現在、ポーラ美術館で開催されているのは、
“部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで”という展覧会です。
展覧会のテーマは、「部屋」。
19世紀の画家から、現代アーティストまで、
部屋の表現に特徴やこだわりを持つ9人(組)を取り上げた展覧会です。
そのメンバーの中には、妻のいる自宅の部屋を描き続けたピエール・ボナールや、
4月に東京都美術館での大々的な回顧展が控えるアンリ・マティス、
さらには、ルイ・ヴィトンとコラボし、話題沸騰中の草間彌生さんも。
9人(組)の作家の作品それぞれが、
「部屋」感をより強調した(?)空間で展示されています。
どの部屋も見ごたえがありましたが、個人的にイチオシは、
双子のアーティストユニット、髙田安規子・政子さんの部屋です。
壁一面に並んでいるのは、無数の小さな窓。
その数、実に180個!
しかも、すべての窓の向こうには、
丸い照明器具も取り付けられています。
なお、その先には、薄いベール越しに、
美術館の周囲にある実際の森の景色が広がっていました。
訪れた今の季節はまだ枯れ木ゆえ、
新緑の季節にまた訪れたいと思います。
また、この高田姉妹の部屋にはもう一つ作品が。
こちらの作品では無数の鍵と、
鍵穴プレートがズラリと並べられています。
それらを順に追っていくと・・・・・
最終的には小さな扉に辿り着きました。
ちょっとだけ、『世にも奇妙な物語』感のある作品です。
姉妹のアーティストが共演した部屋もあれば、
夫婦のアーティストが共演した部屋もありました。
こちらの部屋では、実の夫婦である、
佐藤翠さんと守山友一朗さんの作品が共演。
しかも、それぞれの新作が飾られているだけでなく、
今展のために制作された、合作も展示されていました。
夫婦漫才ならぬ、夫婦絵画。
ありそうでなかった絵画です。
さらに、現代作家の中には、ヴォルフガング・ティルマンスも。
くしくも今、ティルマンスの個展が、
エスパス ルイ・ヴィトン東京でも開催されており、
出展作品も2点、かぶっていましたが。
個人的には、全体的に照明をグッと落とした、
ポーラ美術館での展示スタイルのほうが好みでした。
2019年のシンコペーション展や、2021年のロニ・ホーン展など、
ここ近年、話題の現代アート展を次々に開催しているポーラ美術館。
かつては「印象派の美術館」というイメージが強かったですが、
今や、もっとも面白い現代アート展を開催する美術館の一つといっても過言ではありません。
今回の展覧会を観て、そのイメージが強まりました。
サブタイトルを安易に、“マティスから草間彌生まで”としなかったセンスも良き。
ちなみに。
近年、ポーラ美術館に新収蔵され話題となった、
“静謐の画家”ハマスホイの室内画も出展されていました。
《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》 1899年、ポーラ美術館
それも、国立西洋美術館が所蔵するハマスホイの作品と併せて!
国内にあるこの2点のハマスホイ作品が、
こうして一堂に会したのは、初めてとのこと。
実はとっても貴重な機会なのです。
なのに、不思議とあまり話題になっていません。
それはおそらく、このことが公式HPでも特に触れられてないから。
いや、もっとプッシュすべきです。
公式が静謐でどうする!?