昨年3月にリニューアルオープンした泉屋博古館東京では、
現在、その記念展シリーズのファイナルを飾る展覧会が開催されています。
その名も、“不変/普遍の造形”。
泉屋博古館が有する住友コレクションの中でも、
特に世界的にも名高い中国古代青銅器コレクションを紹介する展覧会です。
それらの中国青銅器コレクションは、
普段は、京都にある泉屋博古館の青銅器館に常設されていますが。
ちょうど今、泉屋博古館は休館中であるため、
中国青銅器コレクションの選抜メンバーたちが、
ごそっとまるっと、まとめて上京してくれています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
これだけのベストメンバーが館外で観られるのは、
おそらく、最初で最後の機会ではなかろうかとのこと!
関東近郊にお住いの皆さま、見逃し厳禁の展覧会ですよ。
さて、そもそもですが、
中国青銅器とは一体どんなものなのでしょうか。
簡単に説明しますと、中国青銅器とは、
今から約3000年前、日本がまだ縄文時代だった頃に、
殷周時代の中国で、祖先を祭る儀式用に作られた特別な青銅器です。
その造形も個性豊かで大変に魅力的ですが、
さらに目を惹くのが、表面全体をびっしりと緻密に埋め尽くす文様です。
これらの紋様は、鋳造された後に、
その表面を彫って、作られたものではありません。
(なぜなら、当時、青銅よりも硬い金属が存在していなかったから)
つまり、鋳型の段階で、その型となる土、
もしくは砂に、これらの模様が彫り込まれていたわけです。
ということはわかっているものの、一体何をどのようにしたら、
これほどまでに緻密な文様を、鋳型全体に施すことができたのか。
実は、現代の技術をもってしても、いまだ解明されていないのだそうです。
また、これらの青銅器は見た目ずっしりしていますが、持ってみると意外と軽いのだとか。
なんとこう見えて、厚さは2~3ミリとのこと。
それもまた解明されていない中国古代の謎テクノロジーなのだそうです。
さてさて、読者の皆さま、ここまでの説明を聞いて、
中国青銅器に対して、少しは興味を持って頂けましたか?
“気にはなる!・・・でも、やっぱり難しいかも。”
そう悩んでいる方にこそ、オススメなのがこの展覧会。
中国青銅器デビューに打ってつけの展覧会なのです。
この展覧会のコンセプトは、
「とっつきにくい中国青銅器に、とっかかりを提供しよう」というもの。
例えば、器の名前を知るために、用途ごとに紹介してみたり。
青銅器に彫り込まれた、漢字の源流とされる金文に注目してみたり。
さまざまな角度から、
中国青銅器の楽しみ方、魅力を紹介。
コラムや丁寧な解説パネルも随所に設置されており、
まるでガイドブックの中を歩いているような展覧会場となっています。
なお、面白そうな気はするけど、
覚えることいっぱいで、頭が疲れそう・・・と、
二の足を踏んでいる方も、どうぞご安心を。
ミミズク型ロボットのような《鴟鴞尊》(しきょうそん)や、
ガンダムに登場するハロのような《円渦文敦》(えんかもんたい)、
ロディをどこか彷彿とさせる《金銀錯獣形尊》などなど、
難しいことは抜きにして、純粋に見た目に楽しい、
ゆるキャラのような作品が数多く展示されていますよ。
ちなみに。
個人的イチオシ作品は、《虎卣》(こゆう)。
目を見開き、今にも人を食べようとする虎。
・・・・・のようにも見えますが、
虎にしがみついている人の表情を見るに、
そこまで切迫したような空気は伝わってきません。
もしかしたら、トトロに抱きつくサツキやメイのように、
この男性も、巨大な虎に抱き付いているのかもしれません。
それはそうと、この男性の顔、よくよく見てみると、
ネット上で一昔前に話題となったThis Manに似ている気がします。
実は何を隠そう、この《虎卣》が、
This Manの元ネタになったという話。
信じるか信じないかはあなた次第です。