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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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モーソウは続くよどこまでも

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古今東西の名画を1点取り上げ、
それを徹底的に“モーソウ (=妄想)”する。

読売新聞の連載史上もっともくだらないコラム。

それが、『モーソウ美術館』。

読売新聞夕刊カルチャー面「Pop Style」に、毎月第2水曜日に掲載されています。

2020年の4月より連載がスタートし、

1年で終わるかと思いきや、2年、3年と続き、

今年の4月より、4年目に突入することが決まりました。

まさか、こんなに続くとは!

これもひとえに読者の皆様のおかげです。

毎月、新ネタを考えるのは正直しんどいですが、

とりあえず、あと1年は頑張ってみようと思います。

 

 

というわけで、本日はこれまでに書いた34本のコラムの中から、

個人的にお気に入りの「縄文・弥生3部作」をお届けいたしましょう。

 

《遮光器土偶》の巻(2021年9月)

 

 

この《遮光器土偶》には出土した時から、左足がありませんでした。

何かの儀式で壊して埋めたのでは?

いや、何千年と埋まっている間に壊れてしまったのでは?

いろんな説があるようですが、いまだに決着は付いていないようです。

案外、こんな単純な理由だったりして―


時は縄文時代。

「ねぇねぇ兄ちゃん。あの土偶貸してよ」

嫌だね。買ったばかりだし。

 お前も土偶が欲しいなら、イノシシ狩の手伝いをしてお小遣い貯めて自分で買えよ」

「ケチ!
 

その翌日。

縄文人兄は友達と釣りに出かけました。

一人、竪穴式住居で留守番していた縄文人弟は、

これはチャンスとばかりに縄文人兄の《遮光器土偶》で遊ぶことに。

縄文人父が大事にしている石斧を悪者に見立てて、ヒーローごっこを楽しみました。

 

「喰らえー、土偶キック!」
 

と、必殺技を繰り出した次の瞬間です。

石斧に強く当てすぎて、左足が欠けてしまいました。

 

「・・・・・どうしよう?」

 

接着剤的なものがあれば良かったのですが、セメダインが発明されるのは20世紀。

まだ何千年も先の話です。

慌てた縄文人弟は、壊れた土偶を持って裏山へ。

必死に穴を掘り、そこに埋め隠したのでした。


その夜。

「なぁ、俺の土偶知らない?」

「し、知らないよ」

おかしいなぁ。ここに置いといたはずなんだけど」

「お、お母さんが掃除した時にどこかに動かしたんじゃない?」

何かお前怪しいなぁ」

「そ、そんなことないよ。アハハハ」

あっ、痛!何か踏んじゃった!

 何だこれ・・・ん?土偶の左足?あ、やっぱりお前!待て、逃げるな!」

「ごめんなさーい!」
 

その後、縄文人兄に捕まった縄文人弟はこっぴどく怒られました。

泣き腫らした目が遮光器土偶のようになったのは言うまでもありません。

 

 

 

縄文土器vs弥生土器の巻(2022年3月)

 

数年前から続く、縄文ブーム。

そのせいで、弥生土器はすっかり日陰のような存在となっている今日この頃ですが。

当然弥生時代は弥生土器がトレンドだったわけで―


「お邪魔しまーす」

「いらっしゃい。殺風景な竪穴住居だけど、ゆっくりしていってね」

「今日、旦那は?」

あっちの山に狩りに行くって」

「そうなんだ」

何か飲み物用意するね。良かったら、その土器の中の果物でも食べてて」

「ありがとう。あれ?これって縄文土器?」

「そうよ」

「何それウケる。その台所にあるのも?」

「縄文土器だけど」

「ウソ?アンタん家にある土器って全部縄文なの?」

「そうだけど」

何で?」

「何でって、まだ使えるし」

「えっ、待って待って。今、時代は弥生よ。

 いまどき縄文土器使ってるって、原始人の生活じゃないんだから(笑)」

「そうなの?じゃあ、あなたの家の土器は?」

「全部弥生土器に決まってんじゃん。軽いし、丈夫だし。

 何年かぶりに縄文土器、手にしたけど、こんな重かったっけ?

 あ、だから、久しぶりに会ったら、アンタ見た目が逞しくなってたんだ!

 私なんか全然筋肉ないから弥生土器じゃないと無理」

「・・・・・。」

「てかさ、縄文って何?縄目の紋様の何がいいわけ?

 ダサくない?器のくせに、主張強すぎ。あとさ、何この取っ手?

 無駄にガチャガチャしてるし。取っ手、4つもいらなくない?」

・・・・・。」

「それに比べると、弥生土器はシンプルでスタイリッシュよ。

 部屋のインテリアとも調和するし。これぞ新時代のライフスタイルって感じ」

「・・・・・。」


その夜。

「何なのよ、あの女!あー、ムカつく!この土器のせいで!」

遺跡から割れた縄文土器が出土するのには、こんな理由があったのかもしれません。

 

 

《埴輪 踊る人々》の巻(2023年1月)

 

 

 

一般的に、ハニワは古墳の上や周囲に並べられ、権力を象徴するものとされています。

しかし、出土した中にはそうとは考えられない謎多きハニワもあるようで。

意外とこんな感じで親しまれていたのかもしれませんね―


「ねぇねぇママ、ハニワ買ってー」

「去年、買ったばかりでしょ!」

「えー、アレもう古いんだもん。最新のが欲しいの」

「ハニワなんてどれも一緒じゃない」

「全然違うもん!

 ヤッちゃんなんて、オシャレでかわいい、

 今大人気のリカって名前が付いたハニワ買ってもらったんだよ。

 服を着せ替えたり、ボーイフレンドの男子ハニワとデートさせたりして遊ぶやつ」

「ふーん」

「この前はリカちゃん家形ハニワも買ってもらったんだって。超うらやましー!

 あとね、ヨッちゃんは手拍子や声とか音に反応して、

 踊ってるように見えるダンシングハニワを持ってるんだよ。

 まぁ、あくまで、反応しているように見えるだけなんだけど」

「それなら、普通のハニワでいいじゃない」

「あ、そうそう!昨日、イッちゃん家に行ったら、

 馬型とか鹿型とか犬型とか動物タイプのハニワがたくさんあったの」

「へー、そんなハニワもあるんだ」

「確か、シル“ハニワ”ファミリーって名前で、

 いろんなのが発売されてるんだって!ともかく!

 私もみんなみたいに新しいハニワ欲しいー」

「ダメよ。よそはよそ、うちはうち」

「ケチ!」


と、そこにお父さんが帰ってきたようです。

 

「ただいま!」

「あ、パパだ」

「いい子にしてたか?」

「うん!」

「そっか。今日はご褒美に新しいハニワ買ってきたぞ」

「えー、嬉しい!パパ大好き!開けていい?」

「いいぞ」

「・・・・・何これ?」

「武装しててカッコいいだろ!機動戦士ハニワ」

「はぁ?マジいらないんですけど!」

 

 

 

 

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