4月10日より、オーチャードホールを除いて、
2027年度中まで長期休館(予定)となるBunkamura。
その中にあるBunkamuraザ・ミュージアムも、
もちろん、期間中は移転を余儀なくされています。
というわけで、現在の場所での、
Bunkamuraザ・ミュージアムの展覧会は、今回をもって一区切り。
そのラストを飾る展覧会が、“マリー・ローランサンとモード”です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
展覧会の主役は、この人↓
マリー・ローランサン《わたしの肖像》 1924年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin
フランスが浮かれに浮かれていた(?)、
いわゆる1920年代の「狂騒の時代(レザネフォル)」に、
カリスマ的人気を誇った女性画家マリー・ローランサンです。
社交界の中心的存在であったグールゴー男爵夫人に、
肖像画を気に入られたことから、彼女のもとにはオファーが殺到。
ローランサンに肖像画を描いてもらうことが、
当時、一つのステータスとなっていたようです。
そんなローランサンによる肖像画が、
展覧会には、数多く出展されていましたが、
マリー・ローランサン《ヴァランティーヌ・テシエの肖像》 1933年 油彩/キャンヴァス ポーラ美術館
それらの中には、こんなパターンのものもありました。
エティエンヌ・ド・ボーモン伯爵夫人を描いた肖像画です。
伯爵夫人にしては、子どもっぽいような??
よっぽど童顔の女性だったのかと思いきや、
あえて、子ども時代の姿で描いた空想的肖像画とのこと。
現代で言えば、AIアバターで加工する感覚に近いものがあるのかもしれませんね。
さてさて、ローランサンといえば、
パステルカラーでふわふわした画風のイメージが強いかもしれませんが。
若き日のローランサンは、ピカソやブラックといった、
前衛的なキュビスムの画家たちと交流がありました。
それゆえ、初期の作品には、その影響が色濃く反映されています。
ローランサンは一日してならず。
独自の世界観を確立するまでは、紆余曲折あったようです、
ちなみに。
今回出展されていた作品の中で、
個人的に一番気になってしまったのが、こちら↓
マリー・ローランサン《羽根飾りの帽子の女、あるいはティリア、あるいはタニア》
1924年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin
何より気になったのが、そのタイトル。
《羽根飾りの帽子の女、あるいはティリア、あるいはタニア》とのこと。
ティリアなの?タニアなの?
2択までは絞れたんだけど・・・ってこと?!
確信が無いなら、《羽根飾りの女》だけでいいのに。
そうそう、「あるいは」といえば、こんな「あるいは」も。
マリー・ローランサン《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》
1922年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin
ローランサンの人生における重要人物の一人として、
展覧会では、ニコル・グルーという女性が紹介されていました。
装飾家のアンドレ・グルーの妻で、
ファッションの帝王と呼ばれたポール・ポワレの実の妹。
「現代美術の精神を服飾に取り入れるのに最も近い人物」と、
あのピカソに言わしめたほどの実力を持つファッションデザイナーです。
《鳩と女たち》(写真右)に描かれた2人にご注目。
そのただならぬ距離の近さからも、
なんとなく想像が付くかもしれませんが、
ローランサンとニコル・グルーは、友人以上の関係にあったそうです。
そんなニコルの特集が、1927年に『ヴォーグ』で組まれた際に、
「ニコル・グルーは現代ファッションにおけるマリー・ローランサン、
あるいは、ローランサンは現代美術におけるニコル・グルー」と紹介されたのだとか。
長年連れ添った恋人や夫婦は、
だんだん似てくるとは言いますが、
その究極のような関係性ですね。
さて、今回の展覧会では、ローランサンの絵画だけでなく、
1910年~30年代にかけて、同時代のファッションにもスポットが当てられています。
中でも、中心的に紹介されていたのが、
ローランサンと同い年であったココ・シャネル。
実は、シャネルも、ローランサンに肖像画を描いてもらったことがあります。
ただし、その出来栄えに納得がいかず、ローランサンに描き直しを要求。
それに対し、ローランサンはまったく譲歩しなかったため、
最終的には、シャネルはその肖像画を受け取らなかったそうです。
そんな因縁の肖像画が、今展のためにオランジュリー美術館から来日。
わざわざ、ローランサンの自画像と並べて、展示されていました。
たまたまなのでしょうが、目を合わせていない2人。
なぜか観ているこちらの方が、ちょっとだけ気まずくなりました(笑)
今回の展覧会を通じて、改めて気づかされたのが、
ローランサンの描く人物は、ほぼ黒を着ていないということ。
肖像画で揉めた件が根深くて、
かたくなにシャネルの黒を着させたくなかったのかも。
ちなみに。
展覧会のラストで紹介されていたのは、
30年以上にわたってシャネルのデザイナーを務めた、
カール・ラガーフェルドによる2011年春夏のオートクチュールコレクション。
彼は、ローランサンからインスタレーションを受け、
ファッションの色彩に、ピンクや消え入るような淡いグレーを取れ入れたそうです。
あの肖像画の一件から約90年、
ローランサンとシャネルが、ついに交わったのですね。
いや、冷静に考えて、2人は喜んでいるのでしょうか?
ラガーフェルドも余計なことをしてくれたものです(※個人の感想です)。
┃会期:2023年2月14日(火)~4月9日(日)
┃会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
┃https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_laurencin/
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