昨年10月に100歳を迎えた現在もなお、
創作意欲が衰えていないという染色界のレジェンド、柚木沙弥郎さん。
その生誕100年を記念して、現在、
柚木沙弥郎さんと深い関りのある日本民藝館では、
“生誕100年 柚木沙弥郎展”が開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
展覧会のメインとなるのは、
柚木さん自身から日本民藝館に寄贈された作品群。
その数、実に約60点。
それらが、館内のあちらこちらに、
ワイワイガヤガヤ賑やかに展示されています。
眺めているだけで、心が軽くなる。
眺めているだけで、心がウキウキする。
柚木さんが生み出す染織作品には、
そんな不思議なパワーが宿っているようです。
また、併せて、柚木さんがこれまで手掛けた、
日本民藝館での展覧会ポスターの一部も紹介されています。
ポスターそのものが、もはや作品。
絵柄はもちろんのこと、
電話番号や住所ですら、
味わい深いものがありました。
さてさて、数多くの柚木作品の中で、
特に印象的だったものをいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、こちらの染織作品から。
手形を文様にするという斬新なデザイン。
それらの手形も、よーく観てみると、
すべて同じというわけでなく、微妙に異なっています。
そして、もれなくすべて指が長い。
色合いはどこかアンディ・ウォーホルを彷彿とさせるものがありました。
柚木さんの独自の色彩感覚が発揮されていた作品は他にも。
キャプションによると、唐草文とのことでしたが、
どこからどう見ても、人生ゲームのボードのようです。
なお、決して、カラフルでなくても、
柚木さんの個性は存分に発揮されていました。
それを特に感じたのが、こちらの《型染 童女文暖簾》です。
制作されたのは、1970年代とのこと。
ということは、ちびまる子ちゃんと同じくらいでしょうか。
童女をモチーフにしながらも、
色味といい、周囲の模様といい、
ポップに寄せようとしていないところに、むしろ好感が持てました。
ちなみに。
今回の展覧会のハイライトは、2階の大展示室です。
柚木作品と日本民藝館のコレクションがコラボ。
特に今回は、柚木作品を、日本や東洋のものだけでなく、
あえてアフリカやインドなどのプリミティブな造形作品と併せて展示しています。
制作された時代も地域も全然違うのに、
驚くほどに、まったく違和感がありませんでした。
この展示室にあるすべてが、
柚木さんの作品と言われても、
普通に信じてしまうかもしれません。
それほどまでの一体感。
展示室全体が、まるで一種のインスタレーション作品のようでした。
また、柚木さんの染織作品を、壁に掛けるだけではなく、
テーブルクロスとして使用するなど、西洋のアンティーク家具と併せてるのも良き。
日本民藝館の展示センスも存分に味わえる展覧会。
この空間を味わうためだけでも、
日本民藝館を訪れる価値は大いにあります。
最後に。
大展示室に飾られた作品の中で、
個人的に印象に残ったものをご紹介いたします。
画面右上にある《彩色土器》です。
北アメリカの先住民によって、
10~12世紀に作られたものとのこと。
ロボット感のある、楽しく独創的な模様です。
北アメリカの先住民の中にも、
きっと柚木沙弥郎的な人がいたのでしょうね。