現在、エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されているのは、
“ヴォルフガング・ティルマンス「Moments of Life」展”という展覧会です。
2000年に「世界有数の美術賞」とされるターナー賞を受賞した、
ロントンとベルリンを拠点に活動する現代アーティスト、ヴォルフガング・ティルマンス。
昨年2022年には、MoMAで大規模な回顧展が開催され、大きな話題となりました。
そんなティルマンスの作品を所蔵するフォンダシオン ルイ・ヴィトンが、
所蔵作全30点の中から厳選した21点を、日本初公開する展覧会です。
出展されている21点は、2000年から2020年までに撮影されたもの。
ティルマンスの初期の代名詞ともいうべきポートレートや、
近年取り組んでいる風景写真や生物写真など、ジャンルは多岐に渡ります。
一見すると、何の変哲もない、
日常的な情景を映したように思えるかもしれませんが。
オランダの古典的な静物画のようであったり、
コンポジション、幾何学的抽象画のようであったり。
ティルマンスの作品は意図的に、
伝統的な絵画をモチーフにしていることが見て取れます。
2013年に発表された《Summer party》なんかは、
明らかにマネの代表作《草上の昼食》をオマージュした作品でした。
さてさて、ただ写真を撮影するだけでなく、
展示のディスプレイにもこだわるティルマンス。
今回の展覧会では、2つの巨大な展示壁が、
微妙にズレて並び立ち、その間に通路のようなものが設置されていました。
(注:通路のようなものの上に乗ってはいけません)
シンプルながら、インパクトのあるディスプレイ。
巨大な壁に展示された巨大な写真を、
見上げて鑑賞するのは、意外と新鮮な体験でした。
また、ティルマンスは、写真のプリント、
具体的にはサイズや出力方法にも強いこだわりがあるようで。
中には、一般的な写真作品同様に、額装したものもありましたが。
その多くが、インクジェットプリントで出力されたものが、
しかも、むき出しの状態で、クリップ止めで展示されていました。
アクリル越しで無いことで、
作品の持つ迫力やニュアンスが、
ダイレクトかつ繊細に伝わってきます。
どうかこの貴重な作品に、唾を付ける輩が現れませんように。
剥き出しの状態で作品が展示され続けますように。
ちなみに。
個人的に一番印象に残った作品は、
大阪のホテルで撮影したという《Osaka still life》です。
特に大阪らしいものは映っていませんでしたが、
隅々までよく見てみると、柿の種が映っていました。
それもサクランボと一緒にパックされて。
それと、もしかしたら鶴橋に行ったのでしょうか。
焼肉屋さんの会計時にしか見かけない、
あの何味かよくわからないガムも映っていました。
なお、余談ですが。
ティルマンスの展覧会は、
まだ始まったばかりだからでしょう、
そこまでお客さんは入っていない感じでしたが。
エスパス ルイ・ヴィトン東京のあるルイ・ヴィトン表参道ビルのウィンドウには、
寒い夜にも関わらず、多くの人々が詰めかけ、実に熱心に写真撮影していました。
彼らのお目当ては、今世界各地で、
絶賛ルイ・ヴィトンとコラボ中の草間彌生さん。
そのフルCG映像とカボチャの立体、
そして、頭がカボチャ化した草間彌生さん本人の立体です。
ただのマネキンかと思いきや、
しばらく眺めていると、筆を動かし始めました。
こいつ、動くぞ!