日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会として、
森美術館が、3年に1度のペースで開催している“六本木クロッシング”。
その最新版2022展が、12月1日よりスタートしました!
シリーズ第7弾となる今回のサブタイトルは、『往来オーライ!』。
単なるダジャレ(?)かと思いきや、このフレーズには、
歴史上、異文化との交流や人の往来が繰り返され、複雑な過去を経て、
現在の日本には多様な人・文化が共存しているという事実を再認識しつつ、
コロナ禍で途絶えてしまった人々の往来を再び取り戻したい―
そんな壮大な思いが込められているそうです。
参加キュレーターは、男性2名女性2名。
参加作家は、男女比ほぼ半々の22組となっています。
そのメンバーの中には、僕の現在のアー写を撮ってくれた金川晋吾さんや、
金川晋吾《長い間》 2011年 インクジェットプリント 28.3×35.7cm
実はユニットを組む前から面識のあるキュンチョメの名前も。
キュンチョメ《声枯れるまで》 2019/2022年 ビデオ 27分
他にも数名ほど、関係性のある作家が含まれています。
あれ?もしかして、僕もキュレーターの一人だったでしょうか(←んなこたぁない!)。
それから、出展作家に関して印象的だったことがもう一つ。
会場の冒頭を飾る画家のO JUNさんを筆頭に、
O JUN《美しき天然》 2019年 油彩、キャンバス 350×240×5cm Courtesy:ミヅマアートギャラリー(東京)
「六本木クロッシング2022展」展示風景
国際的に最も高く評価されている写真家の石内都さん、
石内都《Moving Away》2015-2018年 Courtesy: The Third Gallery Aya(大阪)
工業用の鉄板をパーツに溶断し、溶接して組み上げる彫刻家の青木野枝さんなど、
青木野枝《core》シリーズ(2022年) Courtesy: ANOMALY(東京)
若手アーティスト、今後注目のアーティストに混じって、
美術館での個展経験のあるベテラン実力派アーティストも参加しています。
長友選手や川島選手、キャプテン吉田麻也が、
メンバーに名を連ねるサッカー日本代表と通ずるものがありました(←?)。
さてさて、ここからは今回の出展作品の中で、
とりわけ印象に残ったものをいくつかご紹介いたしましょう。
まず何といっても、個人的に一番ささったのが、
メディアアーティスト・やんツーさんのインスタレーション作品です。
やんツー《永続的な一過性》 2022年
展示室の中に突如として現れたのは、収蔵庫のような空間。
その中で絶えず動き続けているのは、
Amazonの倉庫などで実際に導入されているという自律搬送ロボット。
そのロボットが、ただひたすら展示品の搬出・搬入を繰り返していました。
この搬出・搬入に意味があるのか無いのか。
今後、こんな風に美術館内の仕事も、
ロボットに取って代わられる日が来るのではないか。
シンプルながら、若干のディストピア感を覚える作品でした。
続いて紹介したいのは、横山奈美さん。
横山奈美《Shape of Your Words》シリーズ 2022年
一見すると、写真のように思えますが。
横山奈美《Shape of Your Words - T.K. –》 2022年 油彩、麻布 181.8×227.3 cm
Courtesy: ケンジタキギャラリー(名古屋/東京)
実は、これらはすべて絵画作品です。
まず、家族や知人に「LOVE」と手書きしてもらい、
それらの文字をもとに、ネオンサインを制作したそうです。
そして、そのネオンサインをモチーフに描かれたのが、これらの作品群です。
なるほど。「LOVE」とは手間がかかるものなのですね。
たまたまでしょうが、そんな横山さんの作品と、
色味が似ていたのが、玉山拓郎さんによるインスタレーション作品。
玉山拓郎《Something Black》 2022年 Coutesy: ANOMALY(東京)
展示空間に一歩足を踏み入れると、
そこは、赤い光に包まれたちょっと奇妙な世界が広がっていました。
完全新作ゆえ、まず間違いなく、
初めて目にする光景なのですが。
不思議とどこかで目にしたことがあるような、デジャヴを感じました。
なんでも、空間内にある黒い立体物は、
テーブルやベッドといった家具をイメージしたものなのだそう。
高熱が出た時に見る夢のような世界観でした。
それから、インスタレーション作品といえば、
AKI INOMATAさんの《彫刻のつくりかた》(2018~)も印象的でした。
AKI INOMATA《彫刻のつくりかた》 2018年
これまでに犬やヤドカリ、ミノムシ、インコなど、
さまざまな生物と協同し、作品を制作してきたINOMATAさん。
こちらの作品では、ビーバーとコラボ。
ビーバーに木片を渡し、齧ってできたものを彫刻家へ依頼し、
また、機械によって3倍のサイズに複製した彫刻を制作したのだとか。
こうして並べられてみると、ビーバーが生み出した形が、
抽象彫刻作品のようにも、円空仏のようにも見えてくるから不思議です。
彫刻をつくるのは人間だけ、というのは、驕った考え方なのかもしれませんね。
最後に紹介したいのは、
松田修さんの《奴隷の椅子》(2020年)いう作品。
松田修の展示風景
展示空間に置かれているのは、
2020年に閉店したというスナック、
「太平洋」で実際に使われていた備品の数々。
モニターでは、そのスナックを営んでいた女性、
松田さんの実母のひとり語りの映像が、チープ風のCGで流れています。
このお母様のトークが、まぁ面白い!
R-1出たら、決勝に行けるのではなかろうか。
キャバクラで働いていた際に、
「マイク・タイソン似のブス」というキャラ設定をしていたそう。
マイク・タイソン似のブスって・・・w
パワーワードにもほどがあります。
┃会期:2022年12月1日(木)~2023年3月26日(日)
┃会場:森美術館
┃https://www.mori.art.museum
~読者の皆様へのプレゼント~
“六本木クロッシング”の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、12月23日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。