現在、山種美術館で開催されているのは、
“日本の風景を描く ―歌川広重から田渕俊夫まで―”という展覧会。
タイトルずばり、日本の風景をテーマにした展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ひとことに「日本の風景」と言っても、
そのバリエーションは、実に多種多様。
歌川広重が描く江戸庶民にとって身近だった光景もあれば、
歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋・朝之景》 1833-36(天保4-7)年頃 大判錦絵 山種美術館 (注:前期展示12/10~1/15)
“近代日本画壇の巨匠”川合玉堂による日本人の原風景ともいうべき光景、
川合玉堂《早乙女》 1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館
日本画界の重鎮・田渕俊夫さんによって描かれたモダンでクールな風景画もありました。
田渕俊夫《輪中の村》 1979(昭和54)年 紙本・彩色 山種美術館
意外なところでは、今年東京と大阪を巡回する、
大規模な回顧展が控えた佐伯祐三による油彩画も。
描かれていたのは、明らかに日本の風景ではなかったですが、
山種美術館で佐伯が観られるとは思ってもみなかったので、嬉しいサプライズでした。
実は、今展には佐伯の油彩画以外にもいくつか、
山種美術館が所蔵する洋画家の作品が出展されています。
そのうちの1点が、安井曽太郎による《初秋遠山》。
どちらかといえば、こってりとした印象のある安井曽太郎ですが、
油彩画ではなく、水彩画だからなのか、少しマイルドな印象でした。
ただ、その分、額装はこってりしていましたが。
ちなみに、この絵が公開されるのは、37年ぶりとのこと。
ということは、平成時代は一回も公開されなかったのですね。
平成時代を飛び越えて公開される、
いわゆる、平成ジャンプ(?)な作品は他にも。
石田武の《四季奥入瀬 春渓》と《四季奥入瀬 瑠璃》です。
石田武《四季奥入瀬 春渓》 1985(昭和60)年 紙本・彩色 個人蔵 🄫 Ko Ishida 2022/JAA2200159
石田武《四季奥入瀬 瑠璃》 1985(昭和60)年 紙本・彩色 個人蔵 🄫 Ko Ishida 2022/JAA2200121
こちらは、石田武による連作「四季奥入瀬」のうちの2点。
秋と冬の光景を描いた2点も出展されており、
会場では、「四季奥入瀬」4点が揃い踏みとなっています。
この4点すべてが展示されるのは、
なんと作品が発表されて以降、初めてとのことです。
日本画ファンの皆様、貴重な機会をどうぞお見逃し無きように。
さてさて、展覧会にはまだまだ、
蔵出し作品が多数出展されています。
その中で特に印象的だったのが、
昭和59年に制作された千住博さんの初期作(写真右)。
滝を描く前は、ビル群を描いていたのですね!
今の作風とは全然違うので、
キャプションの作者名を思わず二度見してしまいました。
なお、タイトルは《街・校舎・空》とのこと。
若干、尾崎豊感があります。
それからもう一つ印象的だったのが、
米谷清和さんの《暮れてゆく街》という作品。
80年代、昭和60年に発表された作品で、
当時のJR渋谷駅が俯瞰で描かれています。
左下には、モヤイ像も描かれています。
今から約40年前に描かれた作品なのに、
それも、日本画なのに、全く古臭い印象を受けません。
全体的に観れば、むしろ、
正方形の画面も手伝って、インスタっぽい印象を受けます。
ちなみに。
画面の上半分を隠して、
下半分の雨の情景に注目してみると・・・・・
エモさがグッと強調されました。
そして、デジャヴを感じました。
これに近い光景、どこかで目にしたことがあるような。
しばらく考えて、その答えが判明しました。
“あっ、カラオケビデオだ!”
この絵をバックに・・・・・
と表示されていたとしても、特に違和感もありません。
あるいは、消費カロリーが表示されていたとしても、違和感はないでしょう。
┃会期:2022年12月10日(日)~2023年2月26日(日)
┃会場:山種美術館
┃https://www.yamatane-museum.jp/exh/current.html
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