現在、東京都現代美術館で開催されているのは、
“クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ”という展覧会。
フランスを代表するファッションブランド、
クリスチャン・ディオールにスポットを当てた展覧会です。
さてさて、展覧会の冒頭に展示されていたのは、
意外にも、レオノール・フィニやマン・レイの作品でした。
というのも、実は、クリスチャン・ディオールの創業者、
クリスチャン・ディオールは、もともと美術の道を目指していたそうで。
20代のときには、2つのギャラリーを経営していたのだそうです。
しかし、世界恐慌の影響もあって、ギャラリーは閉鎖。
紆余曲折を経てファッションの世界に転身し、
40代になって初めて自身のコレクションを発表することとなります。
その際にお披露目され、大きな話題となったのが、こちらの”BAR(バー)”ジャケット。
その革命的なデザインから「ニュールック」と呼ばれ、
戦後新しいファッションの代名詞ともなった伝説のジャケットです。
そんな”BAR”ジャケットを筆頭に、
ディオールの膨大なアーカイヴの中から、
1500点以上の貴重なアイテムの数々が来日。
青森のねぶたをオマージュした展示空間や、
歴代のクリエイティブディレクターのオートクチュールを紹介する展示など、
全部で13のセクションに分けて紹介しています。
ちなみに。
会場の随所に登場する写真は、
写真家の高木由利子さんが今展のために撮り下ろしたもの。
被写体であるマネキンやダンサーが着用しているのは、
もちろんすべてクリスチャン・ディオールのオートクチュールです。
また、高木さんの写真作品以外にも、
現代美術家の手塚愛子さんや牧野虎雄の油彩画など、
東京都現代美術館のコレクション数点も、ファッションに合わせて展示。
ファッションだけでなく、アートも楽しめる展覧会に仕上がっていました。
さて、ファッションブランドの展覧会といえば、
今年の夏に三菱一号館美術館で開催されていた、
ガブリエル・シャネル展が記憶に新しいところです。
あの展覧会の会場も、かなりラグジュアリーでしたが、
今回のクリスチャン・ディオール展はその比ではありません!
とりわけ圧巻なのが、3層分の吹き抜けのアトリウムを、
大胆に使用した「ディオールの夜会」と名付けられたセクションです。
ヘリテージから最新アイテムまで35点のドレスが、
ひな壇から着想を得たという巨大な什器に並べられています。
さらに、それらのドレスの美しさを引き出すべく、
夜をイメージしたプロジェクションマッピングが投影されています。
ちょっとやそっとで驚かない僕ですが、
あまりにも圧倒的な光景ゆえ、目に飛び込んできた瞬間、
思わず、「まいりました!」と声に出してしまいました(←?)。
これまでに数多くの展覧会を観てきましたが、
ラグジュアリー度、ゴージャス度の観点でいえば、
まず間違いなく、この展覧会が1番ではないでしょうか。
そして、他のファッションブランドが本気を出して、
展覧会を開催しない限り、この1位の座はしばらく安泰でしょう。
お金の匂いはプンプンとしましたが、
そこには目をつむっても(鼻をふさいでも?)、
観ておくべき展覧会の一つだと思います。
文句のつけようのない展覧会ではありますが、
強いて一つだけ挙げるならば、最後の展示品だけ。
建築にも造詣が深かったディオールは、こんな言葉を残しています。
「私のドレスは、女性の身体の美しさを引き出すための儚い建築なのです。」
彼のファッションの根底には、そんな思想があったのか。
展覧会を通じて、そこに大きな感銘を受けたのですが。
最後の最後に、2019年秋冬に発表された、
こんなオートクチュールが展示されていました。
いや、本当に建築を着てどうする?!
ドレスが儚い建築って、そういうことじゃないだろ。
あと、もう一つ、強く印象に残っているのが、
クリスチャン・ディオールに関する資料の中に展示されていたあるアイテム。
彼に関する資料の数々に混じって・・・・・
当時の文化服飾学院の学院長より、
クリスチャン・ディオールに贈られた埴輪がありました。
顔がクリスチャン・ディオールそっくり。
プレゼントされた本人も、
さぞかしビックリしたことでしょう。