来る令和5年4月4日に、
京都の智積院に宝物館がオープンするそうです。
それに先立ち、現在、サントリー美術館では、
“京都・智積院の名宝”という展覧会が開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
京都国立博物館や三十三間堂のほど近くにある、
弘法大師空海から始まる真言宗智山派の総本山、智積院。
その貴重な寺宝の数々を初めて寺外で同時公開する展覧会です。
展覧会の目玉はなんといっても、
国宝に指定されている障壁画の数々!
長谷川等伯がプロデュースした障壁画で、
その豪華絢爛さから、桃山絵画の傑作とも評されています。
特に必見なのが、長谷川等伯の国宝《松に黄蜀葵図》(写真右)。
寺外で公開されるのは、今回が初めてとのことです。
高さは、実に3m30cm。
もともとは客殿の襖絵だったと考えられているそうです。
そんなに大きいと、襖を開けるのも一苦労だったのでは?
また、もう一つ見逃せないのが、等伯が描いた《楓図》(写真左)と、
その息子である長谷川久蔵が描いた《桜図》(写真右)の同時展示です。
長谷川等伯の知名度と比べると、
まったくと言っていいほど無名な息子・久蔵ですが。
江戸時代初期に刊行された『本朝画史』において久蔵は・・・・・
「画の清雅さは父に勝り、長谷川派の中で及ぶ者なし。
父の画法を守り(中略)、人物・禽獣・花草に長じる。」
と高く評価されているほどの人物です。
しかし、周囲の期待を一身に集めるも、
この《桜図》を描いた後、26歳という若さで逝去。
それゆえ、久蔵の作品は、《桜図》を含めわずか数点しか現存していません。
レア度でいえば、フェルメールよりもレアな作家と言えましょう。
トーハクの国宝展もいいですが、
こちらサントリー美術館での国宝もお見逃しなく。
他にも、貴重な寺宝は数多くありましたが、
今展の隠れた推し作品が、普段は非公開の《婦女喫茶図》。
作者は、大正から昭和にかけて、
京都で活躍した日本画家、堂本印象です。
智積院からの依頼を受けて描いた絵が、
野外で和装と洋装の女性が野点をする光景。
なんともアバンギャルドな襖絵です。
また、堂本印象による非公開の襖絵はもう一点。
《松桜柳図》です。
実はこちらは、長谷川等伯の《楓図》と、
久蔵の《桜図》にインスパイアされた作品と考えられているそう。
真横にグーンと伸びた柳の幹は、
どことなくブラキオサウルスを想起させるものがありました。
こちらもまたアヴァンギャルドな襖絵です。
ちなみに。
今回の展覧会を通じての一番の驚きは、
成田山新勝寺や川崎大師、高尾山薬王院といった、
日本有数のお寺の大本山が、智積院だったということ。
国宝ハンターで何度か、智積院を訪れていますが、
成田山新勝寺や川崎大師と比べると、こじんまりしていたような・・・。
人もお寺も見かけで判断してはいけませんね。
なお、かつては大きな客殿も存在していましたが、
1682年に護摩堂からの出火により、全焼してしまったそう。
他にも、年表によると、1585年に焼き討ち、1869年に爆発炎上、
1882年に金堂が炎上&大日如来が消失、1892年に金襖などが盗難、
1947年に数棟が全焼、さらに国宝の障壁画16面も焼失しているそうです・・・。
これだけの不幸に見舞われつつも、
なんとか今日までやってきた智積院。
もっとも逆境に強い寺院なのかもしれません。