も紹介されています。
メメント・モリ=死を想え。
『死』を真っ向から捉えた作品で、
今まさに死を迎えようとする人や葬儀の様子、
火葬される遺体などが、淡々と写し取られています。
中でも衝撃的なのが、ガンジス川に流された遺体を野良犬たちが食べている光景。
「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」というコピーが添えられていました。
大げさでなく、衝撃的な光景なので、
メンタルが弱っている時に観ると、やられてしまうことは確実。
肉体的にも精神的にも万全な状態で、
展覧会を訪れることをオススメいたします。
他にも、1980年に起きた予備校生による、
金属バットでの両親撲殺事件の現場宅を映した写真や、
緊急事態宣言が発せられ、人が消えた渋谷の光景を映した写真、
藤原さん自身の実の父親の臨終の瞬間を映した写真や、
STAP細胞の騒動で渦中にいた時の小保方さんを映した写真など、
メンタルがじわじわ抉られる写真が大半を占めていた印象がありますが。
日本国内を旅し、何気ない光景を映したものや、
故郷である福岡県門司市(現・北九州市)を映したものなど、
ほのぼのできる、心にじんわり染み入る写真も多々ありました。
その中で特に印象に残っているのが、この一枚。
「人生の終わりは定食でよい。」
という藤原さんの考えには、同意しますが。
その定食は、これではないでしょ。
こんな炭水化物オンリーな定食でなく、
もっとバランスよい定食を、人生の終わりに食べたいものです。
最後に、個人的にお気に入りの写真をご紹介。
バリ島にいるという伝説のマユゲ犬だそうです。
マユゲがある犬とのことで、
地元の人々にあがめられているそうですが。
実際のところは、誰かがマジックで書いただけとのこと。
まさに、マユツバ。
真実なんて、そんなものなのですね。