2013年に、箱根小涌谷に開館した“美の殿堂”岡田美術館。
今年10月にめでたく開館10周年を迎えます。
それを記念して、これまでに開催された展覧会の中で、
特に人気が高かった4人の画家(伊藤若冲、田中一村、喜多川歌麿、葛飾北斎)を、
2人ずつで紹介する特別展が今年1年にかけて開催されます。
上半期に開催されるのは“開館10周年記念特別展第一部「若冲と一村 ―時を越えてつながる―”。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ともに2000年代に入ってから人気が急上昇した画家、
“画遊人”伊藤若冲と“日本のゴーギャン”田中一村にスポットを当てた展覧会です。
岡田美術館が収蔵する若冲作品は、《花卉雄鶏図》をはじめ全7件。
伊藤若冲《花卉雄鶏図》(部分) 江戸時代中期 18世紀中頃 岡田美術館蔵
10周年を記念する今回の特別展では、
なんと、それらすべてが一挙展示されています!
(注:ただし、7件のうち《雪中雄鶏図》のみ、3月10日からの展示となります)
さらに、田中一村全作品5件(&個人蔵2件)も一挙展示!
左)田中一村《熱帯魚三種》 昭和48年(1973) ©2023 Hiroshi Niiyama 岡田美術館蔵
右)田中一村《白花と赤翡翠》 昭和42年(1967) ©2023 Hiroshi Niiyama 岡田美術館蔵
これだけでも充分に見ごたえのある内容ですが、
さらに、若冲と同時代に活躍した京都の絵師たちの作品や、
若き一村が多大な影響を受けた文人画家の作品なども併せて展示されています。
池大雅《沈香看花・楓林停車図屏風》 江戸時代中期 18世紀後半 岡田美術館蔵
左)木米《山水図》 江戸時代 文政7年(1824) 岡田美術館蔵
右)八大山人《山水図》 清時代17世紀末~18世紀初頭 岡田美術館蔵
これらももちろん全て、岡田美術館の収蔵作品。
改めて、コレクションの層の厚さを実感させられる展覧会です。
さてさて、活動した年代も拠点とした場所も異なる若冲と一村。
ここ十数年で、再ブレイクしたという以外にも、さまざまな共通点があるようです。
例えば、若冲も一村も、基本的には独学で画業を極めたこと。
また例えば、若冲も一村も多くの鳥を飼い、
その生態を観察し続けた結果、生き生きとした姿を描けるようになったこと。
さらに、若冲は「具眼の徒を千年待つ」、
つまり、自分の絵の価値がわかる人が現れるのを千年でも待とう、
という言葉を残していますが、一村も生前にこんなことを語っていたそうです。
「私の死後、50年か100年後に私の絵を認めてくれる人が出てくればいいのです。」
ちなみに、生涯を通じて独身だったというのも大きな共通点。
ここまでそっくりだと、もはや若冲が転生して、一村になったような気さえしてきました。
ちなみに。
全7件の若冲作品の中で、
やはり一番印象に残っているのは、《孔雀鳳凰図》。
重要美術品 伊藤若冲《孔雀鳳凰図》(部分) 江戸時代 宝暦5年(1755)頃 岡田美術館蔵
幾度となく、この作品を目にしていますが、
観るたびに、惹きつけられるものがあります。
今回改めて気になったのが、白孔雀の羽根。
こちらの白孔雀は、おそらく実物ではなく、
中国画などの手本を元に描かれたものとのこと。
というのも、実際の白孔雀は羽根の模様も白一色なのだそうです。
なるほど。本物の白孔雀は、西部の紙袋みたいになっていないのですね(←?)。
一方、一村の作品で最も印象的だったのは、
もちろん、《熱帯魚三種》も良かったのですが、
田中一村《熱帯魚三種》 昭和48年(1973) ©2023 Hiroshi Niiyama 岡田美術館蔵
紀州へのスケッチ旅行の際に描いたと思われる《瀑布》でしょうか。
田中一村《瀑布》 昭和30年(1955)頃 ©2023 Hiroshi Niiyama 岡田美術館蔵
一見すると、シンプルながら、
滝の音や飛沫が感じられる一枚。
4DXの映画を観ているぐらいの臨場感がありました。
それと、もう一つ印象的だったのが、《あぢさい》。
田中一村《あぢさい》 昭和30年(1955)頃 ©2023 Hiroshi Niiyama 岡田美術館蔵
正確には、《あぢさい》と併せて展示されていた、
一村本人による添状の文面が強く印象に残りました。
実は、毒舌。
そして、その自覚あり。
孤高の生活を送る寡黙な人間かと思いきや、
一村は、意外とお茶目な人物だったのかもしれませんね。
さてさて、現在、岡田美術館では、特集展示として、
“生誕360年記念 尾形乾山”も同時開催されています。
重要文化財に指定された《色絵竜田川文透彫反鉢》を含む・・・・・
重要文化財 尾形乾山《色絵竜田川文透彫反鉢》 江戸時代中期 18世紀
尾形乾山作品が、これまた全件一挙展示されています。
兄の光琳が太陽なら、乾山は月。
兄と比べて、どこか地味な印象を抱かれがちですが、
実は、デザインプロデューサーとして、ビジネスマンとして、
光る才能の持ち主だった乾山の真の姿が明らかになる特集展示です。
こちらもどうぞお見逃しなく!
なお、乾山も生涯独身だった模様。
若冲、一村、乾山の3人で、
『ボクらの時代』をやって欲しいものです。
ちなみに。
岡田美術館といえば、以前、
名前が「若冲」なら半額、「伊藤若冲」なら無料という、
どう考えても無理ゲーな入館料特別割引キャンペーンを実施していました。
10周年の現在は、誕生日当日のご本人と、
その同伴者1名まで無料という、太っ腹なキャンペーンを実施中です!
今年まだ誕生日を迎えていない方、
是非、この機会に岡田美術館に行かれてみては?
┃会期:2022年12月25日(日) ~2023年6月4日(日)
┃会場:岡田美術館
┃https://www.okada-museum.com/exhibition/