昨年秋にご逝去されたカリスマ古道具商・坂田和實さんが、
1994年に千葉県の奥地(?)長南町にひっそりと開館した美術館。
それが、museum as it isです。
museum as it isが、2021年いっぱいで閉館してしまう。
そんな衝撃のニュースを小耳に挟み、
閉館前に慌てて、初めて美術館に足を運びましたが。
その後いろいろあったようで、
美術館の存続が決定したようです。
閉店セールを何度も行いながらも、
結局は閉店しない紳士服店には、腹立ちしか感じませんが。
美術館が閉館を撤回するのは、むしろ大歓迎!
museum as it isが存続してくれて、心から良かったと思っております。
そんなmuseum as it isで、
現在開催されているのが、通常展示。
土器や作家物のオブジェといった、
一般的な展覧会でも紹介されそうな展示品もあるにはありますが。
基本的にmuseum as it isで展示されているのは、
絹や麻といった布の端切れや使用後のコーヒーフィルターなど、
決して美術品として作られたわけではないものばかり。
あまりに日常的にありふれているもの過ぎて、
「それのどこかアートなんだよ!」と、ツッコみたいところでしょうが。
当代随一の目利き、坂田さんの審美眼によって、
見出されたアイテムは、そんじょそこらのアート作品よりもアートです。
ただのパン発酵用敷布、
ただの針金なのに、
圧倒的、絶対的な美のオーラを放っていました。
キャプションがなかったら、そういう抽象画、
そういう抽象彫刻と信じて疑わなかった気がします。
とはいえ、これらが自分の家にあったら、さすがに美術品とは思えないはず。
むしろ、ガラクタのように感じるはず。
これらのアイテムのポテンシャルを、最大限に引き出しているのは、
やはり建築の素晴らしさ、そして、ディスプレイのセンス、そこに尽きると思います。
かつて、フランスの画家クールベは、
現実をありのままに描くことが何よりも美しい、
と主張し、写実主義というジャンルを確立しましたが。
現実をありのままに描く、どころか、そのままディスプレイする。
このmuseum as it isの姿勢こそ、
究極の写実主義なのかもしれません。
なお、今回展示されていたさまざまなアイテムの中で、
個人的に一番グッときたのは、室町時代作の仏像の残欠です。
実際には、坐像の下半身だけしか残っていないのですが、
しばらく眺めていると、不思議と上半身の気配も感じられました。
たぶん、心が綺麗な人なら、上半身の姿も浮かび上がって、見えるはずです。
それから、もう一つ印象に残っているのが、
18世紀の李朝で作られたという手書きの地図。
右上に「日本図」とあるので、日本地図であるのは確かなのですが。
なんだかもう、いろいろ残念なことになっています。。。
形は違う。距離感も違う。
島がそんなに密集しているわけがない!
近江(琵琶湖)にいたっては、
湖でなく、入江のようになっていました。
適当すぎにもほどがあります。
にもかかわらず、「鎌倉殿」の文字はありました。
(『鎌倉殿の13人』ファンとしては、ただただ嬉しい限り)
ちなみに。
今回展示されていたアイテムの中に、こんなものもありました。
キャプションによれば、「セルライド製品(用途不明)」とのこと。
公式が、用途がわかっていない以上、
僕にこれが何なのか、わかるわけがありません。
単語帳の残骸とか?