美術や音楽、メディア芸術といった各分野における新進芸術家を、
海外の関係機関などで実践的な研修をする機会を与える文化庁の新進芸術家海外研修制度。
過去にその制度により、海外派遣された芸術家たちが、研修生活で得た成果を発表する展覧会。
それが、“DOMANI・明日展”です。
1998年よりスタートし、今年2022年でめでたく第25回目を迎えました。
そして、悲しいかな、今回の“DOMANI・明日展 2022-23”をもってファイナルとのこと。
“DOMANI・明日展”に明日は来ないようです。
そんな最後の“DOMANI・明日展”で紹介されているのは、10人のアーティスト。
下地材をあえて施していないカンヴァスに、
絵具を滲ませていくステイニングという技法を用いて描く丸山直文さんや、
FRP(繊維強化プラスティック)やゴム、鉄などを組み合わせ、
誰も見たことのない、かつユーモラスな彫刻を作る伊藤誠さん、
ペルーで海外研修し、首都リマにある博物館での個展経験を持つ北川太郎さんら、
個性豊かなメンバーが参加しています。
その中には、“DOMANI・明日展”としては、
史上初となる2度目の参加となる近藤聡乃さんも。
2008年にアメリカに研修で渡り、そのままアメリカに在住したという近藤さん。
今回は、そんなアメリカでの日々を綴ったエッセイコミック、
『ニューヨークで考え中』の原画の数々が展示されています。
読みごたえがあるので、
全部読んでいると、わりと時間がかかります。
たっぷり読みたい方は、時間に余裕をもって足を運ばれてみてくださいませ。
アメリカに渡り、そのまま在住しているといえば、
鹿児島県徳之島出身のアーティスト、池崎拓也さんも。
天井から吊るされた巨大なバナーに書かれていたのは、意味不明な文章。
実は、これは池崎さんの娘(当時3歳)が、
奥様のスマホを使って送ってきたテキストなのだとか。
娘さんは、「パパ、大好き」と送りたかったのだそうです。
とてもほっこりするエピソードですが、
そんなものをわざわざ国立新美術館に飾られましても…(笑)。
ちなみに。
今回紹介されていた作家の中で、
特に印象に残っているのは石塚元太良さん。
石塚さんは、パイプラインや氷河といった、
特定のモチーフを世界中で撮影し続けているそうで。
今展でも、氷河をモチーフにした作品群が出展されていました。
離れて観ると、普通の写真ですが、
近づいて観てみると、表面が不思議なことに気づかされます。
線状に裁断された写真が、編み込まれているのです。
なぜ、こんな風になっているのか?
石塚さんはこのように語っています。
今回出展する連作「Texture」は、
まず写真そのものを「編む」という行為により、2.0次元以上の「肌理(Texture)」を獲得し、
次に印画紙の弾力を利用して、3.0次元の「祖型(Protorype)」を試みる。
そんなふうに写真必定の「平面性」を緩やかに、
分解・解体し始めた時、写真はどこまで写真でいられるか。
写真を定義していた境界線はどこにあり、
またその少し外側にあるだろう文字や言葉、
絵画や膨刻と新たにどんな関係を結ぶのか?
そんな「呟き」から制作されている。
・・・・・・・・・・・・あ、無理だ。
テキストを読めば読むほど、
脳内が編み込まれ、こんがらがってきました。
この作品に限らず、今回の“DOMANI・明日展”は、
全体的に、コンセプチュアルで小難しい作品が多かった印象。
25回目の集大成の展覧会だというのに。
最終回が一番難解。
アニメ版のエヴァンゲリオンのようです。